チャイナ・タウンと化す済州、看板・飲食・従業員も「中国人に合わせりゃ商売繁盛」
韓国人観光客は前年比8.3%減、中国人観光客は766.5%増
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▲グラフィック=パク・サンフン
行楽シーズンだった8月14日午後5時ごろ、済州市でも観光客が最も多く訪れるという「済州東門市場」に入るやいなや、中国語で客引きする声が聞こえてきた。ある店の前で声を張り上げ中国語で客寄せしていた女性従業員は、中国人夫婦の観光客が店の前に立ち止まり、済州島のみかんチョコレート、牛島のピーナツサンドなどに目をやると、試食を勧め、中国語で商品説明を行っていた。ここで20年間、済州の特産品を販売しているというパクさん(42)は「中国人観光客が2倍に増えたことで、今年2月に中国人の従業員を雇用した」とし「伝統市場にも中国人客の占める割合が90%で、一日中韓国語だけを聞くということは今ではあり得ない」と話す。記者が同日、東門市場の内部を歩き回っている間、中国語が絶えず聞こえてきた。
済州島の「中国化」が加速化している。歴代級の(今までにない)円安現象で近い国の日本に向かう韓国人観光客が増えたのに加え、「ぼったくり海産物」「脂身のサムギョプサル(三枚肉)」など、さまざまな問題が浮上したことで、済州島を旅行先とする韓国人は遠のいた。昨年1年間で1266万人の韓国人が済州島を訪れたが、これは前年度に比べて8.3%減の数字だ。今年上半期も約8%減の592万人しか済州島を訪問しなかった。
一方、済州島を訪れた中国人観光客は6月まで68万8095人で、昨年同期(7万9409人)に比べて766.5%増えた。今年上半期の観光客だけでもコロナ前の2018年(66万6120人)の観光客数を上回っており、こうした傾向が続けば19年の観光客数(107万9133人)を上回るとの見通しだ。伝統市場だけでなく、済州道の路地裏にも中国語だけで書かれた看板が立ち並んでいるほか、商店や飲食店などでもこぞって中国語で書かれたメニューや中国式電子決済システムが導入されている。島全体が中国人と中国資本によって左右されるのではないかと懸念する声が上がっている。
翌15日正午ごろに訪問した済州市蓮洞のある骨付きヘジャングク(酔い覚ましスープ)の専門店では、24人の顧客が九つのテーブルに分かれて座り、骨付きヘジャングクを注文した。いずれも中国人観光客だった。同飲食店だけでなく、この路地の骨付きヘジャングクの専門店を2、3カ所歩き回ってみたものの、飲食店ごとに中国人がずらりと入っていた。同飲食店を経営するチュさん(46)は「うちの店の売り上げの80%が中国人観光客であるほど、絶対的な割合を占めている」とし「もともとこの辺には骨付きヘジャングクの店がうちを含めて2軒だけだったが、中国人に愛されるメニューということで、今年に入って近くに5店舗が新たにオープンした」という。中国人の間で人気が高まり、この町には「骨付きヘジャンクク」が集まるようになったというわけだ。チュさんは、中国人観光客とのコミュニケーションのため、今年初めから中国語を学び始めたという。満席の店に中国人観光客2人が入ってくると、チュさんは流ちょうな中国語で「しばらくお待ちください」と丁重にあいさつした。
中国人の味覚を満足させることができない飲食店は閉店に追い込まれることもある。全国に計9カ所の海鮮丼専門店「五福水産」を経営するイム・ドンフンさん(45)は、昨年7月に済州市涯月邑に新しくオープンした支店を約1年後の6月末に廃業したという。イムさんは「済州道は今韓国人観光客の需要が下火で、中国人が観光需要を支えている状況だが、海鮮丼の主材料である刺し身は中国人にあまり好まれないため、廃業することにした」と肩を落とす。韓国人観光客の需要が減り、刺し身やすしなどを扱う「おまかせ」メニュー中心の飲食店も多数閉店したという。済州島で日本風の居酒屋を経営しているキムさん(44)は「一昨年までは平日の夕食の予約もいっぱいだったが、最近では中国人を呼び込めないと商売あがったりで、マーラー(麻辣)ソースを加えたり、天ぷら類を増やすといった形で少しずつメニューに変化を加えている」とし「特に生ものは中国人が食べないので頭を抱えている」と裏事情に触れた。

【写真】看板・メニューは中国語 済州市内の薬局とベーカリー店の様子
チャイナ・タウンと化す済州、看板・飲食・従業員も「中国人に合わせりゃ商売繁盛」
韓国人観光客は前年比8.3%減、中国人観光客は766.5%増
伝統市場や飲食業だけでなく、済州道観光と関連したほとんどの産業に中国人の経済力が影響を及ぼしている。済州島で29年間タクシー業を営んでいるイムさん(67)は「済州島の運転手の中で中国人対象の長距離運行だけを行う人がいて、たまに韓国人観光客から『済州島はタクシーがないのか』という苦情が入ったりもする」とし「夜間に空港から入国する中国人観光客だけを相手しても年俸6000万-7000万ウォン(約650万-760万円)は稼ぐほど、観光客が多い」という。
最近は主に中国で使われている電子決済システム「アリペイ」なども済州道のあちこちで容易に見受けることができる。済州観光公社によると、済州東門在来市場と西帰浦毎日オルレ市場内の「アリペイ・プラス」の決済金額は3月に約1700万ウォン(約180万円)だったが、5月には約15倍となる約2億5000万ウォン(約2700万円)となった。アリペイとウィチャットペイの加盟店も済州道で急速に増えている。アリペイ、ウィチャットペイの韓国公式代行会社「ICBKS加入センター」を運営するイ・ゴンセさん(51)は「済州道内のアリペイやウィチャットペイへの加盟店は、昨年に比べて70-80%ほど増え、中国人が頻繁に訪れる済州市蓮洞などは全体の50-60%が加盟店となっている」という。
中国人がよく訪れる済州市の免税店やホテルの周辺には、中国人観光客を狙った食品店が多数集まっているが、この中には値札が中国貨幣人民元で表記されている所もあった。同店の中国人従業員とは韓国語で疎通することが難しく、翻訳機を通じて対話することができたが、同従業員は「値段は人民元で表記されてはいるが、韓国ウォンで受け取っている」と話した。ここでは済州島の特産品だけでなく、麻婆豆腐のソース、高梁酒など、中国の食料品も多数販売されていた。
中国人が特に済州島を訪れる理由について、済州国際大学ホテル観光経営学科のキム・ウィグン教授は「済州島は韓国で唯一、中国人がビザなしで入国できる所であり、北京や上海などの大都市から近い」とし「中国は南や東など海岸都市に住む人々を除けば内陸に住んでいるケースがほとんどで、海に囲まれた済州島は中国人にとっては旅行地として非常に魅力的」と分析する。
中国人観光客が増え、関連犯罪や各種の問題も浮き彫りとなっている。6月には済州島のある大通り沿いで中国人観光客と思われる子どもがズボンを下ろして用を足す姿が目撃され、苦情が相次いだ。済州警察庁によると、2019年から22年まで外国人犯罪のうち容疑者が中国人であるケースが毎年60%前後だ。特に昨年は中国人による強盗犯罪が16件に上ったが、これは19年から22年までの数値(8件)の2倍に上る。
中国人観光客の経済力に依存することが多くなったことで、これら中国人が一気に来なくなればソウル市明洞のように島全体で「空洞化現象」が起きかねないとする声も上がっている。漢陽大学観光学部のキム・ナムジョ教授は「現在は中国人観光客に対する依存度が非常に高いため、もし中国政府との葛藤により観光客の足取りが途切れた場合、済州道の経済自体が揺すられる危険性がある」とし「その昔、日本人や中国人などの外国人だけをターゲットとしていた明洞商圏が、国境の閉鎖されたコロナ禍を通じて完全に崩壊してしまったように、済州道もがらんとしてしまう恐れがある」と警鐘を鳴らした。