機内食
すでに亡くなった祖母が20年以上前にタイ旅行から戻った直後「機内食がひどくて食べられなかった」と話していた。しきりに文句ばかり言っていたが、要するに息子のおかげで海外旅行に行けたことの自慢で、そのことを家族は皆理解していた。祖母は意を決したかのように「機内食はもう絶対に食べない」とも言った。確かに年寄りの口に機内食は合わなかっただろうが、それ以前に機内食の存在そのものが驚きだったのではないだろうか。狭い座席で少しずつ取り出すことも面倒だし、水を飲むためのコップを置く場所もないくらいスペースもない。この狭苦しさこそ、実は「雲の上での食事」における第一のおかずだ。
1万メートル以上も上空になると人間の味覚は平均で30%ほど低下するそうだが、これは風邪をひいたときと同じレベルだという。そのため機内食は全体的に味の濃いものが多く、韓国の航空会社は韓食で勝負する。大韓航空は1998年にビビンバ、2006年にはビビンククス(そうめんを甘酸っぱく辛いソースや野菜であえたもの)の提供を開始し、いずれもその年に国際機内食協会(ITCA)から最高の機内食とされて「マーキュリー賞」を受賞した。後発のアシアナ航空も07年に栄養サムパプ(葉野菜でご飯を包んで食べる料理)で同じ賞を受賞した。
機内食は離陸の24時間前に最初の注文を行い、離陸4時間前に最後の注文を行う。1日8万食以上を提供する大韓航空機内食事業本部の売り上げは2000億ウォン(約198億円)を上回り、アシアナ航空に先月まで機内食を提供していた企業も1800億ウォン(約178億円)の売り上げを記録した。このビジネスは営業利益が20%を上回るなど収益性は高いが、事業としては決して簡単なものではない。まずフライトのスケジュールにピッタリ合わせて注文をさばけないと、離陸が遅れる原因になりかねないからだ。
今月1日からアシアナ航空でこの機内食に問題が発生し、事態は今も収まっていないようだ。影響で機内食なしに離陸する旅客機がいまだに相次いでいる。7月からアシアナ航空に機内食を納品することになっていた業者で問題が発生し、急きょより小規模な業者に発注をかけたところ、1日2万5000?3万食分が供給できなくなったという。アシアナ航空は金秀天(キム・スチョン)社長自らホームページなどを通じて謝罪文を発表し、その後も繰り返し謝罪を続けている。
年間で延べ2000万人以上が国際線を利用する時代になったが、それでも海外旅行は多くの人にとって決して安い買い物ではない。イタリアの哲学者、ウンベルト・エーコは航空会社が機内で簡易食ではなくナイフとフォークを使う食事を提供する理由について「乗客に豪華な気分を味わわせるため」と説明している。アシアナ航空は機内食が食べられなかった乗客に30?50ドル(約3300?5500円)のクーポン券を提供しているそうだが、「機内食の思い出」は決して金では買えないことを会社側にも理解してほしい。