韓国スポーツジムのトイレに大量に捨てられるステロイド注射器、筋トレブームの陰で深刻な薬物汚染

仁川市内にあるスポーツジムの館長は今年8月「お願いですから注射器を便器に捨てないでください。修理費だけで50万ウォン(約5万4000円)掛かりました」と訴える貼り紙を掲示した。
韓国の20-30代の間で最近、ウエートトレーニングが人気を集め、違法薬物の誤用・乱用問題が深刻になっている。かつてボディービル業界でひそかに流通していたアナボリックステロイド(筋肉増強剤の一種)などが今では一般の人々にまで広がっているのだ。ソウル市城東区のスポーツトレーナー、チェさん(26)は「インスタでよく見掛けるマッチョなインフルエンサーのほとんどは違法薬物を使っている」と話した。筋肉の合成を促進するアナボリックステロイドや成長ホルモンを服用して筋肉を肥大させ、交感神経を興奮させるエフェドリンを使って体脂肪を急速に減らすのだ。一般的な運動と食事管理ではとても到達できないほど筋肉量が増加し、くっきりとした筋肉を手に入れることができる。
「ディボル(ディアナボール、ステロイド剤)10ミリグラム、100錠で6万5000ウォン(約7100円)」「アナバー(アナボリックステロイド)10ミリグラム、100錠で10万ウォン(約1万1000円)」といった具合だ。
韓国の全国体育大会(日本の旧国民体育大会に相当)のボディービルディング部門は二十数年にわたってドーピング問題に頭を悩ませている。今年10月の同大会では一般の部は廃止された。実はボディービル大会は薬物がなければ入賞が不可能なレベルだという。9月7日に京畿道金浦で開催された大会では、抜き打ちドーピング検査の対象となった入賞者が検査を拒否し、姿を消すという事態も起きた。
文化体育観光部(省に相当)・韓国ドーピング防止委員会から入手した資料によると、最近10年間(2015-24.9)に大会禁止薬物を服用して摘発された件数は239件だった。このうち42件は10代の青少年で、5人に1人が10代だったことになる。中には9歳の子どもも含まれていた。
しかし、現在までに食品医薬品安全処が購入者を処罰したケースはない。テレグラムなどで活発に営業している販売業者に対する取り締まり・処罰もほとんど行われていない。22年は0件、23年は2件、24年は8月現在で3件にとどまっている。
梨大ソウル病院の沈京原(シム・ギョンウォン)教授(家庭医学科)は「短期的には大きな問題がなくても、使用し続ければひどい場合には急死する可能性もある」と指摘した。実際に30-40代の若いボディービルダーたちが細菌感染や心臓まひなどで死亡するケースが報告されている。