バイデン氏、日豪印大使に盟友 対中政策で緊密連携
対立前線・中韓は外交官、インド太平洋に戦略配置
2022年2月3日 9:48 (2022年2月3日 10:56更新) [有料会員限定]
バイデン米大統領は日本、オーストラリア、インドの米国大使に自らに近い人物を相次ぎ起用した。インド太平洋地域で中国抑止へ協力する国と緊密に連携できる陣容をそろえた。対立する中国や北朝鮮と向き合う最前線になる中国、韓国の大使には職業外交官を据える。
新たに駐日米大使に着任したラーム・エマニュエル氏はクリントン政権の政策顧問や下院議員を経て、バイデン氏が副大統領を8年務めたオバマ政権で大統領首席補佐官を務めた。日本側はバイデン氏を含む政権中枢とのパイプを通じ、日本政府の意向を迅速に伝える窓口役を期待する。
エマニュエル氏は1日、外務省で林芳正外相と面会した際に北朝鮮のミサイル発射やウクライナ情勢に触れて「日米が直面する課題にしっかり取り組む」と話した。中国を念頭にルールに基づく民主主義の秩序が脅かされていると指摘した。
林氏は「日米同盟をさらに強固なものにするため率直に議論できる関係を築きたい」と伝えた。両氏は「自由で開かれたインド太平洋」実現に協力を申し合わせた。
これまでの駐日米大使は①政府・議会の大物②大統領の盟友・側近③知日派の学者――に大別できる。知日派といえないエマニュエル氏は他の要素を併せ持つ。軍事・経済両面で台頭する中国をにらみ、同盟国である日本とインド太平洋で民主主義国家の結びつきを広げる責務を担う。
2000年代前半までは副大統領や下院議長などを経験した大物が就く例が目立った。最近は大統領との個人的な関係を重視する傾向にある。
エマニュエル氏の前任のハガティ上院議員はトランプ前大統領の政権移行チームで政治任用の人事担当の責任者だった。
米アメリカン・エンタープライズ研究所のザック・クーパー氏は「関係が良好な日豪印で大使が扱う懸案は比較的少なく、各国は政権に影響力を持つ人物を望むケースが多い」と話す。
豪印にもバイデン氏とつながりが深い大使を送る。豪州にはオバマ政権で駐日大使を務めたキャロライン・ケネディ氏を指名した。20年大統領選でバイデン氏を支持し、資金面でも支えた。ケネディ元大統領の長女という名門の出身で、なお民主党内に影響力を維持する。
豪州は日米印と構成する「Quad(クアッド)」に加え、米英との安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」の一角。いずれも中国抑止を主眼にバイデン政権が21年に立ち上げた集まりで、豪州の戦略的価値の高さを裏付ける。日米に張るケネディ氏の人脈も使い、円滑に調整する態勢を整える。
インド大使にはロサンゼルス市長で閣僚への起用も取り沙汰されたエリック・ガルセッティ氏を充てる。米メディアによると、大統領選で「個人的に親しい友人」であるバイデン氏の支持を表明し、陣営を取り仕切った幹部の1人とされる。高校時代に日本に留学した経験もある。
中国と韓国の大使にはプロの外交官を配置する。「最大の競争相手」と位置づける中国にニコラス・バーンズ元国務次官を充てた。必ずしも中国の専門家ではないものの、30年近い外交官生活で携わってきた旧ソ連や中東、欧州は時の最重要テーマの1つだった。
バーンズ氏は党派を超えて要職に起用され続けた。民主党のクリントン政権で国務省報道官、共和党のブッシュ政権(第43代)で同省ナンバー3の国務次官などを歴任した。年12月の上院本会議で与野党議員の賛成で承認されたバーンズ氏の人事は超党派で中国に対峙するメッセージになる。
駐韓国大使には対北朝鮮制裁調整官を務めたフィリップ・ゴールドバーグ氏(現コロンビア大使)が内定した。米メディアが報じた。クーパー氏は「当面は朝鮮半島情勢に精通する実務者を求めている表れだろう」とみる。(ワシントン=坂口幸裕)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2954J0Z20C22A1000000/?unlock=1