「防空識別圏」を専門家に聞く 鈴置 高史
2013年12月5日(木)
“防空識別圏”を宣言した中国は、冷戦末期のソ連を思わせる。だのに怯えた韓国は中国にもっと傾く――。安全保障の専門家、C氏と急変する東アジアを話し合った。
米国を弱腰と見誤った旧ソ連
C:空の縄張りを叫んだ瞬間、そこに米軍機や自衛隊機に入られてしまい、手も足も出なかった中国。1970年代末から1980年代初めのソ連を思い出しました。
当時のソ連は指導者、ブレジネフの判断能力が衰え、米国の出方を見誤ったのです。「デタント」に応じたカーター大統領を弱腰と判断して突如、アフガンに侵攻しました。
すると西側が団結して1980年のモスクワ五輪をボイコット。ソ連はアフガン戦争の泥沼にもはまりました。
さらに米国には対ソ協調派のカーター政権に代わり、ソ連を悪の帝国と呼ぶレーガン政権が登場。大軍拡やSDI(戦略防衛構想、通称「スターウォーズ」)をしかけました。ソ連はこれに対抗するための負担に耐え切れず自壊しました。
鈴置:振り返って見れば、ブレジネフ時代の読み違いがソ連崩壊への伏線となったのですね。
「張り子のトラ」と馬鹿にされた中国
C:今の中国に似ています。サリンを使うシリアへの軍事攻撃を計画していた米国ですが、直前の9月にオバマ大統領は中止しました。米国は世界の警察官をやめるつもりかと各国が思い始めました。
「米中で世界を仕切る」という中国の主張する「G2論」を11月20日、ライス米大統領補佐官が容認しました。ライス補佐官は「尖閣」に関しても「米国は主権の問題には立場をとらない」と表明しました。
これらを見た中国は「米国は弱気だ」と考え、尖閣諸島を含む東シナ海の上空に突如、“防空識別圏”を設定したのでしょう。ちなみにそれは「領空の拡張」と呼ぶべき不法なものですが(「似て非なる中国の“識別圏”」参照)。
しかし、米国はすかさずそこに機動部隊を送って日本とスクラムを組んで見せた。さらには空軍機も送った。というのに、中国はスクランブルもちゃんとかけられず、11月27日の外務省の会見で西側記者から「張り子のトラ」と馬鹿にされる始末。
鈴置:「米軍機に対してスクランブルした」という中国の主張は、やはりウソだったのでしょうか。
手ぐすね引いて待っていた?米軍
C:地球は丸いので、普通のレーダーではそう遠くまでは見通せません。中国空軍に“識別圏”全体を見渡せる能力があるか、極めて怪しいのです。軍事的にも外交的にも、中国はすっかり面子を失ってしまった。
一連の中国の反応を見るに、共産党幹部ばかりか軍の幹部までも、国際標準と比べた中国軍の実力のほどを理解していないのではないか、と思えてきます。
鈴置:中国は米国が強く出るとは予想しなかったのでしょうか。
C:これも読み違えた可能性が高いと思います。中国は米国に騙されたか、あるいは米国務省とだけ「握って」いて、結果的に米軍部のワナにはまったのかもしれません。
23日の土曜日に中国が“識別圏”を宣言した後の米軍の動きは異常なほどに機敏でした。2日後の月曜日の25日には、空母ジョージ・ワシントンを含む米日の連合艦隊が沖縄の南の海域で合同演習しました。
両国艦隊とも、フィリピンで台風被害の支援にあたっていたはずです。2日間で連合艦隊を編成し、現場に急行したとは神業です。
火曜日の26日には爆撃機B52を2機、中国の主張する識別圏内に送りました。B52は古くて大きな機体で整備も大変なのに、これも実にいい手際です。国務省やホワイトハウスはともかくも米軍は、中国が宣言するのを待ち構えていた感じさえします。
米空母にも「入るな」
鈴置:防空識別圏というと空軍の話に思えますが、海軍も関係するのですね。
C:もちろんです。大いに関係します。空母機動部隊の上には常に艦載機が飛び回って艦隊を守っています。艦載機の行動半径は数百キロに及びます。
中国が東シナ海に“識別圏”を設定し、公表した運用方針通りにそこに入る軍用機は追い出すというのなら、米機動部隊は同海に近づくことも許されないわけです。公海上空の飛行の自由はもちろん、船舶の公海航行の自由まで侵害することになります。
鈴置:今回の事件で何が変わるでしょうか。
C:世界の中国を見る目が変わりました。これまでは「日本と小さな無人島を巡って争っているな」ぐらいに見ていた。それが、国際ルールは堂々と破るし、武器を振り回して脅す危ない国、という認識に変わりました。
鈴置:東シナ海の上空は、世界のビジネスマンの主要な出張航空路の1つです。これで、安保の世界以外でも、中国への懸念が一気に増しました。
立場失った米日の融和派
C:もちろん、日本の世論にも大きく影響します。「中国と対立すべきではない」と主張してきた人々が、発言力を失うでしょう。(※これは私も重要だと思うw 秘密保護法で左派が大騒ぎしているのは矛先を外そうとしているようにも思える)
鈴置:日本の“リベラル”は「戦争は日本が起こしたのだ。だから日本が反省すれば2度と戦争は起きない」と思い込み、そう説いてきました。
しかし、日本がおとなしくするほどに中国が牙をむいてきました。韓国もその尻馬に乗ってきました。この現実を見れば、“リベラル”の言うことを聞く人はいなくなってしまうでしょうね。
C:米国も同じです。中国とは共存できると考える融和派と、いつかは対立するのだから準備せねばならぬと主張する現実派がせめぎ合ってきました。でも、今回の事件で融和派は米国の意思決定過程で力を大きく減らすでしょう。
今後の展開を読む際に、注意せねばならないのは国際的に大恥をかいた中国がどう出てくるか、です。自ら宣言した“識別圏”の中に日本や米国の軍用機や海軍の艦艇がどんどん入ってきて、その画像が世界に流れ続ける――。これにいつまで耐えられるか疑問です。
対外衝突で失敗を誤魔化す共産党
共産党の一党独裁体制下では、対外強硬政策の失敗は指導者にとって致命的です。キューバ危機でのソ連の敗北は、フルシチョフ解任につながりました。ダマンスキー島での中ソの衝突は、林彪の失脚を呼びました。
そして中国共産党は、発足以来、権力闘争激化や内政の失敗の際には必ず対外戦争を敢行しているのです。大躍進政策の失敗の後は中印戦争、文化大革命当時は中ソ衝突、鄧小平の改革開放の時は中越戦争――といった具合です。
鈴置:確かにその通りですね。
C:ですから、中国軍の出方が気になるのです。ソ連軍は1983年に大韓航空機を、民間機と承知の上で撃墜しています。
今度は私が鈴置さんに質問します。ご著書『中国という蟻地獄に落ちた韓国』に書かれているように、韓国は中国にすり寄っていました。でも今回の事件でさすがに中国の恐ろしさに目覚めたと思います。これで韓国は米国や日本など海洋勢力側に戻るのでしょうか。 (※それは読み違いです。韓国が目覚めることはないです。こっちにくんな!)
奇妙な中国への抗議
鈴置:むしろ、この事件を機に中国にさらに取りこまれました。韓国政府の対応を分析すると、それがよく分かります。 (※「せいか~い」クロコーチ風)
中国が主張し始めた“識別圏”の北端は、韓国のそれの南端と重なっています。また、韓国が管轄権を主張している、黄海の於離島(イオド)という暗礁の上にも及んでいます。
名前は「島」ですが実態は暗礁なので、韓国は領土とは主張できません。ただ、ここを含む海域に関しては、中韓は排他的経済水域(EEZ)の線引きを巡り争ってきました。ちなみに韓国の識別圏は、この暗礁の上空を含んでいませんでした。
たまたま、11月28日にソウルで中韓国防戦略対話という軍首脳の会談が開かれました。韓国はこの場で識別圏問題を持ち出したのですが、奇妙な言い方に終始しました。韓国国防部の発表を聯合ニュースは以下のように伝えています。
・韓国の首席代表であるパク・スンジュ国防次官は、中国が事前に協議せず一方的に宣布した防空識別圏に対し強い遺憾の意を示し、是正を要求した。
・パク・スンジュ国防次官は特に、中国の防空識別圏が韓国の識別圏と重なっているうえ、於離島(上空)も含まれている事実を指摘し、識別圏を調整してくれるよう強力に求めた、という。
「中国の識別圏」を暗に認めた韓国
C:なるほど。中国は「識別圏の設定」と言いながら、実は「領空の拡張」を狙っている(「似て非なる中国の“識別圏”」参照)。このため日本や米国は識別圏として認めず、一切無視している。だのに韓国はその存在を認めてしまった――のですね。
鈴置:そこに注目すべきです。「事前協議がなかった」とか「調整を要求した」とか、中国に文句を付けているように見えます。
しかし、中国の“識別圏”そのものには異議を唱えていないのです。それどころか調整を要求することで、その存在を肯定してしまった。(※珍島犬わんわん!)これに加え、韓国は危ない橋を渡り始めています。
中国に対抗して、於離島という暗礁の上にまで、自分の識別圏を拡張すると韓国は言いだしました。中韓の識別圏がここでも重なることになるわけです。
これに対し12月2日、中国外務省は韓国の主張を認めると示唆しました。露骨な対韓懐柔策です。こうなると、韓国も中国の“識別圏”を完全に認めざるを得ません。韓国はすっかり中国の手のひらの上に乗ってしまったのです。 (※踊れ踊れ タルチュム踊れ!)
竹島でも中国の「思うつぼ」
問題はさらに複雑化しそうです。於離島上空は日本の識別圏に入っているからです。韓国の措置に怒った日本が、今度は竹島上空を識別圏に含める可能性があります。中国や韓国の措置以前から、自民党はその方向で検討していたのです。 (※さすがにそれは無いよw国会に議題として出るかもしれないけど)
そうなると日韓が於離島と竹島に関して識別圏でも対立することになります。関係が極度に悪化した日韓を、もっと離間させられるわけですから、まさに中国の思うつぼです。 (※もとから朝鮮は中国の痰壺)
米国も韓国が中国に取りこまれることを心配したのでしょう。11月27日に急遽、国家安全保障会議(NSC)のアジア担当先任補佐官を韓国に送っています。
中国の“識別圏”設定に関し、失策と見る日本の安全保障専門家が多い。でも、韓国を米国から引きはがして中国陣営に引き込むという点だけ見ると大成功――ということになるのです。 (※それは大いに歓迎するw)
C:韓国政府は何を考えているのでしょうか。
二枚舌外交、再び
鈴置:とにかく、中国を怒らせたくないのです。下手に動いて日本と同じ立場と見なされれば、中国から苛められると恐れています。そこで“識別圏”を暗黙裡に認めてしまった。 (※珍島犬きゃい~ん!)
しかし、国民から於離島などに関して「弱腰」と批判されたくはない。そこで「韓国と重なっていることなどには文句を言ったぞ」と広報したのでしょう。もちろん、それにより米国に対しても「海洋勢力側にまだいます」と見せたつもりなのでしょう。
C:典型的な二枚舌外交ですね。
鈴置:中華帝国の王朝が明から清へと交代した時――17世紀の朝鮮王朝とそっくりです。朝鮮王朝は滅びる明に賭けて失敗しました(「『異様な反日』を生む『絶望的な恐中』」参照)。
これは仁祖という王様の崇明排清政策の失敗です。しかし、その前の光海君という王様は明と清の間で二股外交を繰り広げ、難しい時期をそれなりに凌いでいたのです。 (※股を誰にも広げるのが朝鮮売春婦の仕事です)
清――まだ「後金」という国号でしたが――に対する攻撃に加われと明から命じられた時、光海君は兵を送ったものの、積極的に戦わせませんでした。
明には「命令を果たしました」といい顔をする一方、清に対しては「貴国を本気で攻めたわけではありません」と言い訳できるようにしたのです。 (※サボタージュの起源を発見!)
怒りだす米国
C:なるほど、今と同じですね。
鈴置:この二股ぶりが朝鮮王朝で問題となり、クーデターが起きて光海君政権は倒され、仁祖政権が擁立されるのです。ただ、現在の韓国では光海君の二股外交が高く評価されています(「『沈む米国、昇る中国』に右往左往の韓国」参照)。
「明VS清」ならぬ「米日VS中」の争いに巻き込まれたくない、との思いからです。新聞各紙もその恐れを一斉に語っています。例えば、東亜日報の「防空識別圏の葛藤」(11月29日)という記事は以下の言葉で結んでいます。
・韓米同盟も韓中関係もいずれも重要な韓国が、米中双方から「どっち側なのか」と選択を迫られるかもしれない。
C:米国の目には「二股」が裏切りに映っているでしょうに。米国は韓国を守っているのです。中国と等距離で扱われてはたまらない。
大国の狭間の可哀想な自分たち
鈴置: ええ、米国はすでに「どっち側か」と韓国に迫っていると思います。しかも、中国はいずれ黄海にも“識別圏”を設定すると示唆しています。そうなったら韓国の二股外交は完全に破綻するでしょう。 (※その頃には韓国は中国の一部ですから問題ない)
中国が黄海の上に“識別圏”を設定する際、それは韓国の識別圏と重なる可能性が極めて高い。韓国の識別圏と言っても、もともと米国が定めたものだし、未だに在韓米空軍もいるのです。
今の地合いなら、中韓が黄海上の識別圏を交渉することになるのでしょうが、米国が後ろに控える韓国は、中国と安易な妥協はできません。一方、中国はそれを在韓米軍撤収や米韓同盟廃棄のテコに使おうとするでしょう。米中の板挟みです。
C:韓国政府の戦略は?
鈴置:目前の変化に条件反射的に対応しているように思えます。国家として思考停止に陥っているのかもしれません。(※パブロフの珍島犬)韓国紙には「大国の狭間に住む、可哀想な自分たち」を嘆く記事が目立つようになりました。 (※パンと餃子、どちらにキムチはさむニカ?おにぎりの具には入れません)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20131204/256668/?n_cid=nbpnbo_bv_ru
(※は私の合いの手であります)
まずタイトルが抜群であるw
ソ連が協調路線の民主党カーターならと甘く見て、軍事力を背景にしたパワー外交を仕掛けていたら、それに嫌気が差した米国民は共和党レーガンを選択してしまった。それによって米国に反転攻勢に出られソ連が自滅していく様子を、現在の中国に置き換えるのも面白かった。
考えればカーター大統領は「ウォーターゲート事件」のおこぼれでクリーンさだけで大統領になった人物というイメージ。日本民主党が政権をとった時と似ているが、別な部分も鳩山などと似ている。なにせ台湾と断絶し、中国を訪問し国交を回復したのもカーターである。そして朴正煕を暗殺した本当の黒幕説もあるw
もしもオバマの次が「カーター→レーガン」の再来のような事になれば何が起こるのだろう・・・韓国の青ざめた顔が見たいですw