1968年ソウルの市電は全線廃止されたがソウル歴史博物館によりよみがえった
歩道に隣接して展示されている381号電車。月曜を除く毎日、10時から17時まで無料で
内部を見学できる
写真・文 栗原 景
ソウルの光化門交差点から西へしばらく歩くと、まもなく歩道の脇にレトロな路面電車が現れる。
ソウル歴史博物館が復元・保存している、元ソウル市電381号電車だ。
かつて、ソウル市内には数多くの路面電車が走っていた。しかし、「漢江の奇跡」が始まると、
モータリゼーションの波が押し寄せる。路面電車の運行は難しくなり、1968年11月に全線
が廃止された。
使命を終えた路面電車たちはほとんどが解体され、現在まで保存されているのはたったの2両
しかない。そのうちの1両が、381号電車である。
381号電車は、名古屋の日本車輌株式会社で製造された車両だ。解放をはさんで約38年間、
ソウル市電の一員として働いてきた。市電廃止後は広津区の子供大公園に保存されていたが、
電車に対する市民の関心は薄く、長年荒れるに任せた状態だったという1960年代の市電風景を再現した
「電車と遅刻生」。「しまった!お弁当忘れちゃった!」
という声が聞こえてきそう
2007年、ソウル歴史博物館が車両の所有権を取得した。製造会社や内外の博物館で資料を
収集し、現役当時の姿をできる限り復元。2009年から一般に公開したのである。
電車の内外には「電車と遅刻生」と題する彫刻像が設置されている。車両を復元するだけでなく、
60年代当時の市民風景が再現されているのが面白い。
激動のソウルを走り抜けてきた381号電車。美しく発展したソウルの町を、今も見守り続けている。