【緯度経度】ソウル・黒田勝弘
今年の10大ニュース海外編の上位に当地がらみがトップ級で2つも入りそうだ。いずれも北朝鮮関連で延坪島砲撃・哨戒艦撃沈と金正恩(キム・ジョンウン)3代目世襲だ。
米国のブッシュ前政権は北朝鮮を“ならず者”と言ったが、今年も相変わらず国際社会にとって頭の痛いニュースメーカーだった。
ところで最近の延坪島砲撃をめぐっては、日本をはじめ海外ではまるで戦争が起きるかのような報道ぶりだった。
日本のマスコミ各社も東京での“危機感”に現地があおられた(?)感じだった。企業の駐在員たちも、もっぱら本社の方が心配していたという。
「朝鮮半島の危機」はいつもこうなりがちだ。
北朝鮮は宣伝戦というか心理戦にたけていて、武器より“言葉の戦争”がうまい。彼らはマスコミの影響が強い世論主導の西側・民主主義社会の体質(弱点?)をよく知っている。そこで「戦争が起きるぞ!」といってよく脅かす。
危機感と不安感を高め内外で利を得ようというわけだ。
たとえば韓国向けでは「戦争より平和」「対決より対話」ムードをつくり、世論を李明博政権非難と親北・野党支援にもっていく作戦である。
彼らは実際には戦争なんかヤル気はない。いや、やれない。すべて政治的計算の上なのだ。だから“戦争”ではない軍事的挑発はよくやる。
さて危機をめぐる現地と海外での温度差だが、これは仕方ない面がある。
現地では“紛争”以外の日常生活があり、他の情報もたくさんある。しかし海外では“紛争”情報しか関心がないため、それだけでイメージされる。緊張度は海外の方が高くなる。
日本での今年の韓国イメージにはもう一つ「韓国に学べ」論があった。
スポーツ、芸能から経済まで「元気な韓国」が何かと話題だった。「日本に元気がない」ため、日本人への刺激としてことさら強調された面もある。なかには「このままでは韓国に追い越される!」といった声さえ聞かれる。
しかしこれも現地と海外でイメージにどこかズレがある。
「日本企業に“サムスンに学べ”ブーム!」とか「日本列島が韓国アイドル“少女時代”に熱狂!」「昇る太陽の韓国、斜陽の日本!」などといったニュースに韓国人は当然、気分がいい。
しかしバブル期の日本で「ジャパン・アズ・ナンバーワン」といった米国での日本評に対し、生活者をはじめ多くの日本人は「まだまだ…」と思っていたように、多くの韓国人は本音では「まだまだ日本には学ぶべき…」と思っている。
筆者をはじめ韓国で生活する日本人たちも同感だ。「元気な韓国」情報以外に日常の「まだまだ…」情報に多く接しているからだ。
最近、韓国の新聞が米紙ウォールストリート・ジャーナルの記事を紹介していた。
米国に輸出される中国製の最新通信機器アイフォーンの原価分析の結果、日本の部品が34%で圧倒的に高く、次いでドイツ17%、韓国13%、中国3・6%…の順だったという。
米国の対中貿易赤字の実態は日本の対米貿易黒字につながっているという話だが、「元気いっぱい」の貿易経済大国・韓国の輸出品にも同じことが昔からいわれてきた。
韓国では輸出が増えれば増えるほど対日貿易赤字が増えるという話だ。
韓国は米国などほとんどの国で貿易黒字を稼いでいるが、ほぼ唯一、赤字相手が日本。赤字幅は昨年は300億ドルに迫り、今年はさらに350億ドルに迫りそうだという。素材や部品、製造機械の日本への依存度が高いからだ。
「韓国元気で日本は大もうけ」という図式である。「元気な韓国」は日本にとってもいいことなのだ。うらやむことはない。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101225-00000095-san-int