鉄は何から作られるか知っていますか?
今皆さんが目にしている鉄のほぼ100パーセントは、鉄鉱石から作られた西洋式の洋鉄です。
日本刀の材料である玉鋼は、砂鉄から作られた日本式の和鉄なんです。

たたら製鉄の科学

砂鉄から鉄を作るたたら製鉄。西洋式の製鉄との大きな違いは、原料の砂鉄を炭を使い低い温度で還元して製鉄する点です。
小学校の理科の授業を思い出してください。
砂鉄は鉄(Fe)と酸素(O)が結合した酸化物です。
その酸化物に炭(C)で熱を与えて酸素を奪い、炭(炭素 C)と結合させて二酸化炭素(Co2)と鉄(Fe)に戻すやり方です。
しかも、出来た鉄に炭素(C)が入り込み、原料から鋼が出来る直接製鋼なんです。
砂鉄(鉄+酸素)+炭(炭素) → 還元 → 鋼(鉄+炭素)と二酸化炭素(酸素+炭素)
鉄の母、鉧!
たたら製鉄で出来た鉄の塊を鉧(ケラ)と呼びます。鉄の母と書くんです。
これは、私が自家製のたたら製鉄で造った鉧です。
重さは約15キロあり、今まで作ったなかで最大です。
砂鉄が50キロ、炭が80キロを使い10時間ほどかけ作りました。
鉧は、場所によって硬さ(炭素量)が違ううえに、鉄と鉄との結びつきが弱いのでこのままでは製品になりません。
このまま、熱して延ばしていくと、崩れてしまいます。
その為、和鉄を製品にする為の折り返し鍛錬という伝統技法が必要になるんです。
たたら製鉄の歴史
日本では、5世紀頃から製鉄が始まっていました。最初は大陸から伝わった渡来の技術だったはずです。
日本刀が出来たのはそれから200年程してからの事です。当時は、小さな設備で、自然の風を利用しての製鉄だったと推測されています。
平安後期、鎌倉期になるとたたら製鉄は大型化され、すでに鉄の生産も安定していました。ただ、鉄は今とは比べ物にならないぐらい貴重な物だったことと思います。
室町時代以降になると、鞴(フイゴ=送風機)の進化や技術の進化・安定でたたら製鉄の一番の黄金期となります。この頃すでに中国地方は、鉄の名産地でした。
明治時代になると、文明開化の音とともに西洋式の製鉄技術が日本に本格的に入ってきます。
西洋式の製鉄は日本のたたら製鉄と違い、鉄の質は悪くてもすぐ使える状態の鉄が沢山取れるので、近代産業に鉄が必要な日本では盛んに行われ、ついに大正14年に日本からたたら製鉄の火が消えてしまいました。
ですので、平成の今、たたら製鉄で作られた鉄を見る機会がほとんどありません。
しかし、たたらの火は完全には消えていませんでした。
日本国内では、私も含め10人程の刀鍛冶が自家製のたたら製鉄で鉄を作り、作刀に使っております。
文化庁も日立製鉄と一緒に、刀鍛冶の為に昭和52年よりたたら製鉄を年に数回行い、鉄を刀鍛冶のみに販売しています。

470年ごろの日本の古墳から出土した遺物

日本で製造されていた古代勾玉
日本刀岡山城に展示された日本刀(無銘)
日本刀(にほんとう)
日本固有の製造法によって作られた刀剣が、日本で独自の発展を遂げた刀剣類の総称。
刀剣類は、日本では古墳時代から作られていたが、一般に日本刀と呼ばれるものは、平安時代末期に出現してそれ以降主流となった湾曲した刀のことを指す。
・・・・見事な日本刀に憧れて、中国や朝鮮半島で偽日本刀がつくられ始めた!
倭刀(わとう、Wo-Dao:ウォタォ)
中国や朝鮮で製作された倭刀は、鍔などの刀装が中国風の物もある。
なお、中国で製作された倭刀は、大太刀がもとになった苗刀のみではなく、太刀や打刀を模した物もあった。