家の作りやうは、夏をむねとすべし。
冬はいかなる所にも住まる。
暑き比わろき住居は、堪へがたき事なり。
深き水は涼しげなし。浅くて流れたる、遥かにすずし。こまかなる物を見るに、遣戸は蔀の間よりも明し。
天井の高きは、冬寒く、灯暗し。
造作は、用なき所をつくりたる、見るも面白く、万の用にも立ちてよしとぞ、人の定めあひ侍りし。
家の作りようは、夏を中心にしたほうがよい。冬はどんな所にも住める。暑い頃、悪い住まいは、堪えがたい事だ。深い水は涼しい風情が無い。浅く流れるのが、ずっと涼しげだ。遣戸のある部屋は蔀のある部屋よりも明るい。天井の高いのは、冬寒く、灯が暗い。家の作りは、用の無い所を作りこんでいるのが、見るにも面白く、万事、用にかなってよいと、人の評定しあったことだ。
何事も入りたたぬさましたるぞよき。
よき人は知りたる事とて、さのみ知りがほにやは言ふ。
片田舎よりさしいでたる人こそ、萬の道に心得たるよしのさしいらへはすれ。
されば世に恥しき方もあれど、自らもいみじと思へる気色、かたくななり。
よくわきまへたる道には、必ず口おもく、問はぬかぎりは、言はぬこそいみじけれ。
何事に関しても素人のふりをしていれば良い。知識人であれば、自分の専門だからと言って得意げな顔で語り出すことはない。中途半端な田舎者に限って、全ての方面において、何でもかんでも知ったかぶりをする。聞けば、こちらが恥ずかしくなるような話しぶりだが、彼等は自分の事を「偉い」と思っているから、余計にたちが悪い。
自分が詳しい分野の事は、用心して語らず、相手から何か質問されるまでは黙っているに越したことはない。