「韓国は金持ちじゃないか」計算機手にしたトランプ氏、最初にひっくり返す合意は[トランプ当選]
「韓国は富裕国なのに金を出さない。われわれはこれ以上利用されるわけにいかない」(先月16日、フォックスニュース)
トランプ前大統領の再選が6日に確実視され彼のこうした発言が現実につながる可能性も大きくなった。トランプ氏は当時「われわれは始めなければならない」と話したが、最近韓国がバイデン政権と妥結した防衛費分担金協定をひっくり返して再協議を要求しようとするだろうという見方が出てきた。これは1期目と同じように再演されるトランプ印の同盟軽視政策の予告編にすぎないかもしれない。
同盟にも徹底的に損益計算書を差し出すトランプ氏の帰還は韓米同盟に大きくウエイトを置く尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権に外交的危機として忍び寄る恐れがある。シンクタンクの峨山(アサン)政策研究院は10月にまとめた報告書で、「トランプ氏は1990年代初めから5月まで『在韓米軍の維持に多くのコストがかかるのになぜ米国が負担しなければならないのか』と125回にわたり強調した。第2次トランプ政権は取引中心的な同盟観を強化して米国の利益をより担保しようと考えるだろう」と予想する。
先月2日に妥結した韓米防衛費分担特別協定(SMA)は2026年から2030年までの5年分で初年度総額を前年に比べ8.3引き上げた後、毎年物価に連動して分担金を引き上げることにした。「合理的結果を導出した」というのが韓国政府の自評だが、分担協定は米国では行政協定に分類され国会の批准同意を受けない。理論的には大統領の意向によりひっくり返すことができる。
トランプ氏は先月15日の対談で、「韓国は『マネーマシン』だ」と裕福な国であると主張するとともに、「私が(ホワイトハウスに)いれば(韓国は)年間100億ドル(約1兆5456億円)を(在韓米軍駐留費用として)支出するだろう」と話した。韓米が最近妥結した年間防衛費分担金の約9倍(2026年基準)を出せという要求だ。非現実的な金額だがそれだけ圧力レベルを高めるという脅しと解釈される。
トランプ氏は防衛費のほかに米国が提供する「核の傘」をはじめとする拡大抑止の公約にも請求書を差し出してくる見通しだ。彼は在任時に在韓米軍の戦略資産展開費用まで分担協定に含めて韓国からお金を引き出そうとした。米軍の戦略資産が事実上韓半島(朝鮮半島)に常時配備されるのと同じ効果を出すために尹錫悦政権がバイデン政権と積み重ねてきた拡大抑止強化案のひとつひとつに「値札」を付けることになりかねないという懸念が出ている理由だ。
韓米は昨年4月の「ワシントン宣言」から始まった核協議グループ(NCG)を中心に、一体型拡大抑止体制を整えた。6月には北朝鮮の核攻撃を仮定して韓国の在来式戦力と米国の核戦力を統合する内容の共同指針も導出したが、こうしたプロセスごとに相応する見返りを望むかもしれない。対中牽制に向けた同盟糾合という大きな枠組みの中で拡大抑止強化に前向きだったバイデン政権と比較してトランプ氏は「プラスアルファ」を要求することになるわけだ。
その上大統領選挙キャンペーン中に「金正恩(キム・ジョンウン)とうまく過ごした」と強調し続けてきたトランプ氏が帰ってきて北朝鮮の金正恩国務委員長とトップダウン式の直接交渉をまた試みる可能性が相当にあるという見方が出ている。
ただ金泰孝(キム・テヒョ)国家安保室第1次長は9月にあるフォーラムで「トランプ氏は北朝鮮との首脳会談に意欲を見せるかもしれないが、スモールディール(核凍結や長距離ミサイルだけ除去し制裁緩和などの補償を提供する合意)をしたりはしないだろう」との見方を示した。2019年2月のハノイでの交渉決裂の学習効果があるという理由からだ。実際に「生まれながらの交渉家」と自負するトランプ氏が決裂で終わった当時の会談より北朝鮮への要求を下方修正したりはしないだろうという見方も多い。
専門家らも米朝首脳会談がもう一度開かれるかもしれないが、それ以上の展開は期待しにくいという見方が優勢だ。国立昌原(チャンウォン)大学国際関係学科のホン・ソクフン教授は、「トランプ氏と金正恩氏の会合自体は双方の国内政治的利害関係に合致するため実現するのは可能だが、実質的な成果につながる可能性は小さい。トランプ氏本人も北朝鮮の核問題が簡単に解決できないということをよくわかっているだろう」と説明した。
トランプ氏が「来年1月の就任前にウクライナ戦争を終わらせる」と公言したのは最近の北朝鮮の違法ロシア派兵とも密接に関わっている。トランプ氏当選が確定しただけにロシアのプーチン大統領は休戦交渉が差し迫っているという判断の下で自国領土だったクルスク奪還などに熱を上げる見通しだ。終戦時により有利な国境線を引こうとするために土地を奪おうとする激戦が広がり、ここに北朝鮮軍を事実上の人海戦術として動員する素地が大きい。ただこうした局面が小康状態を迎えればプーチン大統領に武器と兵力を物心両面で支援した金正恩氏の効用が大幅に減少するだろうという分析も出ている。
こうした中、トランプ氏が中国に対する強力な経済制裁と対中外交政策の見直しを予告しており、北朝鮮の核問題において米中が協力する余地はさらに減るものとみられる。これと関連し、慶南(キョンナム)大学極東問題研究所のイ・ビョンチョル教授は「北朝鮮の核問題が強大国の競争構図の従属変数になった。北朝鮮の核方程式の絡まりを解くのがより一層難しくなった」と指摘した。
一方、トランプ氏は中国からのすべての輸入品に対して60%に達する高率関税を、残りの国から輸入される商品にも10~20%の普遍関税を課すと公約した。米中貿易戦争と供給網競争が激しくなり韓国の戦略的スペースも狭まることになるとの懸念が出ている理由だ。
対中牽制目的で2022年に発足したインド太平洋経済枠組み(IPEF)と、同年施行されたインフレ抑制法など、バイデン政権の対外政策も縮小・廃止される素地が多く、経済安全保障の側面で韓米同盟を再点検する必要性も大きくなったと指摘される。
梨花(イファ)女子大学国際学部の朴仁煇(パク・インフィ)教授は「第2次トランプ政権では1期目の時よりさらに強力にトランピズムを展開する可能性があり、韓国もこれによる影響を大きく受けることになるだろう」との見方を示した。