日本をこよなく愛し世界で写真展開くスイス・イタリア人夫婦
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/24628
JB Press 2011.10.06

サイクリングの素人が長距離の旅行、しかも世界一周という、とんでもない大業を成し遂げた。世界42カ国を8年かけて自転車で回ったのは、イタリア人とスイス人の夫婦、レプレ夫妻だ。日本にも1年以上滞在して、北海道から沖縄まで全国を旅した。
世界一周の基本は野宿だったが、特に日本では多くの一般家庭から宿泊提供を受けて、草の根交流を経験した(本文敬称略)。振り返れば「奇跡だった」8年の旅

スタートしたばかりの1996年当時
スイス在住の2人は1996年から2004年まで、8年かけて自転車で世界一周した。スイスから中東、そしてアジアに入ってオーストラリアへ。その後、北米と南米を回ってヨーロッパに帰ってきた。
40代にさしかかった頃、「もう十分働いた。仕事を辞めて何か面白いことを」と考えた。以前から会いたいと思っていたネパールに住む友人のところに、「自転車で行ってみてはどうか」とひらめいたという。
ネパールを目指した旅行が始まり、ヴェレナは背中に、ルチアノは膝に痛みが出たが、旅するうちに、ハンドルとサドルの高さを微調整するなど楽に走れる工夫を見つけていった。1日の平均走行は4〜6時間だった。
2人は地図も持たずに進んだ。次の日の予定も事前に決めなかった。ときには、航空会社と交渉したら無料で航空券2人分を提供してもらえたり、テントを張っていたら地元の富裕層が家に招いてくれ、豪奢な部屋を使わせてもらえたこともあった。そんな毎日の出来事を楽しんだ。
14カ月後、2人はネパールに辿り着いた。友人宅で4カ月滞在した間、「そんな楽しいことや驚くことが、まだたくさん待っているに違いない。ストレスや競争から解放された自由な生活ももっと続けたかった」と旅を続行する決意をした。
スイスを出発して3年後、ネパールでの旅続行の決意から約2年後、2人は日本に降り立った。1980年代に2度東京を訪れて以来だった。
そのときは「何でも値段が張る」という印象で、数日間しか滞在しなかった。だから、初めて訪れる国のような新鮮さがあった。
例えば刺身は魚ならどれでも味は同じと信じていたが、魚の種類や魚の部位によって味が違うことに気がついた。刺身には醤油だと思っていたのが、調味料を変えたり薬味を混ぜたりとタレが1つではないことも知った。
日本の食の奥深さに驚き、ルチアノいわく「自然のものを豊富に食べている日本人は、繊細な味覚を持っている。食べ物や食事で日本人をだますことはできないよ」と認識するほどになった。
生魚なんて絶対に嫌だと思っていたヴェレナも、刺身が大好物になった。
41度前後と湯温が高めの日本の温泉も(ヨーロッパの温泉はせいぜい38度が限度)、自分たちで入ってみて初めてその良さが分かった。熱めの湯にゆっくりとつかると、疲労した体のほぐれ方が全然違った。ルチアノはいま日本を訪れるたびに、温泉に向かうという。

日本の旅では、全国の非常に多くの一般家庭から宿泊の提供を受けた。「日本人は人を家に招かないと外国人はよく言うけれど、全然そんなことはない。もてなす精神はしっかりとある」とルチアノ。

2人は家庭に泊まって暮らし方を垣間見ていくうちに、日本人の価値観、日本人の職業観、日本の教育などを少しずつ知っていった。
約半年で日本縦断が終わって、東南アジアへ行きオーストラリアに入ったが、「日本の風景や人々をもっと深く心に刻みたい。もっと写真に収めたい」と、もう1度、約半年滞在するために日本へ戻った。

日本縦断は、2人のその後の人生を変えた。いま、2004年末に自転車世界一周に終止符を打って6年半以上が経ち、ゆっくりと思い出をかみしめつつ、スイスの生活に戻ったとようやく感じているが、日本との関わりは強まっている。
「旅をするという観点から見たら、日本は一番面白い」。2人は大好きな日本のことを、自分たちの経験を伝えることによって、より深くより多くの人たちに知ってもらいたいという情熱に満ちている。
まずルチアノは、日本縦断で撮影した美しい写真数百枚をもとに、その後、数度の新たな撮影を重ねて、2010年に写真集『JAPAN』を出版した。現在は、東京にフォーカスした2冊目の写真集の準備をしている。
そして、それらの写真をスライド形式にして、2人で解説をしながら見せる「ジャパンショー」も開催するようになった。
今年1月から4月まで、スイス32カ所を回った。「城を背に萌える桜」「人力車に乗る舞子」「コスプレ姿の女性」など、個性的で情緒あふれる写真を次々に映し出して、訪れた人たちを魅了した。

他国でも「ジャパンショー」を開く計画を進めている。ドイツ・フランクフルトからは、すでに招かれている。パリからは、開催に協力すると言ってもらった。ロンドンでも開催できるように話し合いを重ねている。
ルチアノは、決してあきらめなければ必ず人生は変わることを、インタビューの最後で語った。ヴェレナは、健康なら何歳からでも新しいことに挑戦できるし、人生を楽しむことが何よりも大切だと話した。
特に若い世代には「お金を稼ぐことだけ、経済的に豊かになることが人生の夢ではないと伝えていきたい」という。