記事入力 : 2017/08/15 09:17
【社説】企業に賃上げを迫り海外移転は阻む韓国政府
韓国産業通商資源部(省に相当)の白雲揆(ペク・ウンギュ)長官は、繊維業界の代表と会い、「国内工場を閉鎖して海外に工場を移転することを自制してもらいたい」と要請した。
経営難と政府による急激な最低賃金引き上げにより、100年以上の歴史を持つ京紡、創業80年の全紡が韓国国内の工場閉鎖と海外移転を発表したことを受けた要請だ。
席上、繊維労組の委員長ですら、最低賃金引き上げの衝撃緩和策を提言したとされる。
小さな雑貨店を経営してみただけで、生産性と売り上げの伸びを上回る賃上げは絶対に持続不可能だということが分かる。しかし、最低賃金引き上げに際し、政府は産業界の事情を一度も聞こうとはしなかった。「積弊」と決めつけ、黙らせたのだ。韓国の繊維産業は昨年、138億ドルを輸出し、世界9位の規模だ。そんな繊維業界にとどめを刺し、工場稼働をストップさせるようとしているのは、海外のライバル企業ではなく韓国政府だ。
韓国の製造業生産額の13%、雇用の12%を占める自動車産業はさらに深刻だ。2011年に日本では「現代自動車が成功した秘訣(ひけつ)をしっかり検討すべきだ」との声が上がった。わずか6年で状況は変わった。日本のトヨタは世界首位の奪還に期待を膨らませているが、現代自労組は6年連続で賃上げストライキを行うという。韓国車の世界市場での存在感は急速に揺らいでいる。そこに通常賃金算定対象の拡大という事態が押し寄せれば、共倒れしかねにといっても決して誇張ではない。このため、韓国自動車産業協会は「このままでは海外に出ていくしかない」とする声明を出した。政府がやったことと言えば、同協会に圧力をかけ、声明を撤回させたことだけだ。
繊維や自動車だけでなく、半導体などごく一部の品目を除き、韓国経済全体がそんな状況だ。それでも来年に最低賃金を16.4%も引き上げることを決めてしまった。それに伴う対策が何かあるわけでもない。国民の税金3兆ウォンで民間企業の賃金を補填(ほてん)するという奇想天外な対策が示されただけだ。その一方で、このままではやっていけないという企業に「海外移転するな」と圧力をかけている。
17日で文在寅(ムン・ジェイン)政権発足から100日を迎える。脱原発など韓国経済全体に大きな影響を与える政策で論議が絶えなかった。経済政策はコインの裏表のように利害関係が絡み合っている。一方を「善」、もう一方を「悪」と位置づけ、一方だけに偏った政策を取れば、必ず副作用が生じる。政府は今後、産業界の声に耳を傾け、経済政策のスピードを調整していかなければならない。