ジブリの最新作『かぐや姫の物語』を観て来ました。非常に良かったですね。2回観てしまいました。
『かぐや姫の物語』は原作の「竹取物語」にまったく忠実なので、『ナウシカ』や『ラピュタ』のような展開を期待するとがっかりすると思います。でも、かぐや姫の心情に思いを寄せたとき、感情が大きく揺さぶられることになるでしょう。最後の月の迎えが来る場面では、私はかぐや姫の哀しみに胸が締め付けられました。
私たちは誰もが、天真爛漫だった子供時代をなつかしく思うはずです。自然や仲間と遊ぶことがただ面白かった。それが永遠に続けばよいと思った。でもそうはいかないのが世の常です。私たちは大人になるにつれて、生きるために様々なしがらみや約束事で縛られるようになります。その結果、自分の本意ではないことを受け入れたり、自分の行動が意図せずに他人を不幸にしてしまったりする。人生は甘いだけでなく、苦いこともあるのです。それは宿命ともいえます。
作家夏目漱石は小説『草枕』の冒頭で有名な「人の世は住みにくい」という科白を書いていますが、その後で主人公に次のように言わせています:
世に住むこと二十年にして、住むに甲斐ある世と知った。二十五年にして明暗は表裏のごとく、日のあたる所にはきっと影がさすと悟った。三十の今日はこう思うている。――喜びの深きとき、憂(い)いよいよ深く、楽しみの大いなるほど苦しみも大きい。これを切り放そうとすると身が持てぬ。片づけようとすれば世が立たぬ。
喜怒哀楽と一体の「人の世」にかぐや姫はどう思い、どう行動したのか。そして「人の世」を生きるとはどういうことなのか。それがこの映画の主題(姫の犯した罪と罰)であるように思います。
主題以外のことを少し書きます。
『かぐや姫の物語』は日本文化の彩りに溢れ、日本人としての記憶を呼び覚ましてくれました。「雅楽」や「わらべ歌」といった特徴的なものだけでなく、草木や生き物の描き方、子供の仕草、琴や笛の音色などにもよく表れていました。
たとえば、映像については「動く日本画」であり、絵巻物を次々と広げて鑑賞しているような心地になります。ヒロインのかぐや姫も、長い黒髪と澄んだ瞳、ふっくらとした顔立ちといった典型的な日本美人でした。十二単を着て琴を弾く姿も良いのですが、小屋で機を織る姿の方が日本女性の愛らしさが出て、貴族たちと同じように求婚したくなりました。
その他、声優陣(※)や主題歌「いのちの記憶」もこの映画によく溶け込み、大変素晴らしかったです。劇場にはハンカチを持って行った方が良いかもしれません。若干違和感のあるシーンもあるのですが、それ以上にお釣りが来ます。オススメです。
※かぐや姫に求婚する貴族の顔までもが声優に酷似しているのには笑ってしまいました。なお、翁の声役の地井武男さんはこの映画が遺作となりました。

予告編