「ハンタ」ウイルス
南北の軍事境界線またぐ川の名前に由来
朝鮮戦争でも同様の感染症
2026/5/12 17:12産経新聞
大西洋を航行中にネズミなどが媒介する「ハンタウイルス」の集団感染の疑いが出たクルーズ船「MVホンディウス」の乗客について世界保健機関(WHO)は11日、感染者が計7人になったと明らかにした。このウイルスの名前をメディアを通じて聞くたびに不安感が増す人もいるようだが、「ハンタ」とは一体、何か。その由来を探った。
ウイルスを初分離したネズミの捕獲地
国立健康危機管理研究機構の「感染症情報提供サイト」などによると、ハンタウイルスの名称は1976年、アカネズミから病因ウイルスを初めて分離した際に、そのネズミが捕獲された場所であるハンタン川(漢灘江)からとられたのがもとになっているという。ハンタン川は北朝鮮と韓国の軍事境界線をほぼ南北にまたいで流れる。
この地で1950年代の朝鮮戦争の際、国連軍に約3200例の原因が特定できない感染症「不明熱」が報告されたことなどから、研究を続けてきた韓国・高麗大のウイルス学者、李鎬汪(イ・ホワン)氏がハンタンの名を付けたと伝わる。
日本では70年代から動物実験施設で確認か
日本では1970年代半ばから、各地の医学系動物実験施設で実験用のネズミを取り扱う人の間で、不明熱の患者が相次いで発生した。これが1984年まで続き、127例中1例で死亡が確認された。ハンタウイルスによるものとみられるが、当時は病因が分からなかったという。
ハンタウイルスはネズミにかまれたり、排せつ物に触れたりすることで感染し、発熱や深刻な呼吸器疾患にかかる。重症化すれば呼吸障害、循環器が障害を起こす。死亡率は「10%~50%と高い」(担当者)という。
木原稔官房長官は11日の記者会見で「わが国に直ちに大きな影響が及ぶ状況にはない」との認識を示し、海外への渡航時には動物との不用意な接触を避けるよう呼びかけた。
https://www.sankei.com/article/20260512-YL57R5WAIVDCHIRLSQSG2GL3NE/