
黄海で28日から実施される米韓合同軍事演習を前に、韓国国内では緊迫し
た空気が張りつめている。
李明博(イミョンバク)政権に対し、北朝鮮への弱腰姿勢が砲撃を呼び込んだとの批判があ
る一方で、今の強硬路線を不安視する声も上がっている。北朝鮮から約700砲
の長射程砲が首都ソウルに照準を合わせている事実があるからで、「戦争回
避」を求める声も少なくない。
◆交戦規則見直し◆
「金正日(キムジョンイル)、金正恩(キムジョンウン)父子に必ず報復してやる」
延坪島砲撃で死亡した韓国海兵隊延坪部隊所属の兵士2人の海兵隊葬終了
後、同僚兵士はテレビカメラの前で、怒りを爆発させた。
韓国政府は米国との合同軍事演習の実施に加え、北朝鮮の武力挑発に効果
的に対応するための韓国軍の交戦規則の見直しなどを決めた。盧武鉉(ノムヒョン)政権下
の2004年以降、中断していた南北軍事境界線近くでの風船による金正日政
権批判のビラ散布も延坪島(ヨンピョンド)砲撃のあった23日深夜、再開した。
強硬策は、だが、緊張も増幅させている。北部の京畿道(キョンギド)坡州(パジュ)市の境界線近郊
では、延坪島への砲撃があった23日から、軍部隊の要請により、農作業を中
断。避難施設や防空壕(ごう)の点検が行われた。
北朝鮮の朝鮮人民軍板門店代表部は25日、米軍側への通知文で、「南朝鮮
(韓国)が無分別な軍事的挑発を行えば、我が軍隊はちゅうちょなく、2次、3次
の強力な物理的報復を行う」と警告。北朝鮮は27日夜、朝鮮中央通信の論評
を通じ、韓国の民間人に死傷者が出たことについて「遺憾」を表明したものの、
米原子力空母が米韓合同軍事演習に参加した場合には軍事的攻撃に及ぶ可
能性を示した。
1976年に板門店の南北共同警備区域でポプラを伐採しようとした米兵2人
を北朝鮮兵がおので殺害した「ポプラ事件」では、米軍が空母を近海に派遣。
北朝鮮は、金日成主席名義で「遺憾」を表明し、事態が収拾された。だが、今回
も同様の筋書きをたどる展望はまだない。
◆戦闘拡大を懸念◆
黄海上の偶発的な局地戦がソウルや朝鮮半島全体を巻き込んだ戦闘に発展
することへの懸念も表面化している。李明博大統領はかねて「(ソウルから)わ
ずか50キロの距離から最も好戦的な勢力(北朝鮮)の長射程砲が我々を狙っ
ている」と指摘してきた。
ソウル市では「非常勤務態勢」に入っており、有事の場合、全公務員に一斉呼
び出しをかけるという。
韓国世論は、対北朝鮮強硬策か戦争回避かで真っ二つに割れている。韓国
の民間調査機関モノリサーチの最新の世論調査では、北朝鮮が再度攻撃を仕
掛けてきた場合に政府に求める対応策として、47・3%が「戦争を辞さない速や
かな対応」を選んだのに対し、42・4%が「戦争拡大を避ける防御的対応」を求
めた。民間調査機関リアルメーターの世論調査でも、「戦闘が拡大しても強力な
軍事対応」を求めた回答は44・8%止まりで、49・7%は「拡大回避」や「外交
的、経済的対応」にとどめるべきだとの立場を示した。(ソウル 竹腰雅彦、仲
川高志、門間順平)
(2010年11月28日09時25分 読売新聞)