共産主義者は戦い方が汚い。手練手管が巧妙な路地裏のゴロツキだ。絶対
に、彼らが設けた戦場に出てはならない。ゲリラ戦、奇襲戦、航空テロ、暗殺な
ど非正規戦で応じては勝算はない。規則に則(のっと)った上で戦わねばならな
い。
11月23日、北朝鮮軍が延坪(ヨンピョン)島を無差別砲撃した時は、天と歴
史が与えてくれた絶好機だった。韓国軍の最新鋭戦闘機F15、F16の8機が迅
速に出撃し、延坪島上空で待機。こんなときに備えて訓練を十分重ね、高性能
誘導爆弾やミサイルも載せていた。北方限界線(NLL)を越える必要もなく韓国
上空で発射、敵陣地を火の海にできる武器だった。韓国空軍は北朝鮮空軍と
戦えば常に10対0で打ち負かせる自信を持ってきた。
◆シリアに圧勝したイスラエル
大統領と軍首脳部はしかし、大砲だけで対応した。爆撃命令が下されていれ
ば、F15が壮絶な威力を持つ誘導爆弾で敵の海岸砲台を破壊、旧式のミグ23
をことごとく撃墜し、1982年にF15主力のイスラエル空軍がミグ23主力のシリ
アと対決して、85対1で勝った空軍戦を再現していただろう。
そして、韓米同盟体制が稼働する。韓米連合司令官が作戦統制権を行使す
る。米軍司令官が勝手に権限を行使するのではなく、韓米両国の大統領が合
意した指示を受ける。飛行機にも乗れない金正日氏は、韓米同盟軍に挑むの
は自殺行為と分かっている。
韓国人と韓国軍は燃える敵の海岸砲陣地、撃墜されたミグ23に歓喜しただろ
う。朝鮮戦争で北が南侵して以降、韓国はやられっ放しだった。華麗な大勝は、
韓国人が被害者意識から抜け出して自信を回復、南北関係で主導権を握る歴
史的な転換点となっただろう。
李明博大統領が11月23日に逸した機会はまさにそれだった。軍首脳部も対
応を建議せず、国家指導部は「戦闘を拡大させず、危機管理せよ」との方針を
決めた。気がつけば機会は過ぎていた。だが、まだ残ってはいた。北は砲撃後
も再侵をちらつかせ威嚇射撃を加えたからだ。いつ攻め込まれるともしれない
状況で、先に攻撃された韓国側が戦闘機を出撃させ脅威要因を除去するのは
自衛権発動だ。大統領は、それもしなかった。
◆やられっ放し脱する転換点
29日の対国民談話の際も機会はあった。「追加挑発への断固たる対応」を言
う前に、金正日氏と北に最後通告を出さねばならなかった。「12月12日までに
戦争犯罪行為について謝罪し責任者を問責、被害を補償し海岸砲を撤去しな
ければ、われわれは自衛権を行使する」と球を投げるのだ。そして全軍に非常
命令をかけ、空軍爆撃訓練を強化、韓米同盟を固める。
大統領と軍首脳部は「われわれは全面戦争を望まない。しかし、敵が望むな
ら応じるのみ。これは統一戦争となろう」というメッセージを出し続ける。「敵が最
後通告に応じなければ、わが屈強な空軍は延坪島挑発の元凶の海岸砲を殲滅
(せんめつ)する。これに対抗すれば戦闘拡大も辞さず。北の核施設を爆撃す
る」との情報もメディアに流す。大規模な米空母戦闘群が韓国海域に投入され
る。中国が仲介を申し出ても韓国は応じない。6カ国協議が、中朝が共謀し国
際社会を欺くイカサマ賭博場であることを李政権も分かってきている。
このように圧迫すれば、金正日氏は苦悶(くもん)に陥る。全面戦争を決心しな
い限り、韓国政府の要求をのむしかないという現実に目覚めよう。奇襲戦やテ
ロが通じる戦場ではないからだ。最後通告に応じなくてもいい。いつでも攻撃す
る権利を韓国は持つようになった。
これは主導権であり、賢明に駆使すれば金氏を駆逐できる。主力は大砲では
なく、韓国空軍の最新鋭戦闘機だ。1億ドルものF15を航空ショー用に投入する
のではない。敵の海岸砲と長射程砲に対する応戦用として投入するのだ。
◆核心は韓米同盟による正規戦
筆者の最後通告戦略の核心は、韓米連合の海空軍が前面に出る正規戦の
範囲に馬賊団のような北朝鮮軍を引きずり込むことだ。一部で憂慮される全面
戦は偶発的には起きない。腹立ちまぎれに起こすものでもない。金正日氏が勝
算があるときだけ起こす。そんな勝算の根拠を韓米連合戦力は崩す。
機会は当分続く。李大統領は韓米同盟を背景に金正日氏に最後通告を送り、
彼らを悩ませねばならない。金氏が折れても折れなくてもゲームの主導権はわ
れわれが持つ。主導権があれば攻撃時期と場所、方法を有利に決定できる。
砲撃を機に、北東アジアで新冷戦の気流が形成された。中国が北の核開発を
技術的、政治的、外交的に支援しているのは確実だ。中朝核武装下で韓国が
生存するには韓米同盟だけでは弱い。韓国の保守派団体、国民行動本部は
「国際詐欺場の6カ国協議を捨て、核武装を宣言するのが最高の対応だ」との
意見広告を新聞に出した。
韓国哨戒艦撃沈と延坪島砲撃は韓国人を崖っぷちに追いやった。韓国人が
目覚め、「われわれもイスラエル式に生きねば」と決心すれば、結果は金正日
政権に有利にはならないだろう。(チョ カプチェ)