---
風知草:慰安婦論争史を読む=山田孝男
毎日新聞 2012年09月03日 東京朝刊
事ここに至った以上、「慰安婦」をめぐる日韓摩擦は原点から見直したらいい。
韓国大統領は「竹島上陸の動機は慰安婦問題」だと言っている。日本政府の対応があいまいなために韓国は不満、日本国民も不満。諸外国で「慰安婦は日本軍独特の蛮行」という理解が広がっている。なぜこうまでこじれたか。経緯を知り、誤解を解く努力も必要だ。
問題の原点を知るには現代史家、秦郁彦(79)の労著「慰安婦と戦場の性」(99年、新潮選書)が参考になる。慰安婦の実態から国際比較まで書き込んで慰安婦百科の趣があるが、第1章(=冒頭16ページ)が特に重要である。日韓摩擦の発端を解明して読み応えがある。
秦は保守の論客、右寄りの評論家と見られているが、真骨頂は徹底的な実証主義にある。近著「陰謀史観」(新潮新書)でも、張作霖(ちょうさくりん)爆殺事件(28年。日本の関東軍による謀略と見るのが定説)はスターリンの陰謀だったという右寄りの異説を緻密な立証でやっつけており、イデオロギー色は薄い。
元大蔵省(現財務省)財政史室長。退官後、米プリンストン大客員教授。「昭和史の謎を追う」(文芸春秋)などで93年度菊池寛賞受賞−−。
その秦がこう言っている。90年代以降、慰安婦問題が先鋭化する原因は日本がつくった。旧日本軍による慰安婦募集を裏づける資料を日本人の研究者が発掘、朝日新聞(92年1月11日朝刊)が1面トップで報じ、大反響を巻き起こした。
他のマスコミも追随して両国の世論が沸き立つ中、直後に訪韓した宮沢喜一首相は謝罪を余儀なくされ、「真相究明」を約束して帰国する。日本政府は実際に調査し、それを踏まえて公表されたのが93年の河野洋平官房長官(後に自民党総裁、衆院議長)談話である。
談話のミソは、戦時中、日本兵の相手をした慰安婦(植民地支配下の朝鮮半島出身者が少なくなかった)に対する旧軍の責任を認めて謝罪し、その「気持ちを表す方法を検討する」という決意表明にある。
だが、対韓戦後賠償は日韓基本条約(65年)で「完全かつ最終的に解決された」と確認を交わしている。新たな補償はしないと決めたにもかかわらず、勢いに押されて相手に期待を抱かせる表現を盛った。
そこで日本は半官半民の「アジア女性基金」を設けて元慰安婦に「償い金」を渡す一方、歴代首相が謝罪を重ねたが、評価されず、補償要求はエスカレート。今年5月の首脳会談で李明博(イミョンバク)大統領が慰安婦問題の解決を求め、野田佳彦首相が「知恵を絞ろう」とソフトに応じたところ、かえってこじれたというのが目の前の現実だ。
当然の帰結として、いま日本では、河野談話の見直しが盛んに議論されている。私自身、見直しに賛成だが、擁護論も根強いようであり、河野談話の存廃だけを争って国論の分裂を招くことは避けたい。
外務省による慰安婦の英訳はcomfort womenだが、海外報道は、日本の慰安婦をsexual slavery(性奴隷)と表現した記事が多い。そもそも国連人権委報告書(96年)がそうだった。なぜか。「慰安婦と戦場の性」は翻訳をめぐる問題も実証的に論じている。
問題の根は日本にある。韓国の出方待ちではなく、日本自ら誤解を解く。まずは秦の労作を的確、良質な英訳で世界に発信したらどうか。(敬称略)(毎週月曜日掲載)
-----
なお、産経新聞の阿比留ちゃんが言うには、
本日、たまたま話した外務省元高官も李大統領が天皇陛下に謝罪を要求した件を強く批判し、「これまで日本は韓国には配慮し、遠慮しながら接してきたが、今回、韓国の側から一線を越えた。韓国の保守というものが、どの程度のものかもよく分かった。今は両国が普通の国と国との関係になるいい機会だ」と述べていました。
政界でも官界でもメディア界でも、日本のあちこちで、もういちいち韓国のような駄々っ子の相手をするのはやめよう、突き放してしまおうというコンセンサスが育ってきました。いいことです。遅きに失した感は否めませんが、それでも改めるべきは改めるべきですからね。
-----
とのことです。www
良い時代に巡りあいました。www