アメリカが韓国を「センシティブ国」に指定する当然の理由。韓国経済は大打撃へ=勝又壽良
2025年3月23日最新の報道では、米エネルギー省監査官室(OIG)が、24年上半期に議会に提出した報告書によると、つぎのような事情が記されているという。
OIGは、同省傘下のアイダホ国立研究所(INL)職員が、原子炉設計ソフトウェアを韓国に持ち出そうとして空港で摘発されたという。
時期は、2023年10月1月から2024年3月31日までの間とされている。『朝鮮日報』(3月18日付)が報じた。
摘発された職員は、韓国政府と連絡し合うメールを証拠として確保されているという。
このことから、韓国政府がらみの「不正事件」とされている。
腑に落ちないのは、米国政府が韓国政府へ事件について連絡していないことだ。
韓国は、今回のセンシティブ国指定を知って仰天しているほどだ。
なぜ、こういう重大事態の決定が内々にされていたのか。ここに大きな疑問が沸く。
それは、米国の原子炉設計ソフトウェアの持出しが、センシティブ国指定の口実に使われていると疑われることだ。
米国政府が、韓国政治の混乱を危惧しているとみられる。
センシティブ国指定は、バイデン政権によって今年1月に行われたことが判明している。韓国へ通報されないままに行われた。ここに、違和感を覚えるのだ。日米韓三カ国は24年11月、首脳会談を開いて協力強化を申し合せた仲である。バイデン氏は、この席で尹氏へ事態の一端を話してもよかったはずだ。それが、なかったのである。
尹大統領は、弾劾によって早期退陣が不可避の情勢である。となれば、後継大統領は左派の李在明氏になる可能性が高い。米国は、こうした韓国政治情勢の急変で、韓国へ「機密情報」が渡らないよう、早手回しにセンシティブ国指定という手を打ったとみられなくもない。
最近、北朝鮮の核開発に刺激されて、韓国でも核開発に着手すべきとする議論がある。だが、これだけを取り上げて同盟国の韓国へ、センシティブ国という烙印を押すはずがあるまい。米国が神経を使っているのは、韓国左派勢力の派手な「親中ロ」への動きである。23年8月からの福島原発処理水放水にあたり、「共に民主党」が中国と一緒になり国際的な反対運動を行ったことも特筆すべきことである。
李在明氏は「中韓共闘」
特に、「共に民主党」代表の李在明氏は、駐韓中国大使館で中国大使と共に日本批判を行い、ユーチューブで放送させるという「中韓共闘」ぶりを演じてみせた。さらに、大統領弾劾案では当初、「日本との関係改善」を弾劾理由に挙げるなど徹底した反日である。その裏には、「反米」も込めていることに米国が気づき、神経を払っているのであろう。
問題は、共に民主党だけが突出した「反日米」であるのかと言えば、それを支える世論が存在することだ。この点が、極めて重要である。
朝鮮日報は、ソウル大学国家未来戦略院との協力で2月25、26の両日に韓国民の「政治認識調査」を行った。その結果によると、40代以上の年代では世論の半分が「親中国」であることが分った。これら層は、「共に民主党」支持者であることを推測させる。
ここで、少し詳しい結果を取り上げておきたい。
中国を「支援」「協力」「警戒」「敵対」のうちどういう対象だと考えるかを尋ねた質問に対し、次のような回答であった。『朝鮮日報』(3月13日付)が報じた。
中国に対して、20代の72%、30代の68%が「警戒対象」または「敵対対象」と否定的に答えた。一方、40代(56%)、50代(49%)、60代(45%)、70代以上(51%)は、「警戒」「敵対」がほぼ半分程度に減っている。20代・30代は中国への警戒心が70%前後と高いが、40代以上の世代になるとその半分は中国へ「支援」「協力」するという世論分布になっている。これは、共に民主党が「親中国」となる必然的な世論基盤を持っている結果であろう。
韓国は、朝鮮戦争で北朝鮮軍と中国義勇軍に侵略されている。それにもかかわらず、韓国の40代以上の世代が中国を「許して」おり、中国を「支援」「協力」対象にする意見が半分も存在する。これは、米国にとっては侮りがたい勢力の存在と認めるほかあるまい。左派が、次期政権を握れば確実に「中国接近」場面が始まるであろう。
これは、トランプ政権が描く米国を基軸とする「世界戦略構図」から韓国が外れることを意味する。米国は、次期韓国政権が成立する前から手を打とうとしている。これによって、間接的に左派政権成立を拒みたいという意思表示とみるべきであろう。
疑われる司法の中立性
今回の尹大統領の逮捕・起訴の裏に、韓国司法が「左派」と気脈を通じていると危惧させる動きがあった。
尹氏への逮捕状・勾留状を発布したソウル西部地裁の動きである。本来であれば、ソウル中央地裁が管轄権を持っている。検察は当初、ソウル中央地裁へ尹氏の逮捕状・勾留状発布を請求したが拒否され、西部地裁へ再申請して認められたのである。こういう裏事情が朝鮮日報のスクープで明らかにされている。これは、韓国左派に通じている司法の存在を認めるような事態であり、極めて由々しいことである。ソウル中央地裁は、尹氏の弁護団による勾留取り消し請求を認めた。
勾留取り消し決定によって、尹氏へ逮捕状・勾留状を発布したソウル西部地裁の立場が、極めて微妙なものになっている。司法は、政治から独立した存在でなければ、国民の信頼を得られないのだ。韓国司法の信頼度が4割と低いのは、司法が政治性を持っているからであろう。この裏には、左派を貫く思想基盤として北朝鮮金日成による朝鮮民族の「主体(チュチェ)思想」(自主、自立、自衛)が共感されているという現実がある。
韓国では、共産主義が禁止されている。この結果、左派へ「隠れマルクス主義者」が入り込んでいることは否めない事実だ。本来ならば、リベラリズムの進歩主義が、韓国ではマルクス主義色を帯びる戦闘的「左派」になっている。この点の識別が重要である。韓国左派への批判的な言説は「右翼」とみられがちだが、それは大きな誤解である。韓国左派が、先進国の左派と全く異なる行動を取るのは、マルクス主義が混じっている結果である。
韓国の戦闘的「左派」によって、現在の国会運営はどうなっているかをみれば、一目瞭然である。「共に民主党」は、尹政権ですでに29回もの弾劾案を上程して政策遂行を妨害している。共に民主党は、国会で絶対多数を占めているから、大統領弾劾以外は「多数決」で弾劾案を成立させられるのだ。現在は、沈雨廷(シム・ウジョン)検察総長(検事総長に相当)に対して弾劾をちらつかせながら圧力を加えている。理由は、尹大統領釈放へ異議申し立てをしなかったというものである。
この弾劾案が提出されれば、尹政権発足後30回目の弾劾になる。1948年の韓国政府成立以来、提出された弾劾案(21件)よりも、ここ3年間の弾劾案件数が多いという驚くべき事態が起っている。この一事でも、韓国政治が異常な状態へ突入しているかを窺わせている。米国が、韓国を「センシティブ国」へ指定するのも頷けるのである。
技術開発へ悪影響必至
韓国は、センシティブ国指定が4月15日付で発効するので、その前に取り消しを求めたいとしている。トランプ政権は、現在の韓国で繰り広げられている政治的混乱に対して、「敬遠姿勢」を明確にしている。官僚(長官)クラスの訪韓は途絶えている。韓国政府は、トランプ大統領との直接電話もできない状態なのだ。これでは、センシティブ国指定取消しは望み薄であろう。さらに、米国情報当局が数カ月間検討して取った措置なので、元に戻すことも容易ではないとされている。韓国には、「疑わしい事実」があるということなのだろう。
韓国は、センシティブ国指定になると、どのような不利益を受けるのか。
センシティブ国出身の研究者たちは、米エネルギー省所属の研究所と研究プログラム、情報にアプローチするには、特別承認を受けなければならないとされている。「訪問と協力には事前に内部検討が必要」と規定されているのだ。厳しい「カーテンウォール」がつくられるのだ。
米国立研究所のある研究者は、「個人目的であれ出張であれ、韓国に行く時は研究所に事前報告をしなければならず、パソコンなども持って行けなくなるため、米国国立研究所所属の研究員たちは韓国で開催される学会への参加が難しくなる」と言う。また、「米韓間の政府支援で進められている課題を続けられるかも協議しなければならない」と指摘する。『ハンギョレ新聞』(3月17日付)が報じた。これまで韓国は、日本よりも米国から優遇されていると自慢してきた。このプライドが、一挙にへし折られる事態だ。
韓国技術は、すでに発展の「ピークアウト」した感じが強い。主力産業の半導体が、中国に追いつかれたと深刻に受止めている。韓国科学技術企画評価院の報告書(25年2月)によると、韓国国内の半導体専門家39人を対象に行ったアンケート調査の結果、24年基準で韓国は半導体のコア技術5分野のうち、4分野で中国に遅れを取っていることが分かった。1分野では「同等」と評価された。2022年の調査では、3分野で中国に先んじていると評価されたが、2年ぶりに全て追い越されたり追いつかれたりしたのだ。
韓国半導体は、汎用品(メモリー)である。特注品(非メモリー)でない弱みを抱えている。日本のラピダスは、4月から特注品の最先端半導体の試験生産に入る。これまで、すべて予定通りに狂いもなく進んでいるのだ。日本と比べて、韓国半導体はレガシー(成熟品)であり、ますます中国と価格競争を強いられる境遇へ追いやられている。
こういう中での韓国のセンシティブ国指定は、「泣き面に蜂」という状態である。韓国は、米エネルギー省(DOE)が進めるプログラムへの参加を制限される。韓国人が、関連施設を訪問するには45日前に申請し、複雑な承認手続きを踏まなければならない。日々発展する先端技術分野で、両国の協力に大きな支障が生じるということだ。米韓が、昨年から推進するAI共同研究プラットホームや、次世代の事業として評価される量子コンピューター開発にも支障が避けられないとしている。韓国には大きな犠牲を伴う事態になった。