カジノ誘致、東京都は一転慎重 知事「青少年に悪影響」
2020年東京五輪を前にカジノ誘致の動きが各地に広がるなか、先陣を切ってきた東京都が慎重姿勢に転じている。お台場のカジノ用地とされた都有地を貸し出し、担当部署を格下げ。治安悪化を懸念する声もある中で、五輪開催地の方針転換はカジノをめぐる議論に影響を与えそうだ。
「カジノは賭博。青少年への悪影響とか色々ある」「カジノがないと日本経済はよみがえれないと言う人がいるが、そんなものなくてもよみがえる」。舛添要一都知事は17日、フジテレビの報道番組で語った。
フジテレビは昨年9月、カジノを含めたリゾート都市構想を三井不動産や鹿島と一緒に、政府の国家戦略特区の作業部会に提出している。そのテレビ局での発言に、都幹部は「カジノに慎重な知事の姿勢は固い」と語る。
2月の舛添知事就任後、都は姿勢を一転した。6月、それまでカジノ候補地に位置づけてきた臨海副都心にある2万7千平方メートルの都有地について、独自動車メーカーBMWに10年間貸し出すことを決めた。車の展示場や試乗コースになり、カジノには使えない。
7月の組織改編では、カジノを担当する「大都市行政担当」を知事直轄の政策企画局から切り離し、港湾局に移した。
国内でカジノ誘致の機運を高めたのは東京都だ。1999年、石原慎太郎知事が「お台場へのカジノ誘致」を表明。02年にはカジノ誘致に前向きな国会議員も招き、都庁45階の展望台でスロットマシンなどを置いた体験イベントも開いた。猪瀬直樹知事もカジノ構想を推進した。
都の姿勢などに反対の声もあがっていた。弁護士や司法書士らは4月、カジノに反対する連絡協議会を設置。事務局長の吉田哲也弁護士は「ギャンブル依存症を増やし、反社会勢力が活動する場も増える」と訴えた。日本弁護士連合会も「韓国や米国ではカジノ設置自治体の人口減という結果もある」と指摘した。
舛添氏の周辺は「東京五輪にカジノを間に合わせたいという経済界の声が強いが、知事は気にしていない」と語る。
各地のカジノ誘致の動きは過熱気味だ。大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)への誘致を目指す大阪市と大阪府は、今年度予算に調査費約800万円を計上した。関西経済同友会は「東京五輪前に開業できれば関西空港を使う外国人を呼び込め、経済が活性化する」と期待する。
大阪商業大学アミューズメント産業研究所の美原融・所長によると、カジノ誘致を検討する自治体は全国に20ほど。北海道は苫小牧、小樽、釧路3市が昨年名乗りを上げ、道は今年度予算に調査費2千万円を計上。「自然を生かしたリゾートとカジノが複合化できる」。長崎県は、佐世保市のテーマパーク「ハウステンボス」に誘致を目指す。
各地の狙いは観光振興や経済活性化。美原所長は「東京五輪開催で経済効果の試算が大きく見込め、飛びつきやすい」とみる。
海外のカジノ企業も力を入れる。都内のホテルで5月、英国のイベント会社がカジノ関連の会議を開催。ゼネコンや自治体関係者ら約400人に「年2千万人の外国人を日本に呼べる」などと訴えた。
超党派の国会議員が10年につくった国際観光産業振興議員連盟は昨年12月、カジノの推進法案を国会に提出。9月の国会で審議される。
元都副知事の青山やすし・明治大学教授は「カジノ誘致には世論の理解や熟度が必要。だれが主催するのか、依存症対策はどうするか、議論することはたくさんある。都がデメリットに触れることで全国的な議論に影響が出る」と話す。(前田大輔、別宮潤一)
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カジノをめぐる各地の動き