ドル不足で調達金利が上昇 邦銀、10年ぶり高水準に
新興国、ドル建て債務借り換えにリスク
世界で米ドルを調達しにくい状況が広がっている。米国の利上げと新興国不安でドルの需要が高まり、日本では銀行が円でドルを調達する金利が上昇。9月には年率換算で3%台前半とリーマン・ショック以来、10年ぶりの高さとなった。アジアではドル建て債務の借り換えが困難になるリスクが高まっており、世界経済に影響が広がる可能性が出ている。
画像の拡大日本の銀行は海外で企業に融資するためにドルを持つ。日銀によると8月時点で邦銀の海外での融資は75兆8千億円で、元手となる預金は62兆9千億円。この差額の13兆円程度は米銀行などから借りて調達する。
画像の拡大円をドルに替える費用は主に日米の金利差で決まる。銀行間金利はドルだと2.4%程度だが円はほぼ0%。ドルの調達には、この金利差分のコストを負担する必要がある。米国では貸出金利があまり上がっておらず、調達コストの増加は収益の圧迫要因になる。
9月下旬には調達金利が年3.15%まで上がった。このうち金利差によるのは2.5%弱で、さらにドルの需要を映す上乗せ分も0.7%弱まで上昇。新興国や日欧など米国以外からのドルの需要が強く、4月以後、0.1~0.2%程度で推移していた邦銀の上乗せ分も増えている。
野村証券の中島武信氏は邦銀のドル調達金利は19年年末には3.75%程度まで上がるとみる。三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長は「事業モデルの見直しが急務だ」と話す。
日本だけでなく欧州の金融機関でもドルの調達金利が上がっている。ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)でドルは年率2.4%程度と08年11月以来の高水準。英国の欧州連合(EU)離脱交渉やイタリアの財政問題が混迷すれば、一段と上昇する可能性もある。
ドルの金利上昇は、アジアなどの新興国にとってはさらに深刻だ。対外債務を増やしてきた新興国は一段と資金調達が厳しい状況となりかねないからだ。
新興国では08年のリーマン・ショック以後、潤沢なドルの資金が流入し、社債などでドル建て債務を膨らませてきた。国際決済銀行(BIS)の集計によると、銀行部門を除く新興国のドル建て債務の合計は3.7兆ドルに達し、過去10年で2.3倍に増えている。
新興国の信用が低下し、資金が米国に戻る動きも顕著だ。ドルの金利上昇に加えてドルの不足感が高まると、新興国の政府や企業は次にドル建て債務を借り換える際、さらに金利が上乗せされるリスクが出てくる。
画像の拡大今後もドルの不足感が高まる懸念は強い。米連邦準備理事会(FRB)は国債などを買うことによるドルの供給を昨年秋から減らしている。3日時点のFRBの総資産は約4.2兆ドルで1年前より3千億ドル弱減った。減少ペースは加速する見通しで、米国内外のドルは着々と減っていく。
FRBは来年末までに3~4回の利上げをする見込み。11日にインドネシアで開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも、ドルが金融情勢に与える影響が議題の一つになる