Q世界が認めた<おバカな死に方>のCMって?
A6月のカンヌ国際広告祭で5冠に輝いた豪メルボルン鉄道の公共広告です。
何はともあれ、オーストラリア・メルボルンの鉄道会社「メトロ・トレインズ」が制作したキャンペーン広告「Dumb Ways to Die」(おバカな死に方)の映像をご覧になってみてください。
韻を踏んで歌われているのは
自分の髪の毛に火をつける。凶暴なクマを棒で突く。使用期限の切れた薬を飲む。自分の体をピラニアの餌にする……。動画の中では、こうしたあまりにも無謀で愚かしい行動の結果、かわいらしい姿をしたキャラクターたちが次々と命を落としてしまいます。ユーモラスな響きのある歌詞は、「ガラガラヘビを『ペット』にする」「インター『ネット』で腎臓を売る」などと、きれいに英語の韻を踏みながら歌い進められていきます。
「いったい、これは何のCMだ?」と制作意図を疑う気分になったころ、メッセージは核心に入っていきます。英語の歌詞は、次のように続きます。
「駅のプラットホームの端に立つ。遮断機が下りた踏切に車で進入する。線路を走って渡ろうとする。――これらは、韻こそ踏まないが、ホントに起こりうる。最もおバカな死に方だ。最もおバカな死に方だ……」。視聴者はここまで映像を見、歌詞を聞いた後、CMが鉄道事故防止を訴えるキャンペーン・フィルムだということに気づく格好です。広告は最後になって、「電車の周りでは安全に気をつけて――メトロからのお知らせでした」という女性の声で締めくくられます。
事故死者数は前年同期比21%減
昨年11月に公開されたこのCM、動画投稿サイトへのアップなどを通じ、これまでに世界中で4400万ビュー以上を稼ぐ大ヒット作となりました。フェイスブックやブログを通じた拡散は今も続いています。この結果、メトロ・トレインズ管内の事故死者数は、前年同期に比べて21%の減少を記録。同社が目標としていた削減率10%を大幅に上回る効果をあげたということです。広告がもたらした現実の成果も相まって、今年6月、仏カンヌで開催された世界最大級の広告フェスティバル「カンヌ国際広告祭」(カンヌ・ライオンズ)で、「Dumb Ways to Die」は、PR部門、映像部門、ラジオ部門など5部門でグランプリを獲得。世界が注目する舞台で、最高の栄誉を受けるに至りました。
マジメな日本の呼びかけ
さて、日本でも、スマートフォンの急速な普及を背景に、画面に気を取られて駅のホームから転落するといった事故が問題となっています。JR新宿駅など首都圏の約250駅では、「携帯電話&ゲーム、歩きながらはダメ!」と記されたポスターが掲示され、「けがや事故につながる恐れがあります。立ち止まってのご利用を」というアナウンスが繰り返されています。JR東日本の呼びかけ方は、実にマジメなトーンですが、肝心の効果のほどはどうでしょうか? キャンペーンは、ひとまず7月31日で終了するということです。
(調査研究本部主任研究員 渡辺覚)