北朝鮮問題、長期化の背景は…韓国を狙う核・ミサイル、開発資金は韓国から
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韓国の文在寅大統領(左)は、平昌五輪への参加について北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長に対話を呼びかけるが…(AP)
日本上空を通過するミサイルの発射など、度し難い挑発を北朝鮮はなぜ続けるのか-。アジア近代史などが専門の李相哲・龍谷大学教授は、北朝鮮の本質は「3つの要素」に分類できると指摘する。中国という社会主義国で生まれ育ったからこそ深く理解できる金ファミリー政権の「かたち」を8月23日に大阪市内で行われた講演会(主催・ウェーブ産経)から読み解く。(発言はすべて23日時点)
▼(3)将軍様の誕生日も…嘘だらけ、逃げ癖、手段を選ばず…から続く
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■金正恩政権…いずれ決着、この際に問題となるのが「韓国」
しかし北朝鮮には変化が生じています。昔の北朝鮮は全てを国が与えていました。食べ物、洋服の生地など配給券を配っていた。小学生は鉛筆からかばんまで国が与える。新学期が始まる際は子供を集め「偉大な将軍様が皆さんに文具を与えるのです」というような儀式を行い、子供は皆、涙ぐんで受け取る。そうして忠誠心を植え付けていたのですが、これが最近できなくなった。
1994年に金日成(キム・イルソン)が死去し、経済がどんどん悪化したことで、地方から配給が少しずつなくなっていった。今は一部の特権階級を除いてこの制度は崩壊してしまった。その代わりに生まれたのがチャンマダンという野外市場です。
その市場で、お金も物もない人は何をするかというと、北朝鮮では上下水道が完備されていないので、川に行って水をくみ、市場で金持ちに売ってその日を延命する。チャンマダンがあるため国民はかろうじて飢え死にしていない。現在は衛星写真で確認した場所だけで、北朝鮮全土にだいたい700カ所くらいあります。
経済学者の統計によると、北朝鮮は経済の8割方をチャンマダンに依存していると。そうすると、これまで金日成や金正日(キム・ジョンイル)のために、つまり一人のために頑張れば何でもあるし、国も問題ないんだと思っていた人たちが、「市場にいったらもっといいことがある」と思うようになり、お金が全てだと思うようになる。
ただ金正恩(キム・ジョンウン)も若いですし、周辺に若いスタッフもいるので、やはり改革の試みは行っている。従来、工場などの生産物は全部国が買い取って分配していたが、金正恩政権では30%は国に納め、残りは自分たちで売りなさいと、そういうことをやっています。
しかし金正恩政権のジレンマというのは、改革はしても開放はできないという点にある。
開放なしに北朝鮮は立て直せない。電気がまずない。上下水道もそうですし、生活の基盤施設がほぼ壊滅状態にある。資本や技術を韓国から取り入れなければならないが、それでは情報が入ってくる。金一族の一人のためにやってきた北朝鮮の政治体制が良くないとわかってしまう。
最近特徴的なのは、金正恩の統治体制というのは国民が勝手に自給自足をしているため、上層部は集中してミサイルと核の開発に注力しているということだ。
■制裁が“金正恩のカネ”直撃、困ってる北朝鮮
国際社会もそれがわかってきたため、金正恩に入るおカネに焦点を合わせて制裁を始めた。
私は以前から中国を頻繁に訪ね、北朝鮮と貿易している業者たちとよく話をします。半年前までは、北朝鮮の貿易関係者たちは全く困らないんだと言っていると聞きました。北の貿易業者が中国の銀行で口座を作るのは非常に簡単で、数年前はパスポートを持っていけばどこの銀行でも口座を作れたんですね。
ですから北朝鮮は稼いだカネは全部中国にプールして、その口座(のカネ)から中国で必要なものを買って北朝鮮に運ぶ。北朝鮮の銀行口座が制裁で取引できなくなっても問題はなかった。
それが今年の6月から金融実名制となり、世界的に誰のお金でどれだけのお金があるか全部見られるようになった。北朝鮮はいま、お金を全く動かせなくなっています。
3週間ほど前に同じ貿易関係者に話を聞くと、北朝鮮は本当に困っているといいます。「希望が見えない、どうすればいいんだ」と。これが政権内部でじわじわと広がっているわけです。
私は国際社会の制裁を続けていけば、金正恩政権は間違いなくどんどん悪くなって、決着が付くと思います。
ただ、ここで問題になるのが韓国です。北朝鮮問題がここまで長引いている背景には韓国の問題があるのです。韓国が毅然(きぜん)とした態度で北朝鮮問題を解決する強い意志を持っていれば、とっくに解決していた。
韓国の保守政権も左派政権も含めて、韓国の政権というのは、かつての朴正煕(パク・チョンヒ)大統領時代と違い、5年間の政権の安全を考えてきた。北朝鮮を韓国に編入させるいう方針で北朝鮮問題に取りかかるのではなく、分断したままの朝鮮半島を管理するという発想でやってきた。問題が起こらなければいい、ということです。
1992年の金泳三(キム・ヨンサム)大統領のころからほぼ20年間、金大中(キム・デジュン)を通して、盧武鉉(ノ・ムヒョン)まで、韓国は北朝鮮をなだめるために、約8兆ウォン(約8千億円)を支援しています。北朝鮮が核兵器とミサイルを開発するには巨額の資金が必要だが、その資金は韓国から渡っているんですね。
本当に皮肉な話ですが、韓国を狙っている核兵器とミサイルは、韓国が助けて作ったと言っても過言ではない。 =(5)に続く
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【プロフィル】李相哲(り・そうてつ) 中国黒竜江省生まれ。中国で新聞記者を経て1987年に来日。上智大学大学院博士課程修了(新聞学博士)。主な著書に産経新聞に「秘録金正日」として連載した「金正日秘録 なぜ正恩体制は崩壊しないのか」(産経新聞出版)、「朴槿恵の挑戦」(中央公論新社)。