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朝日新聞
世界から発注が次々と。予約だけで2年待ち。
船大工の木製自転車 1台200万円(2,912万ウォン)

駅前広場に立つと木の香りが漂う、東京都江東区の新木場駅前。近くに作業場を持つ佐野末四郎さん(51)は江戸時代の和船造りから始まる造船所の8代目の三男。14歳で最初の自分の船を造り、その後18歳で完成させた外洋木造船は米国の専門誌で「SANO MAGIC」と称賛された。世界最高レベルのオランダの王立造船所へヨット造りの武者修行に出かけ、帰国後は木造船作りのかたわら、後継者を育てる教室も開催。そして今、新たに挑戦した木製自転車が、国内外を驚かす。佐野さんの大切なものとは。
佐野 きっかけは、船造りで磨いた技術を自転車で形にすれば、多くの方の目に触れることが出来るし、木で最先端のカーボンファイバーをしのぐ軽くて速い自転車が作れるのではないかと思って。結果、ヨーロッパで認めてもらえた事は本当にうれしいことでした。
――重量は? 木の種類は決まっていますか。
1号車は9キロあまり。最新では7.2キロです。木はマホガニー。他の木だと狂っちゃう。特に雨が降った後はダメ。水を吸って車輪がゆがんでしまう。
――1台を作るのにかかる期間は?
3か月です。年3台しか作れません。
――佐野さんの自転車の特徴は?
僕は軟らかいフレームのほうが速いと思っているけど、ロードバイクのことを知らないのに何を言っているのだといわれました。最近のロードバイクはいかに人間の力を無駄なく伝えるかというために高剛性な設計になっています。木ではカーボンのようなカチンカチンのものはつくれない。でも跳び箱は、踏み板をけってその反発で跳ぶでしょ。道具に力を与え、それ以上の反発を返してもらえればいいわけです。そうでなければ、木の自転車はつくれない。木がアシストしてくれる、柔らく速い自転車をつくろうと。実際やってみたら速いです。1号車を作ってみると、思った通り、上り坂で全然違う。平地でも速くできたのが2号車です。フレームの中を空洞にして軽くした3号車から6号車が一応の完成型。フレームがもう少し軟らかいのがレース対応の7号車です。
――元々船造りがご専門ですね?
02年に木製ランチボートをドイツの展示会に出した時、みんな驚いたのです。カーボンファイバーより軽いじゃないかって。その後、自転車でもできないかと。
――船と自転車の作り方の違いは?
基本は同じです。ただ、自転車は船の技術をものすごく凝縮して精度をあげたものです。船なら曲率が大きいため板の厚さが3mmでも曲がりますが、自転車では、曲率が小さいので0.8ミリまで薄くしなければ曲がりません。木を曲げて(ハンドルと前輪をつなぐ部品の)フロントフォークを作ったのは私だけではないか?と言われています。
――オランダでは大型ヨットの内装製作に携わりましたよね。職人として共通する部分はありますか。
私がいたオランダの造船所は、でかいヨットを作っていました。それぞれが分担するようになっています。図面通りつくるので個性が出ないけど、若者が裏に名前彫るんですよ。これはオレが作ったって。「でも、へましたら分かるぞ」というと「そう、でも大丈夫」とうれしそうにいう。誇りがある。
職人は物をつくるものです。祖父が昔言っていましたが、船大工は船をつくればいい、金勘定はあとの話だと。すごく大切なことです。昔は金が基準ではなかった。「そんなものを作ったら家の恥になる」と誇りを持っていたから苦しくても続いたのです。だからどんな苦労も耐えられた。
私が木の自転車を作り、200万円で売れたって採算はとれません。年間3台しか作れないのだから。だけど、日本人が作ったことが大事なのです。日本人の誇りをもたなくては。