千英宇氏「北に全面戦の能力はない、言葉だけの威嚇だ」
2013年04月07日13時11分中央SUNDAY/中央日報
「北に全面戦の能力はない」と話す千英宇氏。 「北朝鮮の脅迫がただちに軍事挑発につながる可能性はない。内憂外患が重なった状況でわれわれを手なずけようとする意図であり冷静に対応すれば良い」。 千英宇(チョン・ヨンウ)元青瓦台(チョンワデ、大統領府)外交安保首席秘書官は6日、中央SUNDAYとの緊急インタビューで、「北朝鮮がいま高強度の脅迫戦を行うのは、民心が離反するなど内部がいつになく複雑で切迫しているため」としてこのように診断した。北朝鮮の開城(ケソン)工業団地閉鎖威嚇と平壌(ピョンヤン)駐在外国大使館撤収勧告に対し千氏は、「コンプレックスから出た脅迫だが、実際の行動に移す可能性は小さい」と話した。
1977年に外交官試験11期で外交官の道に入った千氏は、李明博(イ・ミョンバク)政権で外交通商部第2次官と外交安保首席秘書官を歴任し、今年2月24日まで対北朝鮮政策を調整してきた。
――北朝鮮が異例的に毎日脅迫を浴びせているが実際に挑発する可能性は。
「北朝鮮は脅迫を常習的にする集団だ。現在の脅迫が過去より強度が高いのは、まず3度目の核実験にともない安保理制裁と韓米連合訓練を同時にやられているためだ。また、朴槿恵(パク・クンヘ)政権発足を契機に韓国を手なずける最後のチャンスだとみているのかもしれない。過去5年間のようにやられるのではなく、今回の機会に対北朝鮮政策を変えさせなければという考えだ。われわれをテストしようとするものだ。また、北朝鮮の内部情勢がいつになく複雑で切迫した状況だ。こうした状況であるほど脅迫のレベルは高まる。しかし脅迫をたくさんするほど挑発する可能性は小さくなる。挑発はわれわれの虚を突いてこそ成功するもので、このように親切にあらかじめ知らせれば成功しない」
――挑発する可能性はまったくないということなのか。
「国際社会に対する挑発、すなわち核実験や長距離ミサイル試験はすることができる。今回出てきた安保理制裁はあまりにも弱く、北朝鮮を防ぐには非常に足りない。北朝鮮は安保理制裁が言葉だけ騒がしいだけで何でもないという自信を得ただろう。韓国政府すら追加制裁をしなかったことを見て脅迫する勇気を得たようだ」
――安保理制裁はそんなに弱いのか。
「北朝鮮が3度目の核実験をしたのに国際社会は追加制裁を積極的にしていない。安保理制裁原案にはさらに強力な措置が入ってはいた。だが、韓国政府を含めみんな実行しなかった。対北朝鮮政策に余地を残そうとする意図であったようだがよくわからない。いまは安保理制裁で北朝鮮の挑発を防ぐことは到底望めない」
――北朝鮮に出入りした船舶の入港を防ぐ「海上封鎖」を検討したが実行されなかった。
「それをしたとすれば北朝鮮がいまのように脅迫することは大変で、『用心しなければ』と縮こまっていただろう。ところが安保理制裁の結果を見ると『脅迫しても大きな罰は受けず耐えられる』という自信を得たようだ。われわれは実際船舶制裁ができるのにしていない。実際に北朝鮮がわれわれを核攻撃できる方法は船舶を利用するものだ。ミサイルで核を撃つのは技術が弱く大変だ。これに対し船舶に核兵器を載せ韓国の港に入り爆破させるのはいますぐ可能だ。このような懸念を防ぎ、北朝鮮の他の違法な活動も遮断するには北朝鮮に出入りした船舶だけでなく貨物もすべて制裁しなければならない」
――オバマ米大統領が最近「北朝鮮をかばってきた中国の態度が変わっている」と話したが。
「違う。中国は『北朝鮮を強く制裁すれば挑発し弱く制裁すればできない』という間違った公式からひとつも変わっていない。中国はいまでも北朝鮮に制裁のふりだけしている。だから北朝鮮が脅迫をするのだ。北朝鮮は中国に全く怖じ気づいていない」
――北朝鮮が「グアムを打撃する」などと米国にも威嚇をするのはどういう理由なのか。
「北朝鮮は最高指導者が米国とやり合って勝てるだけの度胸があると認められなければならない政治文化がある。金日成(キム・イルソン)、金正日(キム・ジョンイル)も米国とやり合うふりをして最高指導者と認められた。権力に上がってからいくらも経たない金正恩(キム・ジョンウン)もそのような必要性が大きいので米国を脅迫しているようだ」
――北朝鮮の今回の脅迫戦は切迫した内部事情のせいに見えると話していたが。
「金正恩が執権して1年半の間に多くの試みをしたがひとつも成功していない。不満勢力は増え国際的に追い詰められ経済は悪くなり民心離反現象は相当なものだ。このところ金正恩の最高関心事は不純分子の探索だ。韓国でいえば検察や公安機関、さらに派出所の所長まで毎日呼びつけて不純分子を捕まえろとせき立てている。これはまともではない。そのため外部緊張を起こし内部を締め付けなければならない政治的需要が大きい」
――北朝鮮軍部の声が大きくなりなりふり構わない脅迫が続いているという分析は。
「違う。金正恩は1年間で軍指揮部を全員忠誠分子に置き換えた。北朝鮮軍は金正恩親衛勢力に総入れ替えされた。そのため軍が北朝鮮情勢を思うままにするとはみられない」
――若くて経験のない金正恩と軍部が誤判して偶発的な挑発が起きる可能性は。
「誤った判断の可能性はあるが北朝鮮は全面戦争をする能力がない。局地挑発もやはりいまのような状況では北朝鮮が百戦百敗だ。だから北朝鮮はもう少し強く(言葉で)脅迫していることだ」
――哨戒艦・延坪島(ヨンピョンド)攻撃時は北朝鮮の脅迫はなかったか。
「そうだ。われわれが油断した時に攻撃したのだ。いまのようにわれわれが万全の態勢を備えた状況で挑発すれば北朝鮮が恥をかく」
――北朝鮮が開城工業団地を閉鎖すると威嚇しているが。
「北朝鮮はあまりにもコンプレックスが強い。われわれが『北朝鮮がどれだけ脅迫しても開城工業団地は閉鎖できないだろう』と話したのを聞き自尊心が傷つけられそのような脅迫をしている。それでもわれわれが北朝鮮にしがみつく印象を与えれば北朝鮮は脅迫の効果を得られる。開城工業団地の売り上げはサムスン電子の3カ月分の売り上げの400分の1にしかならない。閉鎖しても韓国に大きな影響はない。これに対し北朝鮮には大きな外貨稼ぎの窓口がふさがり、労働者20万人の生計が厳しくなり社会不満勢力になる。北朝鮮は簡単に工業団地を閉められないだろう。韓国政府をテストしているのだ」
――今後われわれはどのように対応しなければならないのか。
「北朝鮮は自分たちの脅迫が口先だけの言葉だけと印象づけられるとさらに厳しくなることを心配し時々挑発をするかもしれない。だが、韓国政府はクールに対応しなければならない。北朝鮮に『脅迫・挑発で得るべきものはない。生きていくスタイルを変えよ』というメッセージを着実に送らなければならない。そうすれば北朝鮮はおのずと折れる。数カ月もいかない。いまの序盤戦では韓国が強く出て北朝鮮を手なずけなくてはならない。弱い姿を見せてはならない」
――北朝鮮軍の動向は。
「私が2月24日に青瓦台を出るまでは特異動向はなかったし、いまでもあるという話は聞いていない。北朝鮮はいま見せつけるための脅迫をしているのだ。本当に挑発するようならわれわれにわからないようにするだろう。(サイバーテロの可能性は)北朝鮮でなくても内外のあらゆる勢力がサイバー挑発を犯す可能性は多い。関連セキュリティーを強化しなければならない」
――米国が結局北朝鮮と対話する可能性は。
「北朝鮮の脅迫戦は米国への『われわれを相手にしてほしい』というメッセージだ。だが、米国がわれわれに知らせずに北朝鮮と水面下で接触はしないだろう。北朝鮮が核兵器を下ろすといわない限り米国はいま対話する状況ではない。(海外メディアは『韓国はとても平穏だ』として安保不感症という)良い点もあり悪い点もある。北が脅迫すると大げさに騒げば彼らの意図にやられるものだ。軍事的備えは徹底するものの冷静な態度を維持するのが正しい」
――いまの北朝鮮の実権者はだれか。金正恩の叔母の夫の張成沢(チャン・ソンテク)なのか。
「違う。張成沢は昨年平壌市内のアパート数千戸建設、黄金平地区開発などを行ったが成功した事業はひとつもない。権力基盤も金正恩の親せきという点を除けばない。私がみるに軍部を掌握した崔竜海(チェ・ヨンヘ)総政治局長が北朝鮮の実権者だ。北朝鮮の将校はあまりに徹底的に統制されておりクーデターの可能性はほとんどない」。(中央SUNDAY第317号)