中国製ワクチンが東南アジアでも選ばれない理由 親密国カンボジア首相さえ英社製
6/18(金) 11:30 aera
「おや?」と思って立ち止まる。そしてはじまる旅の迷路――。バックパッカーの神様とも呼ばれる旅行作家下川裕治氏が、世界を歩き、食べ、見て、乗って悩む謎解き連載「旅をせんとや生まれけむ」。
今回は、東南アジア各国のワクチン接種の事情について。
「3800バーツか……。それも10月」 6月初旬、タイに住む日本人のSさん(55)のスマホに、バンコクにある外国人向けの私立病院から連絡が届いた。
日本人向けのワクチン接種情報だった。
すぐに接種できるのは、イギリスのアステラゼネカと中国のシノバックのワクチンで無料だった。
しかしモデルナ、ファイザーとなると……。示されたのは、モデルナのワクチン、2回接種分の値段と接種時期だった。
3800バーツは、日本円で約1万4000円。日本のラーメンにあたるクイッティオというそばが1杯200 円前後という物価を考えれば、かなりの高額になる。加えて4カ月も待たなくてはならない。
「タイで受けられるワクチンの人気は、モデルナ、ファイザー、アストラゼネカ、シノバックの順。
これはタイ人も日本人も同じ評価。皆、アストラゼネカとシノバックは避けたいと思う。効力と副反応を考えるとね。
モデルナが希望なんですが……」 タイ以外の東南アジアの国々でもワクチン接種が進んでいる。欧米と中国のワクチンが入っているが、どのメーカーのワクチンを打つか……人々の心は千々に揺れる。効力と副反応が気になるのだ。
カンボジアと中国の関係は親密だ。カンボジアの公共事業の多くは中国の資金に支えられている。
カンボジアで働く中国人も多く、街には中国語の看板が連なる。「カンボジアは中国の属国」という人すらいる。この関係をつくってきたのが、フン・セン首相だ。
首相は、当然、中国製ワクチンを打つと思われていた。
「アストラゼネカだったんです。60歳以上は中国製ワクチンを打てないためなんですが、自分が打ちたくないからつくったルールという噂。皆、中国製は危ないんじゃない?って勘ぐりはじめてしまって……。国民や私たち外国人は中国製しか選択肢はない。どうしようか迷ってます」
プノンペンに住む日本人駐在員は胸のうちを語る。
中国製ワクチンをめぐっては、国レベルでも不協和音が届く。ベトナムはアセアン諸国のなかで唯一、中国製ワクチンを受け入れなかった。
「中国製は粗悪というかつてのイメージが強いからだといわれます」とホーチミンシティ在住の日本人Uさん。
しかし感染者が少なかったベトナムも、ここにきて急増。政府も中国製ワクチンを承認した。
フィリピンは承認申請に不備があったという理由で、寄贈された中国製ワクチンを引きとるように中国政府に伝えている。
台湾は政治的な対立もあり、中国製ワクチン提供を拒否。アメリカや日本からワクチンが提供されつつある。
バンコクのSさんは悩んだ末、無料のワクチンを選んだ。
「値段というより、早く打ちたい。訊いたところ、中国のシノバックらしい。モデルナやファイザーを平気で接種できる日本がうらやましいですよ」