浦項市民71人が損賠訴訟「地熱発電所のせいで地震」
昨年11月15日に起きた慶尚北道浦項市を震源とするマグニチュード5.4の地震は、地熱発電所によって引き起こされたとして、市民が韓国政府などを相手取り集団訴訟を起こした。地震の発生原因を巡り、市民が提訴したのは韓国では初のケースだ。
浦項地震汎市民対策本部は24日、韓国政府と浦項地熱発電所を相手取り、総額2億ウォン(約2000万円)の損害賠償訴訟を大邱地裁浦項支部に起こしたと発表した。原告には市民71人が加わった。地震で被害を受けた市民の精神的被害に対する慰謝料として、1人当たり1日5000~1万ウォンを5年間にわたり支給するよう求める内容だ。
原告や学識者の一部は、浦項市北区興海邑にある浦項地熱発電所が地震の原因だとみている。同発電所は韓国政府の地熱発電実用化研究開発事業として推進されたもので、資源開発業者のネクスジオと鉄鋼大手ポスコ、韓国水力電子力、韓国地質資源研究院などが参加している。2016年6月に試運転を開始し、17年12月から商業運転に入る予定だったが、直前に発電所から600メートル離れた場所で地震が起きた。昨年1月に原告側が出した仮処分申請が裁判所で認められ、現在は稼働を中断している。
地熱発電は地下4キロメートル以上の穴を2本堀り、一方に水を注入し、地熱で加熱し、発生した水蒸気を別の穴から取り出し、発電所のタービンを回す発電方式だ。水を注入する過程で地下に高い水圧が生じ、地層が割れたり、断層が滑ったりするというのが原告側の主張だ。高麗大の李晋漢(イ・ジンハン)教授と釜山大のキム・グァンヒ教授は今年4月、科学誌「サイエンス」に論文を発表し、当時の地震は震源の深さが4.5キロメートルで、地熱発電所のパイプが打ち込まれた深さと似ているとし、「16年から始まった地熱発電所による水注入が地震の直接的原因だ」と主張した。地震の原因を調べている政府の浦項地震調査研究団は「地熱発電と浦項地震に関連性がある可能性はあるが、関連性を明確に判断するためには追加的な調査が必要だ」との立場だ。最終調査結果は来年2月ごろにまとまる。明確な結論が示されない場合、訴訟過程で科学的な側面での論争が展開されることも考えられる。
海外でも地熱発電が原因で地震が起き、訴訟に発展したケースがある。06年にスイスのバーゼルで地熱発電所を稼働中、マグニチュード3.4の地震が起きた。スイス政府は09年、発電所の稼働が地震の原因だとする結論を下した。発電所は被害住民に9万スイスフラン(約1010万円)を和解金を支払った。ただ、発電所の責任者には刑事裁判で無罪が言い渡された。
浦項地震汎市民対策本部は、市民の申し立てを受け付け、追加で訴訟を起こす構えだ。浦項市民(51万人)、慶州市民(26万人)など地震被害を受けた人々が訴訟に加われば、賠償要求額は数兆ウォンに達する可能性もある。同本部のモ・ソンウン共同代表は「最初の訴訟は原告募集期間が3日だけだったため、参加者が少なかった。今後追加訴訟を起こす際には多くの参加者が見込める」と説明した。今回の訴訟は精神的被害に関するものだが、地震の原因が地熱発電所だと確定すれば、住宅破損など物的被害に関する訴訟も起こされる可能性がある。
昨年11月15日に起きた地震では、負傷者92人、被災者約1800人、施設被害約2万7000件などで3323億ウォン相当の財産被害が発生した。