あるポスターの存在が、ネットを中心に話題になったのは4月末のことだった。「京都のあっちこっちにあったポスター」などの紹介文でツイッターに写真が掲載されると、「春頃から京都で貼られまくっているポスター」として広まり、思わぬ騒動に発展しているのだ。
瞳を閉じてうっとりとした笑顔を浮かべる美女の頬には日の丸を連想させる赤くて丸いマークが描かれ、背景には日本国旗が広がる。大きな文字で「私 日本人でよかった。」というキャッチコピーがあり、下部には日の丸とともに「誇りを胸に日の丸を掲げよう」との一文がある。

「日本人でよかった」ポスターのモデルは、“日本人じゃなかった”のだ。
◆「国籍は知らなかった」
ポスターを制作したとされる神社本庁はこう答えた。
「私たちは祝日の意義と休日の国旗掲揚を啓発するために、何年かに一度ポスターを作っています。当該ポスターも神社本庁が作成して各神社に6万枚配布したものです。
東日本大震災が発生し、日本人の秩序正しい行動が世界中で称賛されました。そうした日本人の礼儀正しさを応援するために、『私 日本人でよかった。』というコピーになりました」(神社本庁教化広報センター)
『日本会議の正体』の著者でジャーナリストの青木理氏は、ポスターに見られる神社本庁の姿勢を批判する。
「あからさまな日本礼賛のようなキャンペーンは、安倍政権が進める歴史修正、復古主義的な空気の中、政権のコアな支持層である日本会議のキャンペーンなどと歩調を合わせているのでしょう」
青木氏は、「私 日本人でよかった。」というコピーについてもこう語る。
「日本には様々な国籍の人が暮らしています。このコピーはそうした人びとへの排除意識を感じさせ、差別とも受け止められかねない。しかもモデルが中国人だったなんて、まったくレベルの低いブラックジョークのようなものです」
「6年前のものですから」
もっとも、なぜこのポスターが今話題になったのかについて、疑問が残る。というのも、このポスターが作成、配布されたのは6年も前のことだった。前出の神社本庁はこう説明している。
「平成23年に作ったものです。掲示はそれぞれの神社にお任せしていますが、このポスターは6年前のものですから、すでに使い切ったと考えています」(前出・教化広報センター)
神社本庁で抱えている“在庫”もないという。問い合わせの多さに困惑している様子だった。
もはやレアなポスターにもかかわらず、現在進行形であるかのような大騒動になったことについて、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏は、「一部の左翼的な人たちが騒いだから」と呆れるのだ。
「実は京都でも、今はそれほど貼られていないとも聞く。日本では日本人であることを誇ると『レイシスト(差別主義者)だ』と騒ぐ人がネットにはいますが、この騒動もその一環にすぎないのではないでしょうか。このポスターを『打倒安倍政権』の道具としてネットで問題にする人たちが、政治的な論調の仕掛人になってしまう状況はまずいと思います」(中川氏)
6年前のポスターをめぐる、どこまでもおかしな大騒動である。

一番左が青木理