【政治】朝鮮・台湾出身の元BC級戦犯に1人あたり300万円を支給する給付金法案、先送りに
第二次世界大戦後、日本軍属・軍人として連合国の軍事裁判を受けて拘禁・受刑した朝鮮半島・台湾出身の元BC級戦犯の人々に特別給付金を支給する法案が、
今国会に提出できなくなった。与野党合意が提出の条件だったが、政局や竹島・尖閣問題の渦に巻き込まれた。
90歳前後になった当事者たちは「日本軍人・軍属として刑死した仲間のために、一日も早い解決を」と訴える。【青島顕】
法案は、国籍の違いから恩給の対象にならない元戦犯計321人に「人道的精神」から1人あたり300万円を支給する内容。
戦時中、朝鮮半島・台湾出身者は南方各地で「捕虜監視員」などとして従軍。日本の敗戦後、多くが捕虜虐待などの罪に問われた。
321人が「BC級戦犯」として有罪となり、朝鮮半島出身の23人、台湾出身の26人が刑死した。
韓国・朝鮮人元BC級戦犯で作る「同進会」は、1955年から日本に補償と謝罪を求めてきた。日本政府は生活援護措置を取ったものの、
補償金は支払われず、支給額も日本人の元BC級戦犯に比べ低額だった。同進会は91年に東京地裁に提訴したが、99年に敗訴が確定。
しかし最高裁が「補償立法措置が講じられていないことに不満を抱く原告らの心情は理解し得ないものではない」と判示したことから、立法運動が展開された。
野党時代の民主党が08年、特別給付金支給を内容とする法案を衆院に提出したが、09年の解散で廃案になった。
今春以降は超党派の国会議員によって、衆院総務委員会に委員長提案で再び提出する動きが進んでいた。
しかし民主党の分裂や解散時期をめぐる政局、さらに竹島をめぐる日韓関係の悪化で暗転。
8月中旬から関係議員の間で「法案はやりにくくなった」「やらなければならないが厳しい」との声が出ていた。
◇「仲間の無念晴らし、早く名誉回復したい」
「同進会」会長の李鶴来さん(87)=西東京市=は猛暑の中、つえをついて議員会館を回った。朝鮮半島南部の全羅南道出身で17歳だった42年、
タイの収容所の捕虜監視員となり、戦後、オーストラリアでB級戦犯として死刑判決を受けた。のち減刑され、56年まで11年間服役した。
日本への協力者とみられて帰国できず、仲間たち約70人と会を作った。「日本人」として利用されたのに、
援護や補償の対象から外された「不条理」を訴えてきた。
歳月とともに仲間は次々に亡くなっていった。今年7月8日、長年行動を共にしてきた金完根さんも90歳で死去。
会のメンバーは6人になった。
李さんは服役中、死刑執行を前にした仲間から「悪い人間でなかったことを(遺族に)伝えて」と遺言を託されたことを忘れない。
「刑死した仲間の無念を晴らし、早く名誉回復したい。なんとか解決してもらいたい」