迫る韓国大統領選 父の「親日疑惑」浮上で逆風の文大統領 “悲惨な末路”逃れたい思惑からサムスントップ仮釈放で経済回復狙うもコロナで失策
韓国最大財閥サムスングループのトップで、贈賄罪などで収監されていた李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長が13日に仮釈放された。来年3月に大統領選を控え、文在寅(ムン・ジェイン)政権が経済回復を図って与党を勝利に導き、歴代大統領のような悲惨な末路を逃れたいという思惑もうかがえる。だが、新型コロナ対策は失敗で支持率は急落、野党から文氏の父親が「親日」だと指摘を受けるなど逆風も強い。
李氏は朴槿恵(パク・クネ)前大統領への贈賄罪などに問われ、今年1月、懲役2年6月の実刑判決を言い渡されていた。仮釈放後も経営への参加を制限されるという。
7カ月での仮釈放の理由について朴範界(パク・ボムゲ)法相は「コロナの長期化による国家の経済状況とグローバルな経済環境」を考慮したと述べた。仮釈放は、日本統治からの解放を祝う15日の「光復節」に合わせて行われたが、同様に服役中の朴前大統領や李明博(イ・ミョンバク)元大統領は高齢で持病を抱えているにもかかわらず恩赦が見送られた。
就任当初は財閥改革を掲げていた文政権が李氏を仮釈放した背景に何があるのか。
世界的な半導体不足のなか、ファウンドリー(受託製造会社)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が米アリゾナ州に数百億ドル規模の工場増設を計画し、日本でも研究開発を目的とした子会社の設立を決めたほか、製造拠点の設置も検討するなど、世界的な合従連衡が行われている。
サムスンの業績は現状好調だが、トップ不在が長期化して経営判断が遅れるようなことがあれば韓国経済への打撃も小さくない。
龍谷大の李相哲教授は「コロナ対策で明らかに失敗している文氏は、米国との関係を意識して、これまで解体を目指したサムスンに頼るほかない状況だ。もはや大統領選までなりふり構っていられないというのが本音だろう」と推察する。
韓国の新規感染者数は2000人を超えるなど拡大中で、ワクチンの供給も遅れている。韓国ギャラップ社が13日に発表した文大統領の支持率は36%と前週から5ポイント急落した。
そんななか、野党「国民の力」の大統領選挙候補、崔在亨(チェ・ジェヒョン)前監査院長が、文氏の父親が「親日派」だったと指摘した。中央日報(日本語電子版)が報じた。文氏の父は日本統治時代に工業地帯だった興南(フンナム)で農業係長を務めていたことを根拠としている。青瓦台(大統領府)はすぐさま否定した。
前出の李相哲氏は「左派勢力から崔氏の家族が親日であると先にレッテルを貼られたため攻撃し返したにすぎない。ただ都合が悪いと反応しない文氏も、青瓦台を通して反論しているため、親日攻撃の効力は大きいといえる。今後も与野党問わず、攻撃材料のない候補者に対しては親日のレッテルを貼ることになるだろう」とみる。
大統領選では、一時は世論調査でトップだった尹錫悦(ユン・ソンヨル)前検事総長が、妻の株価操作疑惑や義母の給付金不正受給による実刑判決などを受けて支持率が低迷。韓国ギャラップの調査では、与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)京畿道(キョンギド)知事がトップで、尹氏は2番手、共に民主党の李洛淵(イ・ナギョン)元首相が3番手という構図だ。
「親日」が攻撃材料という韓国の政治風土は分かっていてもあきれてしまうが、誰が勝っても日本との関係改善など望めそうもない。
李氏は、「大統領選に向けた泥仕合のゴングはなったばかり」と述べた。
