海賊襲撃から日の丸タンカーを守れ-法施行で年内にも武装へ
日本船籍の原油タンカーをソマリア沖などで海賊から守るため、武装した警備員の乗船を認める「日本船舶警備特別措置法」が11月30日に施行された。これまで非武装で海賊襲撃の脅威にさらされてきた海運各社は武装警備に向けて動き始めた。
銃刀法の特例を規定する形で、民間人による武器の所持と使用を国内法で初めて認めた。海運各社は国土交通省に申請した上で、当面の間は武器の扱いに慣れた海外の警備会社と契約する。早ければ年内にも警備員の乗船が実現する。対するは、ロケットランチャーなどで武装し、身代金目当てに襲撃を繰り返すプロの犯罪集団と化した現代の海賊だ。
商船の武装は危険海域で世界的には広く実施されているが、日本船籍の船ではこれまで武器所持は一律に違法だとして自衛手段を持たないまま危険海域を運航していた。国際海事局の集計によると、今年は11月16日時点でソマリア沖・アデン湾で被害にあった日本企業が所有・運航する船舶はないが、12年に2隻、11年には7隻が襲撃を受けた。国際刑事警察機構(ICPO)などの調べによると、去年の海賊事件1件あたりの身代金は400万ドル(4億1000万円)以上と見積もられている。
川崎汽船 の安全運航チーム長の種谷收氏は「早ければ12月にも実現したいと考え、申請に向け準備を進めている。可能なら1番乗りを目指したい」と述べた。これまでも外国籍の自社船舶では武装警備員を配置した経験があり、信用できる英国専門会社に依頼するつもりだという。太田昭宏国交相も11月26日の閣議後の記者会見で「早ければ年内にも第1号の警備員配備を実現したい」と述べた。
ジグザグ航行で振り切る
商船三井の発表資料によると11年3月、オーマン沖を航行していた同社の石油タンカーが海賊の襲撃を受けたが、翌日、米海軍とトルコ海軍が救援に駆けつけ、乗組員の負傷も油の流出もなかったという。09年には中古車を積んだタンカーがソマリア沖で高速艇2隻に乗った海賊から銃撃を受け、「スピードを上げジグザグに走るなど約40分の回避行動」をとって振り切ったという。
元船主協会長として法制化に取り組んできた商船三井の芦田昭充会長は「ようやく実現ができたというのが正直な実感」という。「会社としても来年早々の警備員の乗船配備に向け最終的な準備を進めたい」と述べた。日本郵船 の赤峯浩一専務経営委員も「海賊の発生状況や関連する情報を慎重に評価し、乗組員と船舶の安全を守るために必要であると判断すれば、新制度を活用する」という。
今回の法制度で武装の対象となるのは、南緯10度以北のアラビア海・インド洋の海域(ペルシャ湾を除く)及び紅海・アデン湾の海域。船種は原油タンカー。船主協会によると現在日本船籍の同種のタンカーは16隻。これに対し海運各社からは今後、武装警備が順調に行われれば対象の拡大を希望する声が上がっている。川崎汽船の種谷氏は海賊被害が増え始めたとして西アフリカのギニア湾も対象に含めるように求め、商船三井の芦田会長は武装が認められる船種をLNG船や客船などにも広げるよう要望している。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MX0CEW6S972N01.html
