【コラム】韓国梨泰院惨事、定罪するだけでは悲劇を防ぐことはできない(1)
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2022.11.14 10:44
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韓国梨泰院(イテウォン)ハロウィン惨事で157人の花のように美しい命が消えた。24歳の息子を失った母親は「神さま、どうか私を代わりに連れていってください」と絶叫した。集団的悲劇だが「すべての死は個別的」という冷然な宿命を避けることはできない。
我々韓国人は1995年に532人が犠牲になった三豊(サムプン)デパート崩壊事故を、2014年には304人を失ったセウォル号惨事を経験した。三豊は事業主が4階ショッピングセンターにしようとしたところ5階デパートにして無理やり構造を変更した。もっと金を稼ごうとするためだった。オープン初期から崩壊の前兆はあり、5年後にはすっかり潰れてしまった。
セウォル号は清海鎮(チョ~ンヘジン)海運が日本から購入したのは建造から18年経った中古船舶だった。老朽化した電気配線がショートして調理室と天井の壁が燃え、退役した状態だった。日本人は「船舶大国」韓国のあきれた決定を理解できなかった。このような船に貨物をもっと載せようと「船舶の生命水」と言われるバラスト水を少なくして危うげに水上を漂ったが結局沈没した。お金のために命を捨てたのだ。
そのような中で、普通に歩いていた人々が圧死に遭う惨事まで梨泰院で起きた。三豊とセウォル号のように予想された事故だった。3日前に懇談会を開き、10万人を超える人波の密集を予想した。だが、警察と区庁は何の対策も立てなかった。一体国家はなぜ存在しなくてはならないのか。
政府は法的責任を糾明することだけに注力している。特別捜査本部は職務を遺棄した上層部ラインには触れずに現場実務者6人を被疑者として立件した。龍山(ヨンサン)警察署情報係長は極端な選択をし、一線の警察と消防署員は「なぜ最善を尽くした実務者だけに責任を問うのか」と反発している。事態が尋常ではない。
米国政治哲学者アイリス・ヤング氏は「法的責任だけに集中する場合、誰かは責任から免除される」と述べた。ヤング氏が言う「社会的連結に基づく責任モデル」は誰かを処罰したり非難する「法的責任モデル」とは違う。行為に影響を及ぼした背景条件を調べて構造的不正義(structural injustice)を改善する手法だ。それなら政府だけでなく企業や市民が行動に移してこそ過酷な運命を変えられるはずだ。
【コラム】韓国梨泰院惨事、定罪するだけでは悲劇を防ぐことはできない(2)
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2022.11.14 10:45
1755年ポルトガルの首都リスボンではリヒター8.5~9の強力な地震が発生した。人口25万人のうち2万5000人が命を落とし、建物の85%が倒壊した。数百回の余震が続く間、イエズス会は「人間の堕落と放縦に対する神の審判」と言った。魔女狩りや火刑の強風が吹き始めた。しかしこの国には6年間駐英国大使を過ごしながら合理主義に目を開いたカルヴァーリョ首相がいた。カルヴァーリョ首相は聖職者の祈祷ではなくエンジニアの科学で都市を再建した。
カルヴァーリョ首相は積み重なった死体から腐敗が始まると「神聖冒涜」というイエズス会の反対にもかかわらず、重りをつけて海に投げた。人類初の地震被害全数調査を実施し、地震にも安全な都市を建設した。4階を超える建物は作れないようにし、道路を広げて有事の際に避難しやすくした。貴族・聖職者の既得権と戦って科学と合理の時代を開いた。
哲学者ヴォルテールは欧州を目覚めさせた超大型ベストセラー小説『カンディード』を発表した。「神は義である」というライプニッツの神義論を「神が大きな善を持ってくるために現実世界で悪を許容したという話をどうしたら信じられるのか」と反論した。欧州人はリスボン悲劇を狂信に対抗した世俗主義時代を開く動力に転換した。
三豊、セウォル号でも足りず、ここで梨泰院惨事まで経験すれば、我々も今度こそ変わらなければならない。しかし状況は正反対だ。血まみれの戦利品を取りまとめようと必死に戦っている。一方では「大統領退陣」を要求していて、もう一方では「李在明(イ・ジェミョン)捜査を薄めている」と対抗している。責任を問う定罪の過程は必要だ。しかし、それだけではアポリア(出口がない難関)から抜け出すことはできない。人間の尊厳性を無視して災難に目をつぶる現在の国家システムは正しくない。この巨大な構造的不正義はどう正すのか。勇気ある者は卑怯な沈黙を破って口を開かなければならない。
三豊崩壊事故発生から21年が過ぎた2016年、ソウル市消防災難安全本部が救助活動を行った消防署員40人に対して質問したところ、全員が「大型事故が再び起きる可能性がある」と答えた(『1995年ソウル、三豊』ソウル文化財団)。「セウォル号特別法」は名称に「4・16惨事真相究明および安全社会の建設などに向けた」という長い修飾語がついている。「安全社会の建設」を誓いながら事故原因の糾明のための捜査・監査・調査を9回繰り返したが海上事故はむしろ倍に増えた。そんな中で梨泰院惨事が起きた。果たして誰が真の犯人なのか。
法的責任だけを追及すれば行為者は処罰できるが世の中は変わらない。集団的無責任という構造的不正義に手を入れなければならない。また別の悲劇が近づく前に、人間の尊厳と生命、安全が最優先になる共同体を宣言しなければならない。18世紀リスボンの先覚者はありもしない魔女を探し出して生きたまま燃やすアウト・デ・フェ(火あぶり)を追放した。21世紀の韓国もそろそろ変わらなければならないのではないか。
李夏慶(イ・ハギョン)/主筆・副社長
立派なコラムだけど徒労感だけだ。
今回もまた目の前の敵・ナムを糾弾し、不正義・不道徳のレッテルを貼って上の立場を欲しがるだけで終わるだろうから