
【画像:光ケーブルに産卵管を突き刺すクマゼミ】
西日本を中心に生息するクマゼミが、NTT西日本(大阪市中央区)の光ファイバー通信の家庭用ケーブルを、木の枝と間違えて産卵し断線させる被害が2005年ごろから多発していた問題で、NTTグループが2009年に開発した最新型ケーブルに切替を進めた結果、3年連続で被害が0件だったことがわかった。単純にケーブルの被膜を厚く硬くすればよさそうだが、ケーブルが太く硬くなり過ぎれば敷設工事の障害となる。頭を抱えていたNTTと自然界の攻防は、NTTに軍配があがったが、その裏には猛暑とたたかう研究員たちの苦労があった。
クマゼミは、体長約60-70mmの大型のセミ。毎年7-9月、枯れ枝などに直径約1mmの産卵管を突き刺して卵を産みつけるが、光ファイバー通信の幹線から枝分かれした家庭用ケーブルを、枯れ枝と勘違いして産卵。ケーブルに穴を開け、中の心線を傷つけて通信を遮断させる被害が1999年に初めて確認された。その後、光ファイバー通信の敷設エリアの増加に伴い、ピーク時の2008年には約2000件の被害があった。
NTT西日本では2004年と2006年、クマゼミ対策で改良したケーブルを導入して被害を減らすことに成功したが、被害0件を目指し、今回の3代目ケーブルの開発に着手。敵の生態を分析するため、2008年の夏には、NTTグループの研究員が大阪市内でクマゼミを捕獲。1日約60匹のクマゼミを捕まえ、実際にケーブルに産卵する様子を観察した。
その結果、ケーブルを覆うプラスチック系被膜を、産卵管でも傷つきにくい硬さに改良したうえ、さらに被膜の最薄部の厚さを約0.4mmに保つことで、産卵管がケーブルの心線に達しない最新型のケーブルが完成した。
開発に携わったNTT情報流通基盤総合研究所アクセスサービスシステム研究所(茨城県つくば市)の主幹研究員の高見沢和俊氏(48)は「(被膜を)単純に硬くすれば当然、クマゼミも産卵が不可能になることはわかっていたが、硬くしすぎるとケーブル開通工事の作業効率が落ちるため、そのバランスが難しかった」と苦労を打ち明ける。顕微鏡で0.1mm単位の刺し傷の深さを分析する毎日だったという。
現在、NTT西日本の事業エリアに敷設されている光ファイバーケーブルのうち、既に90%以上がこの最新型に変更済み。2009年以降も、毎年夏にクマゼミの捕獲と観察を続けてきたが、今年の夏も最新型の被害が0件だったことで、NTT側は最新型ケーブルをもって、クマゼミ対策を終了した。
高見沢研究員は「クマゼミの自然な産卵環境を維持するために、酷暑の中、冷房もつけずに実験を続けてきたので、その開発が実を結んだことは大きな喜び」と話している。
(産経新聞)