【コラム】記者が注意すべき三つのタブー
新聞記者として働く中で、記者にとって「タブー」があることを知った。「宗教」「地域」、そして中年女性を中心とする「女性(グループ)」の三つだ。これは、観念的にタブーというのではなく、新聞社と記者が長年の経験から悟ったものだ。宗教、地域、女性問題に下手に触れようものなら、新聞の不買運動、場合によっては記者が首になる恐れもある。
時代的背景によるものだが、この三つ以外にも、記事の聖域とでもいうべきタブーは数多く存在した。権威主義の時代に大統領を批判すれば、その記者はもちろん、ともすれば新聞社までが冷遇されかねなかった。軍を刺激すれば国軍保安司令部(現在の国軍機務司令部)に呼ばれ、最終的には「北朝鮮側に付いた」という理由で、国家保安法違反の有無を取り沙汰される状況になった。
タブーは政治権力だけではなかった。本紙は以前、平和民主党(平民党)議員らがローマ法王に謁見した際の出来事を報じ、故・金大中(キム・デジュン)元大統領率いる平民党による不買運動に遭った。本紙と平民党の争いという意味で「朝平事態」とも呼ばれた。また、財閥からの大統領出馬を批判したとして、鄭周永(チョン・ジュヨン)氏(故・現代グループ名誉会長)率いる統一国民党と現代グループの「反朝鮮日報運動」と戦わなければならなかった。
だが、政治権力を持つ集団とメディアの関係は、時代が変わり、韓国社会の政治文化が成熟するにつれ、大きく変化した。今では、政治権力に対する新聞の批判が大きく制約されることはない。しかし、宗教、地域、女性(性差別)問題は依然として記者にとって、できることなら扱わない方が得策といえる話題だ。
カトリック司教会議が4大河川(漢江・洛東江・錦江・栄山江)再生事業の問題に言及したとき、高速鉄道工事の中断を求める「千聖山(慶尚南道梁山)サンショウウオ訴訟」で僧侶が断食したとき、プロテスタントがイスラム債券法に反対したとき、さらには宗教団体内部の対立と反目が高まったときにも、多くの記者はできるだけ批判的な記事を書かない「楽な道」を選んだ。
今や宗教と地域は、強いパワーと集団意識を前面に出した、新たな「権力」に浮上している。本紙は先週末、労使対立や暴力的なデモなどが減った一方、地域の利己主義と政界・宗教界のあつれきが目立っていると報じた。カトリックは4大河川再生事業問題、プロテスタントはイスラム債券法、仏教はテンプルステイ(仏寺での生活体験)予算と仏教差別問題でそれぞれ政府と対立している。一方、慶尚道、全羅道、忠清道などの各地域は、韓国南東部に建設予定の新空港、科学ビジネスベルト、LH本社移転をめぐり、激しいせめぎ合いを繰り広げている。
メディアでは今、宗教界と政界のあつれきに下手に言及すれば、大きな災難に遭いかねないと危ぶむムードが高まっている。あるメディア関係者は「大統領に『下野』をうんぬんし、与党に落選運動を公言するほど強いパワーを持つ教会にとって、メディア1、2社を相手にするのは難しいことではないだろう」と話す。また、地域問題に関して、南東部の新空港や科学ビジネスベルトの進むべき方向性に言及し続ければ、その地域で生き残れないというのも、記者らの懸念材料だ。特に、これらが正しいか間違っているかではなく、選択の問題である以上、今すぐに妥当性や合理性の面から記事を書く必要はないのではないだろうか。さらに今問題になっている事案の大半は、李明博(イ・ミョンバク)政権が作った、あるいは触発した問題だ。それだけに「新権力」の不興を買ってでもどちらかに肩入れすべきなのかという点も、記者がためらう理由となるだろう。
記者にとって、新たなタブーも生まれている。次期大統領を目指す政治家の動きに関する報道だ。特定候補を批判する報道には非常に気を使う。盲目的に称賛する記事でない場合、特定候補を推すインターネットユーザーによる反発や抗議は、時として暴力的で、人格までも否定する。大統領選挙が近づくにつれ、記者らは刃の上で踊っているかのような、ひやひやした気分にさせられる。
このように、社会的な対立、あつれきを増幅させる利己的な集団文化は、対立要素が細分化されるにつれ、力を増しているようだ。それらを統合する中心軸がないところで、より猛威を振るっている。言い換えれば、宗教や地域、その他集団文化の中心に「大人」がいないということだ。韓国社会には今、政治をはじめ社会の各分野で、異なる意見を調整し、統合するリーダーシップがない。宗教も、地域も、ほかの集団も同様だ。
「大人」がいて、異なる見解に対する最小限の礼儀と尊重があれば、筋違いで過激な主張が横行する余地はなくなる。相手に譲歩すれば無気力とののしられ、相手を尊重すれば卑屈だと批判される。そうするうちに「われわれを刺激すればただではおかない」という集団的風潮が高まる。このため、記者のタブーも次第に増えるばかりだ。
金大中(キム・デジュン)顧問
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 親日的な記事を書くこともダメだろw