一度の大統領選挙を終え、これだけさまざまな大規模実験を短期間にされるのは初めてではないか。「非正社員ゼロ」は公共機関から始まり、民間企業へと圧力が広まっている。非正社員が存在せざるを得ない原因は放置したままで、その結果だけをなくせという政策理論はない。
持ちこたえられない企業が数カ月で耐えられるようになるだろうか。非正社員を子会社の正社員にするというが、その子会社はどうやってその負担に耐えるというのか。
世界で最も模範的に運用している原子力発電所を突然怪物扱いし、「やめる」という実験も「まさか」と思ったが、本当に実行してしまった。「原発事故の確率はゼロではない」というが、そんなことを言っていれば、人は家の外に出られないはずだ。判断基準となるべき合理的なラインというものがある。
韓国で地震などで福島のような原発事故が起きる可能性が「ゼロ」ではないから、原発は廃止しなければならないと言うのなら、世界中の原発は全てなくさなければならない。原発を気に掛ける人はどうしてもいるわけだが、そうした人を説得するのが政府の仕事なのに、むしろ政府が先頭に立っている。前例がない実験的状況だ。
太陽光、風力発電など再生可能エネルギーが原発の代わりになるというのは実験以前の問題だ。実験とは「そうなる」という蓋然性を前提として行われるものだ。韓国の自然条件が太陽光や風を大規模なエネルギー源として使う上で適さないという点は不幸なことに現実であり事実だ。
1%にもならない再生可能エネルギーの割合を少しずつ高めていく必要はある。しかし、国の電力の30%を担う原発に代えることはできない。韓国が再生可能エネルギーを研究しなければならないのは、原発の代わりではなく、自然条件が適した国に輸出するためだ。
最低賃金を一気に時給1万ウォンに上げることも過去にはない実験だ。これでは数多くの自営業者、限界企業は持ちこたえられないはずだ。新政権は国民の税金で民間企業の従業員の月給を支払うから賃金を上げろという。そんな発想ができるというのは驚きだ。弱い企業から廃業したり、国を離れたりするだろう。
今は経済政策の基本的枠組みを覆さなければならないのだという。経済成長で所得を増やすのではなく、税金で所得を増やし、経済を成長させるのだという。一部の階層に税金を分配し、富の分配を改善するというのは聞いたことがある。
しかし、それで経済成長まで図るというのだからまるでマジシャンだ。成功すれば文在寅(ムン・ジェイン)政権は団体でノーベル経済学賞を受賞するだろう。
数年前、国際労働機関(ILO)に所属する左派の学者が「賃金主導の成長」を主張した。それを韓国で翻訳して紹介した人物が現在、大統領府(青瓦台)の経済担当首席秘書官だ。文大統領がそのとりこになり、セミナーも開いたという。彼らは自分たちが信奉する理論を全国民を相手に実験する機会を得た。米国、日本、欧州でも部分的にこうした実験的アイデアを政策化した例はあるという。
しかし、全面的、全方位的に適用するのは韓国が世界で初めてだ。とはいえ、韓国よりも経験豊富で優れた先進国がこれだけ容易で人気がある「所得主導の成長」をなぜ全面的に導入しないのかという常識的な疑問が残る。今後も教育実験、税金実験、安全保障実験などが続くはずだ。
成功を願うが、新政権があまりに世の中を甘く見ているのではないかという心配はぬぐえない。確信が強過ぎるようにも思える。大胆な勇気なのかとんでもない無謀なのか分からない。
実験は研究室で行うものだ。実験の繰り返しで規則が見つかれば、それが理論になる。その理論を人々に適用するにはさらに臨床試験が必要だ。臨床試験は研究室での実験とは全く異なる次元の問題だ。臨床試験まで終えても、実生活に適用するにはさらに多くのプロセスを乗り越える必要がある。韓国では研究室で終わってもいない実験が直ちに人々に適用されようとしている。
見慣れない風邪薬を体に良いから飲めと言ったかと思えば、初めて発売された胃腸薬、一部の国で使われている頭痛薬も飲めと言う。
さらには、成分不明の胃がん薬、肺がん薬まで効果があるから飲めという。試験中の薬をこれほど一度に投与すれば、体が耐えられるはずがあろうか。どんな変調を来すか心配だ。飲みたくないと断ることもできない。
これは実話だ。ある病院でとても人気がある医師がいた。患者が他の医師の数倍も殺到し、まるで教授扱いされた。「あの先生の薬を飲めば治る」というのが教理だった。同僚医師の一部はその秘密を知っていた。最終手段の処方で少量を、それも特定患者にしか使えない薬を乱発していたのだ。患者はその薬を飲めば気分が良くなった。
しかし、徐々に副作用が積み重なり、薬をもらいに来た患者の目はうつろになり、よだれを流すようになった。それでもその医師は定年退職まで人気を集めた。責任も負わなかった。驚くべきことに患者はその医師を懐かしんだ。彼が出す薬なくして苦痛に耐えることができなくなったのだ。
http://www.chosunonline.com/site/data/img_dir/2017/07/28/2017072801553_0.jpg
楊相勲(ヤン・サンフン)主筆
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/07/28/2017072801614.html
どの国でも左翼というアホどもはゼロリスクを要求するのはなぜなんだろう・・・