The Globe Now: 進化する日本的経営
日本企業は終身雇用制を武器に、バブル
崩壊後も力強い進化を続けてきた。
■1.「失われた10年」ではなく「再設計の10年」■
1958(昭和33)年に『日本の経営』を出版し、日本的経営の
強さの秘密を解明したジェームス・アベグレン氏が、半世紀を
経て、その続編とも言うべき『新・日本の経営』を世に問うた。
そこではこの50年の日本企業と日本経済のダイナミックな躍
進ぶりが、豊富なデータや実例をもとに描かれている。
それらのデータは、日本人自身が描いている、「バブルに踊
らされ、『失われた10年』に低迷した日本経済」という自画
像は、まったくの誤りだということを示している。
アベグレン氏は、こう指摘する。
「失われた10年」という言葉が不用意に使われることが
少なくないが、1995年から2004年までの10年間をそのよ
うに表¥現することはできない。この言葉はまったく馬鹿げ
ている。この10年は失われたどころか、じつに活発に効
果的に使われてきた。・・・
この10年は日本企業が戦略と構¥造を再編する決定的な
動きをとってきた時期であった。きわめて重要な再設計の
10年であり、停滞していたどころか、緊急に必要だった
新しい制度をつぎつぎに確立した10年であった。[1,p25]
アベグレン氏がどのような事実から、「失われた10年」と
いう言い方が「まったく馬鹿げている」と言うのか、見てみよ
う。
■2.鉄鋼業界復活の奇跡■
「再設計の10年」に見事な進化を遂げた分野の一つが、鉄鋼
業界である。鉄鋼業界は長年にわたって、総合メーカーが、新
日鉄、日本鋼管、川崎製鉄、住友金属、神戸製鋼所と5社もあ
り、過当競争の状態になっていた。
しかも先進国においては、鉄鋼産業は衰退していくものと思
われていた。イギリスの鉄鋼産業は崩壊したし、アメリカの主
要鉄鋼メーカーが次々と倒産していた。
1980年代半ばにバブル経済が始まると、各社は新規分野に活
路を見出すべく、猛烈な事業多角化に乗り出した。エレクトロ
ニクス、情報通信、バイオテクノロジー、都市開発等々。しか
し、バブル崩壊とともに、これらの新規事業は大部分が苦境に
陥り、平成5(1993)年には、5社が揃って赤字となった。
それから10年。鉄鋼業界は見事な変身ぶりを見せた。平成
16(2004)年の国内生産高は1億1千万トンと、利益ピーク時
の平成2(1990)年度の1億2千万トンに近い水準に復帰した。
しかも、これを9万2千人と、ピーク時の13万8千人の三分
の二の人員で達成している。労働生産性が3割ほども向上した
わけだ。
■3.奇跡の秘密■
日本の鉄鋼業界は「先進国では鉄鋼業のような成熟産業は衰
退していく」という従来の定説を見事に覆した。どうして、こ
んな奇跡が起こりえたのか。
まず日本鋼管と川崎製鉄は、鉄鋼事業を統合してJFEスチ
ールを発足させ、また新日鉄、住友金属、神戸製鋼所は提携を
深めていった。企業統合により、生産・経営・研究開発の効率
を飛躍的に高めたのである。
さらに新規事業を大幅に整理し、本業に経営資源を集中して
いった。そして研究開発に巨額な投資をした結果、国内のエレ
クトロニクス産業や自動車産業向けの高付加価値の鋼材に重点
を移した。
国内の先進的産業への高付加価値商品の供給が中心となり、
輸出比率は低下を続け3割となっている。輸出の最大の向け先
は韓国で、ここには生産コストが世界最低と言われる鉄鋼メー
カー・ポスコがあるが、高付加価値製品においては日本企業が
圧倒的な競争力を維持しているのである。
■4.終身雇用は維持■
■5.「事業は整理しても、人員は整理しない」■
■6.「企業は社員の共同体」■
■7.終身雇用制は強い武器■
■8.終身雇用制は厳しい道■
(中略)
■9.「日本人はいつも将来を悲観的に、現状を否定的にみており」■
こうした分析をもとに、氏は言う。
(日本の)過去50年の実績と、今後の100年の見通し
は、海外で称賛を受け、国内で誇りにするに値するもので
ある。[1,p45]
それなのに、この点を自覚していないのが、最も問題だと氏
は指摘する。
21世紀に日本が直面している問題のもっとも深刻な点
は、この自信のなさ、とくに若者の無気力だといえる。日
本人はいつも将来を悲観的に、現状を否定的にみており、
事実を客観的に分析すれば根拠がないことがはっきりして
いても、こうした見方が根強いのがたしかな現実である。
[1,p16]
悲観的・否定的なニュースばかり流す一部の偏向マスコミに
流されることなく、我々は「過去50年の実績」に誇りと自信
を持ち、「今後の100年」に向けて、我々の強みをさらに磨
いていかなければならない。
(文責:伊勢雅臣)
http://archive.mag2.com/0000000699/20090215000000000.html