記事入力 : 2017/06/12 09:43
? 安全保障って最重要外交問題だよね?
【社説】韓国の新国防長官候補は軍事問題を外交に利用するな
韓国の現政権初の国防長官候補に宋永武(ソン・ヨンム)元海軍参謀総長(68)が指名された。海軍出身だがかつて合同参謀本部で戦略企画本部長を務めるなど、国防のさまざまな分野で幅広い経験を持つ人物として知られている。ただ韓国大統領府は宋氏にも偽装転入(実際に住んでいない場所を居住地として届け出ること)の前歴があることをすでに明かしており、また防衛関連の企業で相談役を務めた経歴もあることから、今後は閣僚としての力量や資質に加え、個人の道徳性についても聴聞会などでしっかりと検証していかねばならない。
もちろん今後宋氏が国防長官に就任できるかどうかも重要だが、それ以上に注視すべきは、現政権が持つ軍事政策に対する考え方だ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は就任から数日後に国防部(省に相当)を訪れ、関係者の前で「政権(の任期)は限りがあるが、祖国は永遠だ」と語った。当然のことだが一方で万人の心に響く言葉でもあった。ところがそれからわずか数日後、文大統領は米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の発射台4基の韓国搬入が報告されなかったことを問題視し、韓国軍全体を大きく動揺させただけでなく、THAAD配備自体を実質的に延期させた。大統領府は「(THAAD発射台)4基の追加配備はさほど急がれることではない」と的外れなコメントも行っている。
国にとって外交戦略が重要なことは言うまでもないが、それを論じる前に軍事面で相手の攻撃に対する備えがなければ、安全保障をいくら論じたところで何の意味もない。軍事的備えのない外交では交渉など成立せず、相手に対する屈従以外の何ものにもならないからだ。もちろん軍事力が安全保証の全てではないが、一方で絶対不可欠な大前提であることも間違いない。そのような点で今の政府によるTHAAD配備延期の決定は、いわば軍事問題と外交問題を混同していると言わざるを得ない。
政府はTHAAD配備の延期について「配備そのものの撤回ではない」との言い訳で米国を納得させ、一方で延期そのものによって中国に配慮し、軍事的抑止力という国にとっての死活問題を外交の綱引きに利用しているのだ。北朝鮮が中距離弾道ミサイル「ノドン」以上の大型ミサイルを高角度で発射し、韓国軍や在韓米軍の拠点を攻撃してきた場合、これを防ぐことができるのは今のところTHAADしかない。ところが政府はTHAADなしに北朝鮮のミサイル攻撃から国をどう守るのかという問いにはこれまで一切答えておらず、このような対応の甘さはいわば軍事問題に対する根本的な考えに問題があるからと言わざるを得ない。今回国防長官に指名された宋氏はこの点をどう考えているのか、今後しっかりと確認していかねばならない。世界のどの国も軍事問題や機密情報に関しては相手国に妥協することなど絶対にあり得ない。米国はもちろん、中国、ロシア、日本ももちろんそうだ。軍事と外交のどちらかを優先すべき状況になれば、これは当然軍事を優先するしかないのだ。
宋氏はかつての盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の時に抜てきされ、2012年の大統領選挙に続き今回の選挙でも文在寅陣営で国防政策担当チームの座長を務めた。宋氏は軍事問題を軽視する現政権の考えに合わせるのではなく、むしろその考えの甘さを正す強い姿勢を示さねばならない。