米国の元国務省高官が中国の日本非難を一蹴
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JB Press 2014.04.09

中国はいわゆる歴史問題を日本抑えつけのために利用しているだけで、正しい歴史を語る資格はない――。このような分析が米国政府元高官によって明らかにされた。
このところ政府全体を挙げて日本へ歴史問題非難を浴びせる中国の真の動機は、実は歴史の真実の探求でも正確性の追求でもなく、計算に満ちた対日戦略だというのである。日本側としても銘記すべき認識だろう。
中国による歴史認識をめぐる日本攻撃がますますエスカレートしてきた。安倍晋三首相の靖国神社参拝では、多数の中国政府代表が「日本は軍国主義を復活させ、戦後体制を転覆しようとしている」と糾弾した。ドイツを訪問した習近平国家主席は、「日本軍は70年前、南京に侵略し、30万人以上もの中国人を殺すという残虐的な犯罪を働いた」と日本を非難した。
習主席は「日本の侵略戦争で中国人3500万人が死傷した」という誇大な「歴史」をも語った。慰安婦問題でも中国は「日本軍の性的奴隷20万人」という非難を絶やしていない。いずれも、日本は歴史の真実を認めず、また過去の歴史上の悪行を反省も謝罪もしていないという糾弾が背後にある。
中国側の、こうした「歴史」を持ち出しての日本攻撃に日本はどう対応すべきか。米国側では最近はオバマ政権が歴史問題に関して中国や韓国の主張に奇妙な理解や同情を示すようになった。その分、日本への態度が険しくなった。安倍首相の靖国参拝に対して「失望」を表明したことがその典型例である。
日本の歴史問題での米国の対応は重要である。中国や韓国が歴史を使って、日本を叩く言動を官民で実行しても、日本側への実害には一定の限度があると言えよう。日本国民の大多数も、中韓両国からの糾弾には慣れっこになった観がある。
だが米国の反応となると、また別となる。なにしろ日本が国家の安全保障を頼っている同盟相手である。それに、いまの米国がオバマ政権の内向き志向で国際的影響力を衰退させたとはいえ、まだまだ世界唯一のスーパーパワーなのだ。その米国がいわゆる歴史問題でもし完全に中国や韓国の味方となり、日本への非難を強めてくるとなると、肝心の同盟関係にも悪影響を与えかねない。そうした懸念はごく自然だろう。
さらに、日本側でも朝日新聞のような「反安倍政権」「親中韓」の立場を取る一部メディアは、最近の米国での日本がらみの歴史関連案件の状況をいかにも日本非難に満ち満ちているかのように報じている。こと歴史問題に関しては、米国は安倍政権や日本全体をまったく支持していないかのような構図が描かれているのだ。
「オバマ政権の『失望』表明は間違い」
しかし、本コラムでも何度も伝えてきた通り、米国の実態は決して一枚岩ではない。前回の、アーミテージ元国務副長官の安倍首相の靖国参拝を問題視しないという発言も、それを裏付けるものだった。
今回、紹介するのは、もっと鮮明な実例だと言える。その発信者は中国の軍事動向に詳しい専門家、ランディ・シュライバー氏である。
シュライバー氏は民主、共和両党の政権でアジア関連の要職に就いてきた。1994年には当時の民主党クリントン政権下の国防総省にアジア安全保障の専門官として入り、4年ほども中国の人民解放軍への対応を担当した。やがて国防総省の中国部長のポストに就き、98年まで務めた。
2001年に発足した共和党ブッシュ前政権では、アジア太平洋問題担当の国務次官補代理として日本や中国、朝鮮半島を担当した。現在は「プロジェクト49研究所」というアジア安全保障専門の調査機関の所長である。
シュライバー氏は、オバマ政権の対日姿勢を厳しく批判する。オバマ政権が安倍首相の靖国参拝に「失望」を表明したことも間違いだというのである。
「オバマ大統領は(4月下旬の訪日での日米首脳会談などでも)靖国参拝などについて安倍首相を公式の場で咎めるようなことはもう避けるべきだ。この種の歴史問題関連の案件はあくまで非公式の議論に留めるべきだと思う。親密な仲の同盟国や友好国同士は、相手国の首脳を公の場で非難など決してすべきではない。その点、ケリー国務長官、ヘーゲル国防長官が東京の代替墓所(千鳥ヶ淵戦没者墓苑)を訪れたのも、“小賢しい”行動だ。日本側には追悼の方法を自分たちで決める能力が完全に備わっている」
歴史を隠蔽しているのは中国
シュライバー氏がこうしてオバマ政権の対日姿勢への批判を展開したのは、ワシントンの大手研究機関「ヘリテージ財団」が3月後半に開いたシンポジウムの場においてだった。テーマはオバマ大統領のアジア訪問についてである。シュライバー氏はその基調報告者として登壇し、オバマ大統領の訪日について語る中で、いわゆる歴史問題には危険な「罠(トラップ)」があると警告した。
「多くの人たちが歴史問題と呼ぶ件には真の罠が潜んでいることを明確に語っておきたい。日本の指導者たちが過去の歴史をどう語るか、その内容が外部の懸念を生むことは確かだろう。だが同時にこの問題は非常に複雑であり、私たちが知っておかねばならない文脈があることを強調したい。それは中国が歴史問題なるテーマを持ち出してくるとき、それは歴史の真実や事実とは関係がない場合が多いということだ」
これまた重大な指摘だと言える。
シュライバー氏はさらにこう語った。
「それは一種の地雷だとも言える。中国が歴史を語るとき、それは実際には過去についてではなく、現在、そして未来も、日本を抑えつけ、日米同盟に緊迫を作り出そうという動機からなのだ。中国は日本封じこめ、日米離反、そしてさらに国内向けの目的に歴史を利用しているのだ」
だから中国の歴史問題提起を言葉通りに受け取って相手にしていると、地雷を踏むような危険に遭遇する、というのである。
シュライバー氏は中国に絞ってこんな見解も述べた。
「中国は歴史上の真実や正確性をきちんと保管していくという国家ではない。中国の歴史博物館を見れば、よく分かる。歴史の展示は不正確そのもの、かつ不快を極める。この点を米国側も十二分に理解しなければならない」
中国では確かに文化大革命も天安門事件も、その歴史は隠されたままである。文化大革命では毛沢東主席の失政で膨大な規模の人的な損失や政治や経済への被害が出たことの歴史はいまだに公表されていない。1989年6月の天安門広場での民主活動家たちの大量殺戮も、中国内部ではその歴史は闇に隠されたままである。そんな国に歴史を語り、他国に説教までする権利も資格もまったくない、ということなのだ。
シュライバー氏は中国の歴史に対するそんな欠陥体質を提起しながら、中国が日本に向かって投げつけてくる「歴史問題での非難」は、文字通りに受け止めることは危険だと警告しているのだった。米国側にもこうした見解を堂々と表明する識者が存在することを、日本もきちんと記録しておくべきであろう。