「原爆Tシャツ」「ナチス帽」で苦境のBTS 全米1位の裏にある“異常”な実態
最近、韓国の男性音楽グループ「BTS(防弾少年団)」が話題だ。
K-POPが誇る男性7人組のグループで、アルバムなどのセールスも好評で世界的に人気が高い。日本にも進出してオリコンのチャートで1位を獲得している。日本にもファンは多い。
そんなノリに乗っているグループが今、騒動を巻き起こしている。メンバーが過去に、キノコ雲と「愛国心」という単語がプリントされた「原爆Tシャツ」を着ていたことが判明。結局、予定していた日本の音楽番組の出演を中止する事態になり、海外でも大きく報じられた。
すると今度は、ナチス親衛隊の記章がついた帽子をかぶって写真に収まったり、ナチスを想起させる旗をコンサートで振ったりしたことが明らかになり、米ユダヤ系団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」が抗議。BTSが国連でスピーチをしたこともあるグループということで、こちらも海外で大々的に報じられている。
BTSにしてみればもはや言い訳もできない状態で、この状況がしばらく沈静化することはないだろう。
まず断っておくが、筆者は嫌韓でもなければ、K-POPのファンでもない。だがグローバル化とソーシャルメディアの発展が生んだこのグループと今回の騒動は、世界的にもニュースになっているため、その動向をチェックしている。
そこで今回、あらためてこのBTSというグループの実態について調べてみると、なかなか興味深いことが見えてきた。そもそも英語の歌を歌っていなかったBTSが「全米ヒットチャート1位」になった背景には何があるのか。英語圏での本当の評価はどんなものなのか。そしてそうした背景から、今回の騒動はどこに行くのかを探ってみたい。
●なぜBTSが「全米1位」になれたのか
まずBTSとは何者か。
BTSのデビューは2013年。その後、ソーシャルメディアでの動きが活発になり、16年には米フォーブス誌の「ここ30日で最もリツイートされたアーティスト」という世界的なランキングで、なぜか突然、米大物歌手のカニエ・ウェストやジャスティン・ビーバーなどを押しのけて、BTS(Bangtan Boys)がトップになるという現象が起きている。
この話で思い出すのは、米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」だ。これには随分前から読者がネットで投票できるシステムがあったのだが、なぜか06年から、世界的に知られているとは言い難い韓国人アーティストが何年も続けてトップになるという現象が起きて話題になっていた。おそらくファンが、ネットを使ってどんどん投票を行ったのだろうとの声もあった。
韓国系の人たちは、この手の人海戦術は以前から得意だったようだが、それは最近も変わらない。18年版でも同誌のオンライン人気投票は、BTSがダントツの1位になっている。しかも同じランキングの2位は韓国の文在寅大統領。Webサイト内には、米ドナルド・トランプ大統領、カナダのジャスティン・トルドー首相、米下院議長のナンシー・ペロシ議員、Tesla(テスラ)のイーロン・マスクCEO、Facebookのシェリル・サンバーグCOOなど、そうそうたる顔が並んで掲載されているが、その中で堂々のワンツーフィニッシュはちょっと異様である。冷静に見れば、熱心な支持者がかなり力を入れて投票をしていると考えるのが自然だろう。
少し話が逸れたが、とにかく、BTSは16年以降も地道に活動を続けてきた。そのBTSの活動を支えてきたのは、「アーミー」と呼ばれる熱心なファンたちで、彼らがBTSをつくったと言っても過言ではない。
アーミーは、ネットなどどこかに投票できるチャンスがあれば飛びつき、ソーシャルメディアなどでもBTSを推すことに余念がなかった。例えば、ネット投票で決まるビルボード音楽賞のトップ・ソーシャル・アーティストというランキングでは、17年と18年にジャスティン・ビーバーをおさえてトップになったのがBTSだった。この賞は世界で最もネットで人気のあるアーティストを決めるという触れ込みで、韓国人アーティストとしてはBTSが史上初の快挙ということになっているが、世界で最も人気があるというのは、申し訳ないがちょっと違うと多くの人が思ったはずだ。
その後、気が付けば18年9月に全米アルバムチャート「ビルボード200」で1位に輝くまでに上り詰めた。筆者には東アジア系米国人の友人が何人もいるが、彼らはいつも「米国でアジア系の人たちが活躍するのはうれしい」と語っていた。米国に暮らすアジア系がBTSにとっても重要なファン・ベースであることは間違いない。
●身銭を切って応援する「ファンの力」
すでに述べたが、BTSの楽曲は、いわゆる英語の曲ではない。それにもかかわらず、全米でランキングトップになったのは偉業だと言える。米国では国内で使用者の多いスペイン語の曲がランキングに入ることは少なくないが、その場合、もちろん購入者の多くがスペイン語を話す人たちである。つまり、米国の純粋な白人はほとんどがスペイン語の曲を買わないのと同様に、英語の曲ではない韓国人男性アイドルグループのアルバムを買うことはあまりないと言っていい。
実は、BTSは10月25日に初めて英語の曲を米国で発売した。だが残念ながら売り上げはパッとせず、全米シングルチャート「ビルボード100」ランキングでは、現時点で最高89位にとどまっている。どうもBTSやK-POPが米国で旋風を巻き起こしているというのは言い過ぎのように感じる。
もっと言えば、アーティストとしての評判は米英の評価を見ている限り芳しくないようだ。英ガーディアン紙の評価は「あまりにありふれた作品」と特に辛辣(しんらつ)で、「曲を聞いたすぐ後でも何も記憶に残らない。右から入った音楽がそのまま左の耳から出ていってしまい、何の印象もない」と書き、「ソーシャルメディアのファンの力による口コミをここまでうまく生かしたものはなかった」と皮肉っている。
ただこの「ファンの力」という指摘は一理ある。BTSがビルボードでナンバーワンになったのは、熱狂的なアーミーを中心としたファンの力が大きい。とはいえ、アーミーらのサポートは常軌を逸したものだと言える。
例えば、アーミーらはかなりの身銭を切って支援をする。あるファンは、世界的にも有名なニューヨークのタイムズ・スクエアにあるデジタル画面の広告枠を自腹で購入し、BTSメンバーの写真を掲載している。17年からファンらが広告を買うようになり、広告代理店によれば、同年は30件ほどのK-POPがらみの有料広告が掲載された。K-POPの中でもBTSの広告が一番多い。1週間3万ドル(約340万円)ほどで利用できる。
しかもそれを国を挙げてプロモートしている感があり、タイムズ・スクエアの広告は在米の韓国大使館が公式にツイートするなどして拡散の手助けをしている。文在寅大統領も夫人と外遊中のフランスでコンサートに訪れてBTSと一緒に写真撮影をし、ビルボード1位が報じられた際には、大統領の公式アカウントで「7人の少年とアーミーにお祝いのあいさつをします」とツイートしている。
広告はニューヨークだけではない。テネシー州ナッシュビルでも、46人のファンがお金を出し合い、アルバム発売に合わせて、有名な看板にBTSを応援する広告を3週間にわたって掲載した。ちょっと驚くような話だが、これがアーミーの実態であり、韓国国内ではメンバーの誕生日などにこうした有料広告を出すといった形で「貢献」するのは普通のことなのだと報じられている。
もちろんBTSは、それほどまでにファンを虜にしてしまうほどのグループだということなのだろう。
BTSがビルボード1位を達成できたことには、こうした背景もあるのだ。
●「日本に謝罪をさせない空気」がある
そして今、ファンの想像を絶するようなサポートで上り詰めたBTSが、原爆とナチスにからんで、大きなトラブルに見舞われているのである。
ただ原爆とナチスについては、認識不足では許されない話だろう。人類史に残る大量殺人である原爆投下や、ユダヤ人に対する大虐殺を行ったナチスについて、軽率に扱うのはあまりにもひどい。
ポリティカル・コレクトネス(偏見や差別を含まない中立的な表現を用いること)の流れを「無視」して大統領になった米国のドナルド・トランプ大統領、フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領、そして最近、次期大統領に当選したばかりのブラジルのジャイル・ボルソナロ下院議員といった現代の「暴言王」たちですら、さすがにそこまでは踏み込まないだろう。
もちろん、「若気の至りで事の重大性に考えが至らなかった」、また「軽いノリだった」と理解したい人たちがいるのも分かる。ただそれなら、その事実を認めて潔くきっちりと謝罪でもすれば、日本人やユダヤ系団体の受け取り方も多少は違ったかもしれない。特に、日韓の歴史問題などで「どれだけ謝罪をすればいいのか」と苛立っている日本人は多いだけに、逆に潔く謝罪をすれば、普段は憤っているそんな日本人も寛大さを見せるはずだ。繰り返し蒸し返して謝罪を要求したりはしないだろう。
ただ残念ながら、反日教育を行ってきた韓国には、日本に謝罪をさせない空気がある。それがこの問題を複雑にしている。米ニューヨーク・タイムズ紙は「彼らは(番組出演がキャンセルになったことについて)ファンには謝罪したが、Tシャツについては触れていない」と書いていたが、おそらくBTSにとって、韓国の世論を見れば謝罪という選択はできないのだろう(一応、所属事務所と当事者のメンバーがそれぞれ「不快感を与えた」「心配をかけた」と発言している)。
BTSにとっても、世界第2の音楽市場である日本を捨てるのは痛手である。ただ今回の件で、若い女性を中心としたファン層以外の多くの日本人を完全に敵に回してしまった。YouTubeなどネットでも彼らの映像を見ることはできるが、テレビ出演をすれば、ファンではない層の人たちに幅広くアピールでき、新規ファンを獲得する絶好の機会になる。それが失われるのは正直つらいはずだ。
自らまいた種とはいえ、BTSは間違いなく苦境に立たされている。今後、彼らがどう動くのか、動向に注目したい。
(山田敏弘)