韓国の対外債務問題
問題の中央日報記事
本日最初の話題は、土曜日に「速報」として掲載した『韓国は為替操作国だ!~韓国経済「4月危機説」』の続編です。取り上げる記事は、これです。
韓経:韓銀総裁「為替操作国指定・4月危機の可能性低い」(2017年02月24日13時51分付 中央日報日本語版より)
著作権の都合上、全文引用はできませんので、興味がある方は是非、ご一読ください。リンク先の記事は、韓国銀行の李柱烈(り・ちゅうれつ)総裁が2月23日に、「金融通貨委員会」直後に行われた記者懇談会で語った内容をまとめたものだそうであり、いわば韓国銀行の「公式見解」です。
中央日報によると、韓国では現在、「4月危機説」が取りざたされているのだそうです。その理由として、今年4月には「大宇造船海洋」という会社の社債満期が集中することに加え、米国の為替報告書が公表される予定だからだとしています。
巨額過ぎる「その他の外国債権債務」
事実関係を2つほどまとめておきましょう。
どの国もたいていは「資金循環統計」というものを公表しています。韓国の対外債務について改めて抽出しておくと、次の通りです(図表1)。
図表1 韓国の外国との取引関係(2016年9月末)
区分 勘定科目 金額(十億ウォン) 外国から韓国への投資(つまり負債側)
外貨建債券 130,885 その他の外国債権債務 156,761 対外直接投資 214,314 株式等 454,149 その他 170,852 合計(①) 1,126,961 韓国から外国への投資(つまり資産側)
その他の外国債権債務 583,465 対外直接投資 327,929 株式等 188,642 その他 262,028 合計(②) 1,362,064 韓国の対外純債権 ③=②-① 235,104(【出所】韓国銀行・資金循環統計)
「外国から韓国への投資(①)」と「韓国から外国への投資(②)」の差額を、一般に「対外純債権」と呼びます。韓国は外国に対して235兆ウォン(約24兆円)の対外純債権を所持している(③)、というのが韓国銀行の統計の発表なのですが、果たしてこれは本当でしょうか?
実は、「その他の外国債権債務」(Other Foreign Claims and Debts)という項目が大きすぎるため、韓国経済の実態は、よくわからないのです。
公認会計士的な会計監査の立場からすれば、粉飾決算をしている会社は「その他項目」が膨れ上がります。実は、国家であっても全く同じであり、韓国の場合は「ばれるとまずい項目」を、「その他の外国債権債務」という、非常に不透明な勘定科目に混ぜ込んでいるのではないかと思うのです。
私は、韓国が資産側で保有する「その他の外国債権債務」(583兆ウォン、約58兆円)の大部分が、実は資産性のないものであり、また、負債側で負っている「その他の外国債権債務」(157兆ウォン、約16兆円)については、外貨建ての債券や借入金ではないかと見ています。そこで、私の仮説に従って、韓国と外国との取引関係を書き換えると、一番極端な場合だと、図表2のとおりです。
図表2 韓国の実態バランス(一番極端な仮説)
区分 勘定科目 金額(十億ウォン) 外国から韓国への投資(つまり負債側)
外貨建債券 130,885 外貨建借入金 156,761 対外直接投資 214,314 株式等 454,149 その他 170,852 合計(①) 1,126,961 韓国から外国への投資(つまり資産側)
その他の外国債権債務 0 対外直接投資 327,929 株式等 188,642 その他 262,028 合計(②) 778,599 韓国の対外純債権 ③=②-① △348,362図表2は、資産側の「その他の外国債権債務」の価値がゼロであるとみなすとともに、負債側の「その他の外国債権債務」が「外貨建借入金」であると仮定して、図表1を書き換えたものです。
恐ろしいことに、韓国は一転してマイナスの対外純債権(つまり対外純債務)を348兆ウォン(約35兆円)も負っていることになるのです。
実質的な対外債務は40~50兆円程度?
一方、韓国の統計局(英語版)は、「対外債務の状況」を公表しています。
Gross External Debt Position(2017/02/03時点)
これによると、対外債務は4,000億ドル(約44兆円)であるとされています(図表3)。
図表3 韓国統計局の「対外債務」(2016年9月末時点)
主体 金額(百万ドル) 円換算額(十億円※) 一般政府 75,100 8,261 中央銀行 23,292 2,562 預金取扱機関 176,439 19,408 その他 125,550 13,811 合計 400,382 44,042(【出所】韓国統計局英語版より著者作成。円換算レートは便宜上、1ドル=110円とした)
そして、「資金循環統計」(図表1)と併せて考えるならば、この「対外債務」残高(約4,000億ドル、円換算で約44兆円)のうち、少なくとも3,000億ドル(約33兆円)前後は、外貨建てであると推察できます。
外貨準備の75%~80%はウソ?
韓国企業や韓国政府が発行している外債とは、主に米ドル建て、あるいは日本円建てと考えられます。では、これらの債券を返すことができなくなった場合、何が発生するのでしょうか?
上記から韓国の「外貨建ての対外債務」は3,000億ドル(33兆円)前後であると考えられますが(※この金額は、かつて私が試算した数値とも整合しています)、いざとなった時には、韓国政府には4,000億ドル近い外貨準備がある、とされています。
しかし、韓国の外貨準備のポジションには、何かと不透明な部分が多いことも事実なのです(図表4)。
図表4 韓国の外貨準備高(2016年9月末時点)
項目 金額 備考 ①外貨準備高 3,729億ドル 出所:国際通貨基金(IMF) ②韓国政府が保有する米国債の最大値 726億ドル 出所:米財務省統計(TIC) ③外貨準備高のうち、内訳不明部分 3,003億ドル ①-② ④外国との通貨スワップ 735億ドル 出所:スワップ協定全般アップデート図表6 ⑤CMIM 384億ドル 出所:スワップ協定全般アップデート図表3韓国が公式に主張する外貨準備高は、2016年9月末時点で3,729億ドルですが、韓国政府が保有する米国債の残高は最大でも726億ドル程度であり、3,000億ドル近い金額が「内訳不明」となっています。
1ドル=1,200ウォンと考えると、「内訳不明金額」は360兆ウォン(約36兆円)であり、この金額は、韓国銀行が抱える「その他の外国債権債務」の金額と、ほぼ一致します(図表5)。
図表5 資産側の「その他の外国債権債務」の保有主体別内訳(2016年9月末)
保有主体 金額(十億ウォン) 円換算額(※) 韓国銀行 358,817 35.9兆円 預金取扱機関 137,447 13.7兆円 一般政府 65,481 6.5兆円 その他 21,720 2.2兆円 合計 583,465 58.3兆円(【出所】韓国銀行・資金循環統計。なお、円換算額は1円=10ウォンと仮定)
いずれにせよ、「その他の外国債権債務」勘定の正体については、私にはよくわかりませんが、資産性が極めて疑わしい項目であることは間違いなさそうです。そして、日本から通貨スワップを断られた韓国にとっては、現在、資金ポジションが非常に脆弱であるという「綱渡り」状況が続いていると見るべきでしょう。