1.日本の研究者や学生が参考文献を探すときによく使う"CiNii"(CiNii【Scholarly and Academic Information Navigator, pronounced like "sigh-knee"】 is a database service that enables searching of information on academic articles published in academic society journals or university research bulletins, or articles included in the National Diet Library"s Japanese Periodicals Index Database.)を使用することにした。
2.GoogleやYahoo!のように、「鉄道 車両 衝突」と入力して、論文を検索する。すると、検索結果が出る。
3.1件目には「高速車両における耐衝突性能の向上--耐衝突構造のシミュレーションベイスドデザイン (鉄道車両特集号) Improving the crashworthiness of high speed rail vehicles: simulation-based design for a crash resistant structure」が出てくる。これが2010年2月に『川崎重工技報』(Kawasaki Technical Review)の第170号38ページ-41ページに掲載されたものであることは、上部リンク先ページの下の情報からわかる。
残念ながら、CiNiiに本文が無いのだが、念のためにK.T.R Vol.170について検索すると、川崎重工業のウェブサイトで技術解説図の一部を見ることができた。



4.それだけでは納得しない青組もいるであろうから、念のためにCiNiiで本文が読める論文を探すと、3件目に「ヨーロッパ向け鉄道車両の衝突構造の開発(トピックス)」が出てくる。これは、2009年3月に『日本機械学会誌』の第112号1084番目に掲載されたもので、著者が日立製作所の社員であることは、上部リンク先ページの下の情報からわかる。
無料で本文を読むことができるので、この際に紹介する。

1.はじめに
株式会社日立製作所は、イギリス・ロンドンとドーバー海峡トンネルを結ぶ海峡連絡線を走行する高速鉄道車両を受注した。これは、日本の車両メーカーとして、イギリスを含めたヨーロッパにおける始めての高速鉄道車両とある。この車両の開発に当たり課題となったのは、現地規格への適応である。とくに衝突安全性に対しては、ヨーロッパでは事故が起こった場合でも乗員・乗客の保護を考慮して規定されている。そのため、本案件の車両には、車体を積極的に変形させて、衝突時のエネルギーを吸収する、衝撃吸収構造を開発する必要があった。車両制御や信号システムにより、事故を未然に防止する対策を基本としている日本も、衝突安全性に関する配慮が高まりつつある。本稿では、今回開発した衝撃吸収構造について報告する。
2.編成車両の構成
図1に編成車両の構成を示す。編成車両【図1(a)】は、先頭車両【図1(b)】と中間車両【図1(c)】を組み合わせた6両編成が基本構成となる。各車両の端部には衝突時の衝撃を吸収して運転席や客室のダメージを低減させる衝撃吸収構造が配置されている。衝撃吸収構造は、編成車両の両端に位置する先頭部衝撃吸収構造【図1(d)】と各車両の端部に位置する中間部衝撃吸収構造【図1(e)】から構成される。また、各部衝撃吸収構造には、衝突時のエネルギーを吸収する主要部品であるエネルギー吸収材が配置されている。
3.衝撃吸収構造の衝突特性
衝撃吸収構造の開発に当たり、衝突時の特性を予測・評価するために、試験と解析を実施した。図2に実物大の先頭部衝撃吸収構造の試験体をゆっくり潰す、準静的圧潰試験と有限要素解析の結果を示す。図2(a)および(b)に示す衝撃吸収構造の圧潰状態は試験と解析でよく一致しており、エネルギー吸収材を配置した先頭部で潰れ、運転席の生存空間は確保されている。また、図2(c)に示す圧潰量と圧潰荷重に関しても試験と解析で一致している。衝撃吸収構造のエネルギー吸収量は、図2に示すグラフの面積(=∫圧潰荷重×圧潰量)に対応する。よって、圧潰荷重が高く、圧潰量が長ければ、大きなエネルギーを吸収することができる。しかし、圧潰荷重が高すぎると運転席が先に潰れる可能性があり、また、圧潰量を大きくすると、運転席の空間が確保できなくなる。よって、圧潰荷重と圧潰量には上限値があり、これらの制約条件のもとで最低限確保すべきエネルギー吸収量が得られるように構造を設計する必要がある。イギリスの鉄道全般にかかわる規格RGS(Railway Group Standards)では、圧潰荷重3000kN以下、圧潰量1m以内と規定されており、本衝撃吸収構造の設計条件として採用した。
4.編成車両の衝突安全性
3章に示す試験と解析の比較によって、モデル化の妥当性が保証された衝撃吸収構造を組み込んだ編成車両に対して衝突解析を実施し、衝突安全性を評価した。衝突基準は、ヨーロッパの各国間の相互乗り入れにかかわる基準(Technical Specification for Interoperability:TSI)に規定されている、3種類の衝突シナリオを採用した。1つ目の衝突条件である同一編成車両の衝突解析を図3(a)に示す。左右に編成車両を配置し、初速度5m/sで衝突させた。ここでは、左側の編成車両を右側の編成車両よりも上に40mm並行移動したオフセット条件も追加した。2つ目の衝突条件であるWagonとの正面衝突解析を図3(b)に示す。左側にWagon、右側に編成車両を配置し、編成車両を初速度10m/sでWagonに衝突させた。3つ目の衝突条件であるLorryとの正面衝突解析を図3(c)に示す。左側にLorry、右側に編成車両を配置し、編成車両を初速度30.6m/sでLorryに衝突させた。3種類の衝突条件に対する解析結果より、車両は、車両端部の衝撃吸収構造で潰れており、運転席の生存空間は確保されていることが分かる。
5.おわりに
本開発車両は2009年の運行に向けて、現地で走行試験を実施している(原稿受付:2008年9月29日)。