愛国心教育
音程も拍子も怪しかったが、選手たちは声の限りに歌った。目を閉じたまま祈るように口ずさみ、涙を流す選手もいた。中継陣も互いに抱き合って感激した。FIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップのパナマ代表チームは、6月19日のベルギー戦直前、国歌が流れるやこのような姿を見せ、インターネット上で話題になった。史上初めてワールドカップに進出した人口416万の小国パナマの選手、国民としては、歴史的な瞬間に響き渡るパナマ国歌の意味は格別だったのだろう。国歌や国旗には、国民の心の中、深いところにある原初的な愛国感情を呼び起こす力がある。
本紙が2012年、ソウルの小学生100人に愛国歌(韓国の国歌)の歌詞を書いてもらったところ、1番の歌詞もきちんと書けない児童が64人いた。作曲家・安益泰(アン・イクテ)を正しく解答した児童は100人中7人にすぎなかった。教育課程によれば、児童は小学校1年生のときに愛国歌を歌う授業を受けることになっている。だが、愛国歌の歌詞を4番まで覚えている児童がどれくらいいるのか分からない。大人も同様で、子どもたちだけがとがめられることではない。
国家報勲処は、2012年から毎年「愛国歌を歌う映像公募展」を開いてきた。幼稚園児から大学生、結婚移住した女性まで、心を込めて愛国歌を歌う姿が胸に迫った。手話で愛国歌を歌う映像もあった。ところが、今年から公募展はなくなる。新設の「報勲映像公募展」に「愛国歌を歌う」も含まれてはいるが、事実上、愛国歌は後ろに下がった格好だ。朴勝椿(パク・スンチュン)前報勲処長官の就任後に始まったことなので、「積弊」(積み重なった弊害)と見なされたらしい。
フランス国民教育省が、今年9月の新学期から小学生がフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」を覚えて歌えるよう、学校に指針を下したという報道があった。またフランス政府は、満16歳の生徒を長期休暇中に1カ月間合宿させ、国家観や市民意識を教える計画も発表した。社会党出身で中道派のエマニュエル・マクロン大統領は「個人主義に走るフランスにおいて、国家観を鼓吹し、団結を引き出すために必要」とコメントした。一部に論争もあるが、世論調査の結果、フランス国民の90%が「愛国心教育」に賛成だという。
韓国は逆だ。2002年の韓日FIFAワールドカップのとき街角を彩った太極旗(韓国の国旗)の波は、今回のワールドカップではあまり目にしなかった。平昌オリンピックのとき、太極旗は韓半島(朝鮮半島)旗の陰に押し込まれなければならなかった。いつからか、愛国心教育を陳腐な旧時代の遺産と考える雰囲気がある。愛国心を強調することと、個人の自由・人権を尊重することとは全く別の問題だ。
金基哲(キム・ギチョル)論説委員