SNS騒然…ホームライナー、特急格上げ説を追う
JR東日本の快速列車「ホームライナー」を巡る動向が、SNSをにぎわせている。数百円を上乗せすれば、定期券客も特急車両に座って帰れる。通勤客にとってはありがたい列車が、特急に格上げされるかもしれないというのだ。
発車2分前には「満席」
水曜の午後6時25分。JR東京駅の東海道線ホームに、6時30分発の小田原行き「湘南ライナー1号」が滑り込んできた。特急「踊り子」に使われている車両だが、運行上は快速列車だ。7、8号車の前で見ていると、ライナー券(510円)を駅員に示した人が次々に車内へ。3分後、ホーム上の券売機には「売り切れました」という赤い文字が現れ、定刻に出発した。この時、ホーム上の集合場所には既に、7時発の「湘南ライナー3号」に乗る人たちが並び始めていた。
JRのホームライナーの歴史は、30年以上前にさかのぼる。終着駅で客を降ろした特急車両は、夜、空っぽのまま車庫へ戻る。これを有効活用できないか――。後のJR東海社長・須田寛氏が考案し、国鉄末期の1984年、上野―大宮で始まった。
「コーヒー1杯の値段(300円)を上乗せすれば定期券客も特急車両に座れ、しかも速い」と、通勤客は大歓迎。赤字国鉄にとっても増収につながるため、たちまち全国へ広がった。JRに引き継がれた旧国鉄の旅客営業規則は、特急券や指定券が要る列車に、定期券では乗れないと定めている。そこで現場担当者は、座席を指定しない「着席券」という概念を引っ張り出し、実現にこぎつけ
私鉄にも続々登場
「座って帰れる」が魅力の通勤客向け座席指定列車は、今や私鉄でも定番になっている。今年だけでも、西武鉄道(西武新宿―拝島)と京王電鉄(新宿―橋本、京王八王子)が新たに始めた。夜の下り列車が「疲れた体にありがたい」「読書など移動時間を有効に使える」などと好評で、朝の上り列車に拡大させた鉄道会社(京浜急行電鉄など)もある。確実に座るため上乗せされる料金は、300~400円が主流だ。
旧国鉄時代から、定期券で特急に乗れる例外規定はあった。乗れる範囲は次第に拡大。今や、「定期券で乗れない特急は一部」(JR東日本広報部)という状態となっている。
定期券で特急に乗れるのは便利だが、当然ながら特急券がいる。利用者にとっては、割安のライナー券のほうが良いに決まっている。
「特急格上げ?」の疑心暗鬼
JR東日本は現在、中央・青梅線(東京―高尾、青梅)に「中央ライナー」「青梅ライナー」、東海道線(東京―小田原)に「湘南ライナー」、湘南新宿ライン(新宿―小田原)に「ホームライナー小田原」、総武線(東京、新宿―千葉)に「ホームライナー千葉」を、それぞれ走らせている。各路線とも1日あたり複数本、中でも湘南ライナーは最も多い9本運行されている。
これらのうち一部が近い将来、特急に格上げされるのではないか――という疑心暗鬼の声が、このところSNS上でにぎやかだ。
「湘南ライナーもなんだか特急格上げで消滅しそうな気配が……」
「中央ライナーと青梅ライナーが特急格上げ?」
「特急になると、青春18きっぷで乗れなくなる」
団体列車の企画などを手がける旅行会社を経営し、「青春18きっぷ完全攻略ガイド」(イカロス出版)などの著書がある中尾一樹さんは「SNS上の指摘は単なる臆測でなく、根拠がいくつかある」と説明する。
うち一つは、JR東日本が最近、「おだわら」「おうめ」「はちおうじ」など5件を商標登録すべく特許庁へ申請したこと。湘南ライナーなどを格上げした特急の愛称に使うためでは、と推測したくなる。
加えて、特急と掛け持ちのホームライナー用車両は、軒並み古くなっている。中央線の特急「あずさ」「かいじ」(新宿―松本、甲府など)に2001年から使われているE257系は7月から順次、新しいE353系への置き換えが進む。E257系は改修後、東海道線などで使われる予定。特急「踊り子」(東京―伊豆急下田など)には、旧国鉄時代の1980年代に造られた185系が、改修されながら今も現役だ。中尾さんは「車両を新造する費用の一部を、特急格上げに伴う増収分で賄う狙いがあるのでは」とみる。
高崎線などに格上げの先例
ホームライナーの特急格上げには、“先例”がある。2014年に登場した全席指定特急「スワローあかぎ」(上野―前橋など)だ。これに伴い、高崎線の「ホームライナー鴻巣」(上野―鴻巣)が廃止された。仕事帰りに鴻巣までホームライナーを利用していた人にとっては、同じ区間を「スワローあかぎ」に乗ると、乗車券以外の負担額が1.5倍(510円→750円)になった。上乗せ額はもはや「コーヒー1杯」とは言えまい。常磐線の「ホームライナー土浦」(上野―土浦)も1998年、新しい車両が導入された特急「フレッシュひたち」と置き換えられる形で姿を消した。「ホームライナーが廃止された路線との、不公平を解消するため特急に格上げするとの見方もできる」と中尾さん。
特急格上げについて、SNS上では賛否が渦巻く。「新型車両が導入されれば設備が向上する。JRが料金収入を増やそうとするのは当然」「普通列車のグリーン車より安い料金で、特急車両に乗れるのはまずいと思っていた」など、格上げに理解を示す声はあるが、少数派に過ぎない。多くは「あの料金だから利用しているのに」「特急になったら利用率が激減するぞ」「クレームが多そうだなあ」など、負担が増すことへの不安を募らせている。
利用者負担は2倍に
この臆測が的中すると、首都圏中心部の利用者の負担額はどう変わるのか。
「湘南ライナー」を東京―小田原間(83・9キロ)で利用する場合は、乗車券にライナー券(510円)を足せば乗れる。同じ区間を特急「踊り子」に乗ると、自由席特急料金は930円。およそ2倍になるわけで、頻繁に利用する人にとっては、見過ごせない額だ。心配の声が上がるのも理解できる。
JR東日本広報部に聞いてみると、「格上げについては、現時点ではお答えしかねる」とのことだった。ただ、その後に「今後、決定した場合は適時に発表する」との一言が加えられた。格上げの準備が進んでいることを示唆するようで、気になるところだ。
中尾さんは、別な角度からも、特急格上げに疑問を投げかける。「JRから定期運行の急行が消えた今、特急という料金種別を見直す時期に来ている。既に『特別な急行』ではないので、東武鉄道のように急行料金を廃止して特急料金に統合し、定期券での乗車を正式に認めたり、急行だけで受けられた各種割引を特急でも受けられたりするよう改めるべきだ。特別快速や新快速を、私鉄のように急行料金を取らない急行と名乗らせても良いのではないか」と話す。
今年は、新幹線の元祖の一つである電車特急「こだま」の登場(1958年)から60年の節目に当たる。東京―大阪間が7時間を切る大幅なスピードアップは、日帰り出張を可能にする画期的な出来事で、まさに「特別な急行」だった。所要時間1時間ほどの列車を特急扱いして良いのか、という議論はさておき、快適な通勤を支え続けるホームライナーの行方は、利用者にとって目が離せない。
https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20181010-OYT8T50005.html
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「格上げについては、現時点ではお答えしかねる」
「今後、決定した場合は適時に発表する」
連中・・・やる気だな?
( ̄ー ̄)ニヤソ