2015.9.2 07:00更新
【鉄道ファン必見】
「ななつ星」「ゆふいんの森」…JR九州の「顔」を作った工業デザイナー・水戸岡鋭治氏 「通勤電車だからこそ革張りなんだ!」

JR九州の観光列車「或る列車」=北九州市
この8月、JR九州で新しい観光列車「或る列車」がお目見えした。担当した工業デザイナーの水戸岡鋭治さん(68)は、豪華列車「ななつ星in九州」をはじめ「ゆふいんの森」「いさぶろう・しんぺい」など多くの列車を手がけていることで知られる。折しも新刊『鉄道デザインの心 世にないものをつくる闘い』の出版記念イベントが開かれ、水戸岡さんが列車づくりの姿勢を語った。(溝上健良)
通勤電車に本革シート
記者は6年前、鹿児島の離島に出張した際に、九州新幹線に初めて乗った。当時は新八代(熊本県)~鹿児島中央のみが開通していたため、博多から新八代までは在来線の787系特急電車「リレーつばめ」に揺られて行った。この電車も水戸岡さんデザインで十分に豪華な列車だったが、新八代で乗り換えた九州新幹線「800系」電車には度肝を抜かれた。
JR東海・JR西日本で使われている700系を基に開発されたJR九州の800系には、グリーン車がない。しかし普通車の座席は、グリーン車並みの横4列シートだ(※東海道新幹線の普通車は横5列シート)。しかも木製の椅子に西陣織風のシート地で、背もたれは平均的な大人の男性でも頭が隠れるほど高い。まさに全車両がグリーン車以上の高級感にあふれていたことに驚かされたのを思い出しながら水戸岡さんの新著を開くと「鉄道車両は椅子が命」という章があった。
《僕は椅子を重視しています。「外観が一番大事」「インテリアが大事」という人もいっぱいいますが、椅子が一番だと今でも思っています。予算が限られる中で、どこに一番お金を掛けるかというと椅子》。驚くべきことに新幹線だけでなく、九州では一部の通勤電車にまで、木製・革張りのシートが設けられている。かつて佐賀県に出張したときにその「817系」電車に乗って、これまた驚かされた。《革のシートで通勤できるんだから、九州の人は幸せです》と水戸岡さんは記すが、本当にそうだと思う。
通勤電車に豪華な椅子を導入することには、当然ながら反対意見があったという。《JR九州の人みんなに「水戸岡さん、こんな本革と木を使ったら子どもたちが傷付けますよ、通学している生徒の中には不良もいっぱいいるんだから」って言われました。「じゃあ何ですか、プラスチックと合成皮革でやるわけ? そんなこと言わずに、最高のものを不良に提供しましょうよ」と言ってなんとか説得して、木と本革の通勤用の椅子を造ったんです》。
ずいぶんと鉄道車両に大金を投じているようにも思えるが、新著には「贅沢だけど高価ではない」という章もある。先の800系電車は、700系電車よりもかなり高価かと思いきや《JR九州によれば、原価に大きな差はないそうです。それは僕たちが職人を見つけ、価格を交渉し、工程を管理しているからでしょう。デザイナーが三役も四役もこなすことでコストが下がり、さらに、スピードアップできて一貫性が守れるのです。本当の無駄が省けるようになるのです》とのこと。
通勤電車のシートに使われている本革は、よくみると傷や色ムラがあるという。《日本の品質基準は天然素材に対しても妙に厳しいんです。木目が揃った木とか、節のない木を要求するわけです。色が違っては困る、傷があっては困るとかね。意味ないでしょ。天然素材には傷とか色ムラがあってあたりまえなんです。だって天然なんですから》という理由からだ。天然素材が経年変化するのも“味”として前向きにとらえて使っているのだという。こうして豪華かつ安価な車両を実現している。
いかに遅く走れるか
記者の父親はかつてJR東海の職員だったので言いにくいことだが、今の東海道新幹線は普通車とグリーン車だけの編成で、本当につまらなくて乗る気がしない。昔は違った。2階建て車両があって食堂車があり、グリーン個室があり、いかにも“夢の超特急”といった趣があった。難しいとは思うがぜひ一度、800系電車に東京まで乗り入れてほしいと願う。「世の中にこんな車両があったのか」と、東海道新幹線に衝撃が走ることだろう。
水戸岡さんも食堂車に対する思い入れは相当あるようで、かつて博多から西鹿児島まで4時間以上を要していた特急「つばめ」用に787系電車をデザインした際、食堂車の導入を強く主張したという。妥協の末に787系電車にはビュッフェ(軽食堂)車を導入することになり、ドーム型天井の車両が造られた。
しかし乗客数の増加と九州新幹線の一部開業で、ビュッフェ車は一般車両に改造されることになってしまう。そのデザインも水戸岡さんが担当したが、そこであきらめなかったのがすごい。《改造した電車をよくみてください。座席は普通のものを並べました。でも、天井はそのままです。ビュッフェの頃に大好評だった卵型のドーム天井を残してあるんです。おかしいでしょ、普通車なのに。いつでも、改造して元に戻せるようにしてあるんです》。
話題の「或る列車」については、7月末に都内で開かれた出版記念イベントで、こんな話をしていた。
「ヒットをさせるのが私の仕事。ヒットを打たないと次の仕事は来ない。或る列車も、列車が走り出す瞬間まで調整を続けている」「車両を作るときに『いかに遅く走れるか』がテーマ。1駅を1時間かけて走る電車は楽しいんです」「或る列車は『ななつ星』と違って(乗車は)抽選ではないので、ぜひ乗りに行ってみてください」。また、「赤字会社のJR九州がこうした列車を作ったことが誇り」とも。
たしかに、黙っていても乗客がいる大都市圏の鉄道会社と違い、JR九州は高速バスやマイカー、航空機とも激しい競争関係にある。それだけに会社も必死だ。「ななつ星も、リーダーが『作るぞ』と号令をかけたから実現できた。唐池さん(JR九州の唐池恒二会長)はある意味、天才ですね」と評する。
車両をデザインするにあたっては衝突の連続だったそうだ。《このようにJR九州に盾突くのにはわけがあります。僕は本当の顧客に尽くしたいのです。この25年間、ずっとJR九州の仕事をやってきました。ただし、JR九州は雇い主ではありますが、本当の顧客ではありません。本当の顧客は最終ユーザーです》。列車に乗る子供やお年寄りに乗務員、そうした人たちのために闘ってきたと自負している。
新刊の終章で、水戸岡さんはこう記している。《雇い主の言うことを100パーセント聞くデザイナー、デザイナーの言うことを100パーセント聞く職人。そんな従順な人は、世にないものをつくる闘いに勝つことはできません。これを読んだ方も、大いに盾突いて、正しい方向に向かっていただきたいと思います。盾突き方のサンプルは、成功例、失敗例を含めてこの本にしっかり書いておきました》

特急「リレーつばめ」として運行されていた787系電車。かつてはビュッフェ(軽食堂)車もあった =平成21年7月

九州産食材にこだわったスイーツなどが提供された「或る列車」の試乗会

特注スイーツを楽しめる新観光列車「或る列車」の出発合図をするJR九州の関係者ら=8月8日、JR大分駅

JR九州の観光列車「或る列車」の車内=北九州市

JR九州の観光列車「或る列車」の車内=北九州市

水戸岡鋭治著『鉄道デザインの心』(日経BP社)
http://www.sankei.com/premium/news/150902/prm1509020006-n1.html
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・・・本の宣伝でしたか。
(;´・д・)
~ 以上 ~
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昔の振り子なら、制御無しの自然振り子かな?
・・・酔いそうだなぁ。
( ´-д-)
2015.9.1 18:10更新
【鉄道ファン必見】
さよなら381系「くろしお」 さよなら振り子電車 国鉄時代からの車両が10月に引退 JR西

この傾きが381系の特徴=JR御坊駅
JR西日本は、紀勢線で運行する特急「くろしお」に、新型車両の「289系」を10月31日から導入し、約40年前から運用してきた「381系」の運転を終了すると発表した。381系は振り子の原理で車体を傾け、カーブ区間でも高速で走行できる「振り子式」として長年活躍したが、老朽化や快適性を考慮し新型車両への切り替えとなった。
381系は、国鉄時代の昭和53年から紀勢線で運転を開始。車体と台車の間に「コロ」と呼ばれるローラーが組み込まれているのが特徴で、カーブ区間では振り子のように車体が傾くことにより高速で走行することができる。
JR西日本和歌山支社によると、紀勢線では現在、上下全33本のうち11本が381系。他にもJR西管内の特急「きのさき」や特急「やくも」などで用いられ、カーブ区間が多い路線で活躍してきた。
しかし、コンセントや多目的室などはなく、車いす対応のトイレもなかった。装備の老朽化も進んでおり、振り子式による独特な揺れが乗り物酔いにつながるとの指摘もあった。
これにより、くろしおの車両は全て昭和62年のJR発足以降に製造した車両となる。381系の車両は一部を「やくも」に用い、他は廃車になる予定。10月31日から導入される新型車両「289系」は、北陸線の特急「しらさぎ」の683系の塗装を変更し、一部の装備を変えたうえで導入される。
同社は381系の引退に伴い、10月30日にラストランのイベントを計画している。担当者は「381系の長年のご愛顧に感謝するとともに、快適性が向上した新型車両をぜひ利用してほしい」と話している。
またJR西は、現在京都・新大阪-白浜間で運転している「287系」について、新宮まで運転区間を延長する。

御坊駅に入線する381系くろしお

千里観音からの俯瞰(和歌山県みなべ町)

玉の浦遠望(和歌山県那智勝浦町)

古座川鉄橋(和歌山県串本町)

新たに「くろしお」となる北陸線の特急「しらさぎ」(JR西提供)
http://www.sankei.com/west/news/150901/wst1509010064-n1.html
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