「野外で焼き肉を楽しむ」
四季風俗図屏風
作者不明

<研究報告(神奈川大学)>
大きい松の木の下に茣蓙を敷き、男女が火鉢で肉を焼きながら酒を楽しむ野外での小宴の様子が描かれる。
男女7 人が囲んでいる火鉢には浅い鉄鍋が置かれ、その上で肉が焼かれている。火鉢の隣には、壺や小さな鉢が置いてある膳、野菜と思われる食べ物を盛った大きい盆、そして杓子が入っている大鉢がみえる。
焼いた肉を口にしている人、焼いている人など、場面の設定は現代における野外でのバーベキューパーティを連想させる。
5 人の男性に同伴し肉を摘まんで隣の男性に食べさせようとしているしぐさから、平民の婦女というより妓女であると思われる。
野外での焼肉宴会については洪錫謨の『東国歳時記』(1849)の記述が知られている。「最近の漢陽には、暖炉に炭火を熾し、鉄鍋をのせて牛肉を焼いて
食べる風俗がある。
牛肉は油、醤油、鶏卵、大蒜、唐辛子などで調味をし、数人が暖炉を囲んで食べるが、これを暖炉会という」と記している。
この図のなかで、焼いている肉もおそらく牛肉であろう。
牛肉は、朝鮮時代の儒教祭祀でもっとも重視された供え物であった。
そのために、王室や裕福な両班家、郷校などの祭祀に用いられる供え物以外には、民間で牛肉が消費されることはほとんどなかった。
しかも、牛は農作や運搬には欠かせない重要な労働力と認識されていたため、頻繁に屠殺禁止令が出された。
屠殺禁止令にもかかわらず、一部の支配階層が祭祀の供え物としてのみならず、食用の目的で牛を屠殺するのは茶飯事だったという。
野外で焼く肉は、朝鮮時代においてもっとも豪華な食べ物の一つとして好まれ、禁止令にもかかわらず富裕層の間では、このような焼肉野宴が行われていたのであろう。
男女の服装、特に男性の服装から、季節は冬であると判断される。
朝鮮時代の服装には特に冬着というものはなかったが、男女共に防寒具を使用することで厳しい寒さを凌いだ。
例えば、左側の毛糸の座布団に座り、右手で何かを摘まんで食べている男性が被っているのは、耳掩と呼ばれる防寒帽で、頭、耳、首を覆う。右側にうずくまっている草笠の男子が被るものもナムバウィという防寒帽である。
背景の丘に施された薄い色は残雪の表現なのか。
登場人物の装いと共に、図の設定は『東国歳時記』が伝える陰暦10 月の暖炉会であろう。
だそうだ