中学時代はオール5。偏差値70超の二刀流、大阪桐蔭・根尾。連続V投手の偉業遂げた背景
第90回記念選抜高校野球大会は、大阪桐蔭の史上3校目となる春連覇で幕を閉じた。決勝で完投した根尾昂は、史上初の2年連続センバツ優勝投手となった。プロ注目の“二刀流”として成長した背景にはある経歴とは。
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大阪桐蔭・根尾。プロ注目の二刀流だ。(2017年5月撮影)【写真:氏原英明】
■野球以外で培われた体幹の強さ
歓喜の輪には最後に加わった。
春連覇を果たした大阪桐蔭、根尾昂が史上初の2年連続センバツ優勝投手に輝いた。
「後ろにエースの柿木がいるので、最初から全力でいきました」
自身への達成感より、なによりもまずチームメイトに気を掛ける。立場をわきまえるような言葉の選び方はこの男の持ち味だ。
背番号「6」が示すように本職は遊撃手。打者としては広角に力強い打球を打ち返し、守備では軽やかなステップと体幹を生かした身体の使い方でゴロをさばいていく。マウンドでは決勝の舞台で見せたように140キロのストレートを見せ球に、変化球で打者を打ち取っていくのだ。
根尾のプレーやインタビューから感じるのは、彼が従来の高校球児らしからぬ素養を持っているということだ。
まず目を引くのが体幹の強さ。彼が投手として、打者として、内野手として、すべてのプレーに生かすことができている。
「身体の軸が一切ぶれないんですよね。強いといったらいいのか、体幹を上手く使えている」と、西谷浩一監督は語る。
この体幹の強さは、野球以外の動きの中で鍛えられたものだ。根尾は小学3年で野球を始める以前から、競技スキーに取り組んでいた。冬の舞台は雪上。中学時代にはアルペンスキーの男子回転で全国大会の頂点に立ち、世界大会に出場しているほどだ。
スキーは体幹の強さが求められる。根尾によれば、雪上で滑っている場合、頭を軸とした体幹がぶれてしまうとバランスが崩れ、転倒してしまう。だから競技中は常に下半身を動かし、身体がぶれないようにすることが求められる。練習もおのずと、体幹を意識したトレーニングになるという。
■幼少期から培った運動神経が生むプレースタイル
根尾の野球のプレーを見ていてもわかるが、どのようなプレーでも頭がぶれることがない。身長177センチ、体重は77キロという決して大きな体でなくても、ストレートの球速が常時140キロ台を計測し、力強い打球を飛ばせるのはそのためだ。体幹の力を生かした身体の使い方のうまさが彼の持ち味である。
有友茂史部長は言う。
「ピッチャーの時のフィールディングやベースカバーはめちゃくちゃ速いんですよ。体勢が崩れていないというのもあるんですけど、体幹がしっかりしているから、次への動作が速い。バッティングでも、外国人みたいでしょう。なんで、あの打ち方で打てるのかと思うんですけど、これも体幹やと思います」
競技スキーの経験が生きていると簡単に書いたが、これは今後の育成を考える上では大きなヒントになるだろう。
スポーツの世界では、4~12歳の間、いわゆる“ゴールデンエイジ”に運動神経が発達すると言われている。プレゴールデンエイジに始まってポストゴールデンエイジと言われる年代までに様々な動きをすることで、運動能力が高められるのだ。
昨今はスポーツの習い事が進み、幼少期から一つの競技に専念するという環境が増えつつあるが、一つの動きを身につけるだけでは、神経系の発達には繋がらない。そのため、ゴールデンエイジから運動神経を刺激する必要がある。
マウンドでのピッチング、打席でも、守っていても、頭がぶれないのは、幼少期に体得した運動神経で、彼の一貫したプレースタイルがあるからだ。
■根尾に感じる高い知的好奇心
そして、次に根尾が従来の高校球児らしくないのは、頭脳明晰であるところだ。高校生にして自己分析がしっかりとできている。
実家が診療所を営み、両親はともに医師。その影響からか彼自身も幼少期から勉学に励み、中学時代の成績はオール「5」。偏差値70超の秀才なのだ。いまも就寝前の30分やバス移動の時間などで勉強や読書を忘れない。筆者が以前に本を贈った際、プレー中とは異なる満面の笑みを浮かべ、彼の「知的好奇心」の高さを感じた。
根尾は勉強への取り組みについてこう話している。
「特に、オール5を目指してきたというわけではないんです。どの教科でも手を抜きたくないのというのが僕の中にあったので、それがいい結果に繋がったのかもしれません。先生方というのは、授業で自身がしゃべりたいことを言っているのではなく、僕たちのことを思って、準備をして話してくださっています。僕たちが知らないことを教えてくださっているので、それをしっかり聞くということが大事だと思っています」
大阪桐蔭に入学してからは勉強に掛ける時間は少なくなった。だからこそ短時間で高い質の勉強しようとすることで集中力が高まり、それが勉強にも野球にも生きたそうだ。
「1日に30分くらい集中して勉強するのと同じように、練習に励むので時間が速く過ぎると感じるようになりました。集中ができているのかな。僕にとって知らなかったことが知ることができる。野球ではできなかったことができていくようになる。その瞬間が嬉しいです。得意なことは勉強の教科にしても、野球にしても伸ばす努力をします。そして一方、分からないことや(野球で)できないことに直面したときは、理解していく努力をして(苦手を)消していこうと思っています」
スポーツをマルチに経験していくことで蓄えられた身体能力。そして、勉強にもしっかり取り組み、そこで得たことをさらに野球へとつなげてきたことが、彼の今を形成している。
誰もが成し得なかった2年連続センバツ優勝投手の偉業は、特質な取り組みの成果であるのだ。