お客さんに、Yさんと言う人がいる。
結構な年配の投資家だ。
ここ数年で、随分と資産が目減りしたと愚痴る。
そのYさんが言う。
「日本人は、ズルさを知らない」
僕が返す。
「そうですか?僕の知人にも、充分ズルい奴はいますよ。僕だって、多少のズルさは有ります」
老紳士はため息をついて、こう言う。
「違う。そういう意味じゃない。 公正な取引が成り立つと、本気で思っている」
僕は驚いた。 驚いたと言うか、愕然とした。
公正な取引が成り立つと思う事が普通で、それが正常な取引で、ルールだと思っていたから。
「あんたねぇ。 良い人なのはわかる。 だから毎回指名してやってる」
「あんた、甘いよ。 その甘さが命取りになる。 私みたいにね・・・」
そう言って、バーボンを飲み干した。
僕は、考えの甘い人間だ。 自覚もしている。
だけど、そういう人間も必要なんじゃ無いかと、未だに思っている。
でも、僕みたいに甘い人間が増えた事が、色んな問題を引き起こしているのかなぁと、
そう言うふうにも思う。