非正規になると挽回できない…韓国人女性が社会で直面する「二重苦」の正体
2025年12月5日 7:30
写真はイメージです Photo:PIXTA
韓国では、女性の正規雇用枠は極めて少ない。一度でも非正規で働くと、正規には戻れない底なし沼だ。
しかも、パートで働こうものなら、非正規雇用の賃金格差と男女の賃金格差のダブルパンチが待っているという。
働き盛りの韓国人女性を襲う、ツラすぎる現実とは?※本稿は、行政学博士のチェ・ソンウン著、小山内園子訳『働きたいのに働けない私たち』(世界思想社)の一部を抜粋・編集したものです。
北欧諸国の女性たちは
男性と違う職業に就いている
男女の性別で職種が分離する現象は、ほとんどの国で見られる。意外なことに、この性別職務分離現象が深刻なのは、北欧の福祉国家スウェーデンである。
性別職務分離は、社会的、経済的地位の高い職種に女性が少ない現象を指す「垂直的分離」と、女性が公共領域など特定の部門に集中する「水平的分離」に分けられる。
社会学者のジェニファー・ジャーマンらが、2002年から2006年を基準に性別職務分離のレベルを比較した研究結果によれば、調査対象22か国のうち、職務分離の現象が最も顕著なのは、フィンランド、デンマーク、スウェーデンなど、北欧の社会民主主義国家だった(注1)。
社会民主主義を代表するスウェーデンと自由主義を代表するアメリカ、そして韓国の事例を比較してみよう。ガラスの天井と呼ばれる垂直的分離現象が最もひどかったのは韓国で、女性が公共部門に集中する水平的分離現象は、スウェーデン、アメリカ、韓国の順に深刻だった。
ほとんどの国で、パート労働は質の悪い働き口という見方が優勢になっている。
低賃金の場合が多く、雇用も不安定だ。労働組合がない、もしくは、あっても代表性が弱くて保護を期待できない。雇用保険が適用されない作業場で働くパート労働者も少なくない。
非正規で働いた瞬間に
正規雇用の道が断たれる韓国社会
韓国の状況はどうだろうか。労働市場において、低賃金の女性労働者の地位は低い。非正規職だった女性が、より良質の働き口へと移動することは、事実上不可能である。
スウェーデンの場合、女性の雇用が社会のサービス分野に集中しているせいで職務分離現象が激しい反面、公共部門から社会サービスが提供されるから、低賃金の女性労働者であっても、比較的寛大な福祉政策や労働組合の恩恵が受けられる。
韓国の場合、サービス部門に女性が進出しているという点は同じだが、スウェーデンのように良質の働き口とは言いがたい。女性の割合が高い職業群は、ほとんどが非正規職である。1997年のアジア通貨危機以降、非正規職と正規職の賃金格差も広がった。そのことが女性の賃金を引き下げる結果となり、性別賃金格差を深刻にしている。
韓国社会において、正規職か否かは職の質を計る重要な指標である。月給が低くても、求職者は非正規職より正規職の働き口に就こうとする。そうした状況にあって、2013年の朴槿恵(パク・クネ)政権以降、政府が打ち出す女性の雇用政策には「パート労働(時間制労働)の職の拡大」という文言が登場し続けている。
「子どもを持つ母親はパートでの仕事を好む」というニーズ調査によるものか、あるいは、スウェーデンのような国で、女性たちが子どもの小さいうちは労働時間を短縮して働ける制度を積極的に活用している事例を見て政策の移植を目指したのかは不明である。
しかし、現時点でのパート労働の拡大は、韓国の女性たち、特に高学歴女性たちにとって効果は低い。
韓国でのパートの働き口は大部分が非正規雇用であり、一度パート雇用に足を踏み入れたら正規雇用への復帰が難しくなるという状況では、高学歴女性の労働力が浪費される現象だけが深刻化しかねない。
韓国の大学進学率は、1980年代から2016年まで、男女とも似たような水準で増加している。だが経済活動への参加率は、男性に比べて女性が低いままなのだ。
賃金水準を10分位に区分した場合、所得が最も低い1分位に属する女性は全体の13.7%。割合は、男性(7.9%)に比べて5.8%ポイントも高い。高所得に該当する10分位に男性の13.2%が属しているのに対して、女性は4.4%に過ぎなかった。
男女の賃金格差が大きくなる年齢は35歳から54歳までである。その時期の女性は、過半数近くが1~3分位相当の低い賃金しかもらっていない。
さらに、女性はキャリア断絶で勤続期間が短くなるため、年次にともなう賃金上昇効果も反映されないことが多い。
調査標本となった女性の半分以上が勤続3年未満だったのに対して、男性は過半数が勤続3年以上の労働者だった。
韓国の女性たちは労働市場に参入するまでの困難に加えて、労働市場に入ってからの賃金格差という、二重の困難をあじわうのである。