『少年と犬』 ハーラン・エリスン
エヴァンゲリオンと、「世界の中心で、愛をさけぶ」のタイトル元ネタとして有名になった
「世界の中心で愛を叫んだけもの」に所収されている短編。
『北斗の拳』(というか『マッドマックス』)のような荒廃した世界観、
戦争や天災で文明が破壊され尽くした世界で、・・。
瓦礫と化したビルの間を、銃とナイフを手に自分の欲求のためにだけ
駆け回る少年ギャング達が、妙に生き生きしてみえたり。
安全な地下で這いつくばるように生きる「お上品な方々」に対する
主人公のはちゃめちゃな物言いに、なぜか爽快感さえ抱いたり。
“誰でも持っている内なる攻撃性や、破壊衝動を駆り立てられる”小説
と言えるかもしれません。
で、肝心の犬。
この世界では、犬は人間とテレパシーで意思疎通ができるように
なっています。(先時代の生物工学の遺物という設定)
賢く知識豊富な長寿犬と、おバカだけど生存能力の高い若者とが
ペアを組んで、命の危険にあふれた世界を生き抜こうとする、
そういう家族?パートナー?の在り方が一般化しているのです。
主人公ヴィク少年は、賢明で優秀な有名老犬ブラッド爺さんと組んで
「出会う者は敵か獲物かの二択」、という日々を送っています。
この2人(?)の「オレ様一番!」なやり取りが、面白い音符
そうした「敵か獲物か」の世界に突如あらわれた、美少女1人。
彼女は地下(地上=若い無法者の世界、地下=穏やかで閉塞した管理社会)
の住人で、見たこともない清純さや上品さの持ち主です。
彼女はヴィクに問いかけます。
「愛って何か知ってる?」
今まで考えたこともなかった少年は、答えることができません。
住んでいる世界が違う、「愛」を説く眩しい存在…
ヴィク少年はブラッド爺さんの忠告もよそに、少女に夢中になるの
ですが、やがて――
ラストシーンで、ヴィク少年は、究極の選択を迫られます。
「親と子が崖から落ちかかっていた時、どちらを助けるか」的な
究極の選択です。
そこで出した、彼のこたえは。
彼女の声は、何回も何回もおなじ質問をくりかえしていた。
愛って何か知ってる?
ああ、知ってるとも。
少年は犬を愛するものさ。
(ハヤカワ文庫『少年と犬』伊藤典夫訳より)
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