立ち上がる国内電子書籍市場
ハードウエアは準備万端、焦点はコンテンツの価格交渉
2010年4月5日
長年期待されながら、本格的な立ち上がりに至らなかった電子書籍が、ついに国内市場で離陸しそうだ。これまでも携帯電話やパソコン向けの電子書籍は存在したが、電子書籍専用の端末については、全く普及していない。しかしここへ来て、米国で複数の端末が商品化され、日本語化の準備も進みつつある。課題は日本語の書籍がどれだけ提供されるかだが、既に水面下で交渉は進んでおり、早ければこの夏にも大きな画面の端末で、日本語の電子書籍を読めるようになる。
米国では、米アマゾン・ドット・コムの「Kindle」が、原則9.99ドルという電子書籍の割安な価格設定もあり順調。それを米ソニーエレクトロニクスの低価格端末「Sony Reader」が追う。2010年1月には米アップルが「iPad」を発表し、iPhone用アプリもそのまま動かせるなど付加価値の高さで差異化を図っている。
3社とも日本での展開については明言していないが、「端末の日本語化は難しいことではなく、コンテンツさえそろえば国内でも事業を展開できる可能性がある。既にコンテンツ業界とも話をしている」(ソニー)と動向をうかがっている。
コンテンツホルダー側も、急ピッチで準備を進めている。大手出版社約30社は2010年2月、電子書籍ビジネスを共同で進めるための「日本電子書籍出版社協会」を設立。各社のコンテンツを電子書籍として提供する方向で、端末メーカーと交渉を進めているもようだ。
また、著作権切れとなった文学作品をXHTML形式で配信している「青空文庫」は、4月をめどに、独自に整備した日本語組版用のタグ一覧と、独自タグをXHTML形式に変換するスクリプトを無償公開する。青空文庫の電子書籍を読めるソフトはiPhone用として複数公開されており、一部のソフトはiPad用の試作版も開発済み。「青空文庫が培ってきた日本語組版のノウハウを公開することで、自費出版や同人誌の電子書籍化に生かしてほしい」(青空文庫の富田倫生氏)。
日本文藝家協会などによる「日本書籍検索制度提言協議会」の動きにも注目だ。国立国会図書館は、蔵書をスキャンしてデータベース化する作業を進めているが、そのデータを電子書籍として配信したいという事業者が現れた場合に提供できるよう、許諾や料金徴収の枠組みを検討している。制度の枠組みは4月をめどに公表を予定。データベース化する書籍は2011年3月時点で90万冊と膨大だ。著者や出版社の許諾が取れたものから順次、配信を希望する事業者に提供していく。
このほかグーグルも、2010年秋をめどに国内で電子書籍を提供予定だ。
今後の焦点は電子書籍の価格。米国では、アマゾンの設定した原則9.99ドルが、一部出版社の反発を受けながらも、事実上の標準になりつつある。一方で国内は、複数の端末がほぼ同時期に参入するとみられ、アマゾンが価格設定の主導権を握れるかは未知数。端末メーカーとコンテンツホルダーがどんな価格体系で合意できるかが、電子書籍の離陸に向けた最後の課題だ。
出そろいつつあるプレーヤー、交渉次第で今夏の商用化も
電子書籍向け端末と、電子書籍のコンテンツを提供する主な企業・団体を示した。今後は、端末メーカーとコンテンツホルダーとの交渉の行方次第。権利処理が不要な青空文庫陣営は、4月にも電子書籍の提供を始める見込みだ。それ以外も、早ければ今夏にコンテンツの商用配信を始める可能性がある