社説:ルネサス買収案 日の丸連
合は理を示せ
毎日新聞 2012年10月29日 02時30分
経営再建中の半導体大手、ルネサスエレクトロニクスの経営権を、政府系ファンドの産業革新機構と自動車大手などが共同で取得する協議が進んでいる。再建には、得意な事業への特化や収益性向上のために大なたを振るう必要がある。国内のビッグネームをそろえた「日の丸連合」による買収が、そうした合理化の足かせになってはならない。
共同出資する企業は、トヨタ自動車、日産自動車などの自動車大手やパナソニックなどの家電大手で、10社程度になる見通し。いずれもルネサスの顧客メーカーだ。
ルネサスへは米投資ファンド、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)が一足先に、買収を提案している。ルネサスは双方の提案を比較し、11月中にも最終判断するが、革新機構案に傾いている。
しかし、この官民連合には疑問がある。ひとつは、外資排除の姿勢についてだ。もちろん、安全保障や産業政策などの面から不可欠な技術は国内で守らなければならない。一方で、日本経済活性化には、海外からの直接投資を積極的に受け入れる必要がある。守るか否かの判断は、技術の重要性についてが先で「外資排除」が前提であってはなるまい。
ところが、今回の官民連合はKKRによる買収が現実味を帯びた後で、にわかに浮上した印象が強い。出資要請を受けた企業の中には「日の丸半導体にこだわる理由はない」と冷ややかなところもある。
「日の丸連合」の動機が、外資の買収によって従来の顧客優位の「取引」がシビアな「ビジネス」に変わるのは困るからということでは、外資排除は説得力を持たない。
肝心のルネサス再建の行方についても疑問が残る。同社は、自動車や家電の制御用半導体である「マイコン」で、世界のトップシェアを握る。それにもかかわらず、最終赤字が続いているのは顧客の要求に応じ、品質基準の厳しい多様な製品を低価格で提供してきたことが大きな原因だ。再建には、品種の削減や製品の値上げも必要になるだろう。
しかし、顧客メーカーの出資により、その影響力が強まって安い部品を注文通りに供給する「下請け」状態が続くようでは、赤字体質は改まらない。政府の支援を受けながらも、不採算事業を整理できずに経営破綻したエルピーダメモリの二の舞いにもなりかねない。
官民連合が「ルネサスの技術は国内に不可欠」として経営権を獲得するのであれば、その経営基盤の維持、強化と顧客利益の両立を目指すべきだろう。そのためにはどんな改革が必要なのか、知恵を絞る責任も負うはずだ。
http://mainichi.jp/opinion/news/20121029k0000m070142000c.html